どこか感じる懐かしさと、胸が踊るSF感。過去へのオマージュと、未来への希望がたっぷり詰まった、愛と夢のある作品です。
大好きなコヤマシゲトさんが携わっていらっしゃり、大好きな『HEROMAN』が下敷きにあると聞けばそれだけで観に行く理由には充分でした。
『シュガー・ラッシュ』では、8bitのアーケードゲームとフルCGのゲームの世界を同時に再現してみせたディズニーですが、『ベイマックス』ではそのごちゃまぜ感が更に洗練されています。
サンフランシスコと東京を融合させた街では、ロボット工学が著しく発展する一方で、未だに有線の路面電車が走っています。我々が生きる現実世界と、映画の中の世界に共通点を見いだせるからこそ、ヒロとタダシという歳の離れた兄弟のちょっと微妙な関係性がよりリアルに、より親身に感じられるのだと思います。
ヒロとタダシは善の人間です。彼らが技術をもってしてなし得ようとすることに悪意はありません。しかし、世の中は二人のような人間ばかりではなく、現にヒロの発明は世界を揺るがす脅威となってしまいます。そんな、技術の利便性と危険性をしっかり描いているからこそ、真っ白で、一欠片の悪意すらないベイマックスというロボットの存在が際立つのだと思います。ベイマックスがいる限り、ヒロはタダシの「正しさ」を身近で感じることができる。優しくて皆から愛されたすてきなお兄ちゃんを、ずっと信じていけるのです。
ロボットアニメでありながら、Big Hero 6の面々は誰も敵を傷つけません。理不尽な悪に対して、暴力ではない抵抗手段を取るヒーローというアイディアも、とても未来的だと感じました。
ストーリーにはやや大雑把な印象も受けますが、画面がとにかく緻密で情報量いっぱいなので、お話はざっくりぐらいでちょうど良かったのかもしれません。
こういう映画を幼少期にリアルタイムで観られる世代をほんとうに羨ましく思います。ディズニーの新境地、堪能しました。