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中国に入った日本の作品から消える連載雑誌やレーベルなどの情報と人気への影響
昨今何かと混乱している中国における日本のアニメ配信ですが、それでもオタク界隈では毎シーズンどの新作が面白そうなのか、期待できるのかといった話題と予想で盛り上がっていますし、それが新作アニメの初動の人気に対して大きな影響を及ぼしています。
そんな中国における新作アニメの事前予想でも、原作のあるアニメに関してはやはり原作の人気や評価が重視されています。しかし中国のオタクの方々の話を聞いてみると、原作の人気や評価に影響する各要素の伝わり方や受け止め方に関してイロイロと日本と違うところもあるようで、なかでも「連載雑誌やレーベルのイメージやブランド力による期待と後押し」に関しては、日中の違いやその影響が大きいといった見方もあるそうです。これについては
「日本の作品が中国に入る際に、作品の中身以外の情報がほぼ消えてしまう」
「中国では日本の出版社やレーベルを意識する、目にする機会がなかなかない」
といった現地の事情に関する話も出てきました。
日本の作品が中国に入る際の主なルートは、正規のものでは現地の翻訳出版やネットのプラットフォーム上の配信などがあり、非正規のものでは主に海賊版の出版物や違法アップロードされる画像データなどがあるとされていますが、正規非正規問わずこの過程において
「日本での連載雑誌、出版社やレーベル、実社会での流通やゾーニングなどに関する情報はほぼ消えてしまう」
といった事情があるそうです。
これは前世紀の海賊版があふれかえっていた時代から、正規配信に比較的手軽に接することができるようになった現代までずっと続いている傾向でもあるのだとか。
中国ではさまざまな事情から「日本の新作のスタート地点」が日本と違うものになりがちですが、この原作関連情報がなくなって、現地の受け止め方が変化することによる影響はかなり目立つようです。日本から見て意外な作品が初動で注目を集めることや、逆に初動の注目が集まらず日本と比べて苦戦することなどの原因のひとつになっているといった話も聞こえてきます。
中国のオタクな方の話によると、10月の新作の「チェンソーマン」(中国本土での配信は難しいようですが)などは、この影響に関するわかりやすい事例だそうです。
「チェンソーマン」に関して、中国ではアニメ化情報が出る前は絵柄と内容から、中国のオタク界隈でも少年ジャンプ連載作品だという知識の有無によって、作品に関する認識のギャップが存在したそうです。当時は「マイナーだがとても強烈なファンがいる作品」「少年マンガではない」といった認識を持っていた人も少なくなかったそうで、それがライト層に対するある種の壁にもなっていたのだとか。
またほかにも、「鬼滅の刃」は中国でもアニメが大人気になっていますが、実はアニメ開始前の時点では日本と比べて知名度が低く、その後アニメが日本でも中国でも爆発的な人気になったことに関して、一時期は中国のオタク層の間でも「急に出てきて大人気になった作品」だと感じてとまどう人が少なくなかったそうです。
中国のオタクな方によると、このような状況が発生した原因のひとつは、やはり「中国では原作の連載雑誌などの情報とその効果がなかった」からではないかという話でした。
ちなみに新作アニメの予想に関する情報で、逆に日本よりも強く意識される、高い評価をされているものには「アニメ制作会社に関する情報」があるそうです。
中国のオタクな方々からは
「中国ではアニメ制作に誰が参加するかではなく、どのアニメ制作会社が作るかというのが事前予想の際に重視されます。最近では監督や脚本、キャラデザなど個人に対する注目も増えていますが、アニメの制作会社重視の傾向事態は変化していません。中国では過去にダメなアニメを作った会社が自分の好きな作品のアニメ化を担当するという情報に絶望するオタクもよく見かけます」
などといった話もありました。
もちろん中国のオタクの中にも制作スタッフ全体を詳しくチェックする人もいますが、全体的に見れば日本のオタクとは注目する対象が少ない、あるいは範囲が狭いといった傾向があるようです。
中国に入った日本の作品が人気になった際には、作品自体のパワー以外に中国独自の理由も見て取れますが、人気にならなかった、あるいは日本と比べてあまり人気にならなかった際にも、イロイロと興味深い事情が見えてくるので、そのあたりに関しても追いかけていきたいですね。
(文/百元籠羊)