たっくん初号機さんの評価レビュー

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町おこしと開発の違い

観賞手段:テレビ、CS/BS/ケーブル、試写会、動画サイト
ネタバレ
自分がイメージしていた町おこしは行政が土地を格安で用意し、
そこに企業を誘致し、大型商業施設や工場を作り、
税金も優遇する。

地元金融機関が低金利で融資し、建設資金の面においても
企業の手助けをする。

そうすることで田舎に雇用が生まれ、若者が東京に出なくても
働ける、もしくは県外からの労働者が移住してきて人口も増加する。

町おこしとは、そういう経済学的な観点からやるものだと自分は思っていた。

しかし、サクラクエストは違った。木春由乃が間野山にもたらしたものは、
住民の意識改革である。住民が望まない形の町おこしは押し付けであり、
開発であるという名言を彼女は残した。

これには正直、驚かされた。
今、現実の地方自治体の大半がやっていることは
企業誘致であり、すなわち開発である。

しかし、木春由乃がやろうとしていることは、そうではなく、
住民の意志で間野山の文化・伝統・伝承というものを後世に残していく、
それによってその地域の魅力を再発見し、観光資源につなげていくという
持続可能な観光モデルである。

最終話の反応を見ていると、一部の批判的な意見の中には
町おこしできないまま終わったという声もある。

私はその人が言わんとしていることはわかるが、就任1年目で
地元住民の意識改革を行い、住民の意志によって、
みずち祭り復活までこぎつけた木春由乃の手腕は評価されるべきである。

町おこしとは1年そこらで出来るものではないからだ。
何十年というスパンで見定めていかなくてはならない。
だからある意味、PAワークスは現実に沿った地味な脚本展開に
徹したというのは正解である。
それによってリアルさが増し、若者だけでなく、中年世代からも
支持や共感を集める要因にもなった。

最終話はチュパカブラ王国からの脱却、そして間野山の良さを
これから伝えていき、観光業につなげるという、町おこしの出発点でもあった。

終わりでもあり、始まりでもあるわけです。

それぞれのやりたいことも見つかり、間野山を出る者、間野山に残る者が
出てきたのは、ポジティブな結果だと思う。

間野山を捨てて都会に出ていくのではなく、新しいことに挑戦するために
間野山を出るのだから。

間野山を出ずに残る者も、何も挑戦していないというわけではなく、
間野山に残りながら、自分たちの故郷を変えていくというポジティブな
残留であり、決して逃げではない。

サクラクエストが我々に伝えたかったことは、都会が良い、田舎が良い、
どちらか一方を決めたり、美化したり、優劣をつけることではなく、

重要なのはどんな場所でも、自分がやりたいこと、やるべきことを
見つけて挑戦することの大切さ、
仲間や親、地域住民の人達の優しさ、心の温かさ、

都会に出た者にとってはいつでも帰って来れる居場所としての田舎があることは
心のよりどころになるし、
田舎に残った者にとっては、自分たちが住む場所をもっと誇っていい、
住民が力を合わせれば、未来を変えていくことができる、
田舎にもまだ自分たちが知らないだけでいろんな可能性にあふれているという
ことだと自分は解釈しました。

町おこしという難しいテーマであるが故、どういった形にするのが正解で、
何が成功して何が失敗したのかは視聴者が判断することでしょうし、
そういった議論が巻き起こるのもある意味、サクラクエストの魅力でもあり、
制作スタッフ側も意図していたことなのではないでしょうか。

一番いけないのは無関心です。無関心というのは何も生みません。
無関心であるよりかはまだ批判をする人のほうがマシです。

皆さん、サクラクエストはいろいろ意見があると思いますが、
そういった意見の中に、現実世界でも活かせる町おこしのヒントが
紛れていると思います。

サクラクエストは我々に町おこしについて考えるきっかけを与えてくれた、
日本中のアニメファンが少しでも自分の故郷について、考える時間を
作ってくれた、それだけでも十分、役割を果たしたと思います。

P.A.WORKSのお仕事シリーズですが、お仕事を超えた人生、未来、
もっと大きい概念を我々に伝えようとしてくれる作品でした。

~ここからは余談~
ちなみに私は富山に聖地巡礼に行きましたよ。
原画展が開かれていたカフェトリアンの記帳を見ると、
金沢富山岐阜の方が多かったですが、
岡山や滋賀などから来ている人もいました。

痛車で来ている人もツイッターを見ていると何人かいました。
サクラクエストは現実にも経済効果、観光効果をもたらしていて
嬉しくなりましたね。

これを持続可能な観光資源にしていけるかは、
間野山と姉妹都市になることを宣言した南砺市にかかっていますね。
期待しています。
ストーリー
4.5
作画
4.5
キャラクター
5.0
音楽
5.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2017-09-21 11:00:56

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