映像作品としての全体完成度は極めて高い。
最低の悪作としてしまったのは、テーマに対して全く力及ばずの脚本である。
人工的に育成された”偏った天才”たち。
人知れず失敗作として消えていったはずの少年少女は、
方や脱走し、方や米国に保護されるという形で生き延びていた。
そして、成長した少年たちは
自分たちの存在を知ってもらおうと或る計画を企てる...
”決して人を殺さないテロ”である。
このベースアイデアは素晴らしい。
非常に繊細な領域に突っ込んだ意欲は認める。
だが、ベースに対しての具体アイデアがあまりに稚拙すぎた。
結果として、無差別テロ犯によって深刻なダメージを受けた日本、
現在も将来も台無しにされた国民と、皆が不幸になっただけである。
テロリズムは
”目的を達成する手段が暴力である”
”その脅威を周知させる”
という2つの条件で成立すると私は考えている。
この作品の場合、
暴力を向ける相手が一般大衆であったことが、
主人公側を正義が成り立たない場に立たせてしまった。
また、
”法治に訴える余地があるかないかの論議なしで
暴力に訴えることで目的を果たそうとする”
点も説明不足もよいところだ。
偏った天才ゆえに、一般人を巻き込むことの何が悪いのか理解できていない。
死傷者が出なければ大丈夫と言う判断。これはわかる。
なら、一般人のヒロインに主人公達にかけているものを補わせればよかった。
脚本がアイデアに完璧なまでに追いついていないことを示したのが最後の原子爆弾計画だ。
高高度爆発で電磁波被害にとどまれば、死人は出ないでしょうって?
そんなわけが有るわけ無い! あさはかすぎる。