日本のラノベ、ネット小説は時代遅れだと中国で言われるのはなぜか 中国オタク事情新年編【中国オタクのアニメ事情】

2020年01月01日 12:000

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中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は2020年最初の記事ということなので昨年の中国で目に付いた、日本のライトノベルや最近増えているネット小説系作品に対する中国のオタク界隈のイメージの変化などについてまとめてみようかと思います。

中国で日本のコンテンツが人気になり始めてから数十年、本格的にオタク文化が形成されるようになってから10数年が経ちましたが、昔と比べて中国に入るオタク関連のコンテンツや情報は格段に増え、人気作品の傾向に関しても日中の違いは随分と縮小していますが、いつの間にか日中の違いが広まっているようなジャンルも生まれています。

そんな近年の中国のオタク界隈における評価や認識の変化がもっとも大きいのがライトノベルやネット小説系の作品、中国では大雑把に「軽小説」と括られて扱われるジャンルではないかと思われます。

中国ではオタク層が成立する過程で中心となった作品の中に「涼宮ハルヒの憂鬱」などをはじめとするラノベ原作アニメがあったこと、またその後も中国で大きな話題となる作品にラノベ系の作品が多かったことなどから、比較的長い間、日本のラノベは重要な存在と見なされていました。

しかし近年は中国のオタク層が接する作品の変化や、中国で発展しているネット小説との比較などから日本のラノベやネット小説、そしてそれを原作とするアニメに対して
「時代遅れなものばかり」
などといった評価が広まるなどイメージが急落している模様です。


中国はネット小説商業化の先進国


この話の背景として、まずは日本のラノベやネット小説とよく比較される「中国のネット小説」に関して大まかに説明させていただきます。

中国のネット小説は、娯楽の主流が国外の海賊版だった時代に颯爽と出現して成長していった、中国人による中国人向けの国産コンテンツで、現在の中国ではネット小説を娯楽としながら育ってきた人も多いそうです。その特徴としては規模の大きさや読者層の広さがあり、大衆コンテンツとして非常に強い存在感を示しています。また中国ではいわゆる成人向けの作品、エロコンテンツが存在しないことになっているがゆえの、よくも悪くも下品なコンテンツの受け皿としてさまざまな需要に応えながら発展していった面もあるそうです。

そして中国のネット小説がここまで大きく発展した原動力とされているのが、人気と閲覧数がそのまま収入に直結する文字数課金ベースのプラットフォームです。
近年は単純な文字数ベースだけでなく月額読み放題チケットなどによる課金も目立つそうですが、どちらにしろ人気があれば書けば書くほど収入につながるということで、単純な内容だけでなく、積極的な広報活動や、課金の更新に合わせた作品展開の山場の調整等も含む熾烈な競争が行われているとのことです。

中国のネット小説は、安価な課金で大量の面白いコンテンツが読める場所として読者が集まり、海賊版のあふれる環境でありながら生き残り成長していきました。また作者にとっても、当たれば膨大なユーザー数からくる課金を受け取ることができるうえに、映像化やゲーム化など他媒体での商業化といった夢もある、中国では非常に少ない「食っていける(かもしれない)創作活動の場所」となっています。
そしてなにも背景や資産を持たない人間がのし上がる場所、チャイナドリーム実現という夢のある場所ともなっているとのことです。

こういった商業的な場のイメージも強いので、中国の感覚からすれば、逆に日本のネット小説の多くが商業出版されるまでは収入につながらないということや、日本のネット小説の趣味や道楽的な部分に関して少々不思議に思えたりするといった話もあるそうです。


収入直結による激しい競争


このように中国のネット小説はお金を稼ぐ場所、のし上がる場所的なものになっていることから、作品の競争も非常に激しいものとなっています。そしてその中国のネット小説作品の競争で重要な武器となっているのが「新しいネタ、テンプレ要素」「文章量」だそうです。
収入に直結した競争ということもあり、どの作家も「勝てる」手法の模索模倣に積極的だそうで、オリジナル性といった方面ではやや疑問は残るそうですが、どの作品も貪欲に流行りの展開やテンプレ要素を放り込んでいくそうですし、流行も非常に速いペースで入れ替わっていくそうです。

さらに、中国のネット小説では文章量によるアピールが非常に有効だそうで、これは課金形態のひとつに作品を指定して読み放題にするというものがあり、その際に「たくさん読める」というお得感をアピールできるからなのだとか。
一説によれば、現在の中国のネット小説作品で「稼いでいる」作品の更新ペースは中国語で1日に2万字(日本語で換算した場合は約4万~6万字、固有名詞次第では更に増えることも)程度はあるそうです。

さすがにここまでのペースの競争になると個人で対応するのは難しく、現在の中国のネット小説は複数人によって執筆されることが普通になってきているそうです。
チームを組んでそれぞれの得意パートを担当する分業での執筆活動や、読者に対する広報活動を行うなど、作品がそのまま収入につながる中国のネット小説環境だからこそ成立する、人気作品として勝ち残る、収入を得て食っていくスタイルになってきているとのことです。

ちなみに、この中国のネット小説作家のスタイルに関しては、
「現在の日本の感覚で例えるならばネット小説作家よりもYouTuberのほうが近いかもしれない。勝負のやり方も、収入との直接的な関係も、勝っているところが看板のひとりではなく、実は分業体制だとかも含めて」
という見方を教えてもらったこともあります。そして中国のオタクな方によると、現在の日本のラノベやネット小説を中国のネット小説と比較した際には、更新ペースの勢いがなく、ネタに関しても
「ずっと同じネタ、異世界転移や転生ネタばかり」
ということが「遅れている」とされがちな要素でもあるそうです。

中国のネット小説でも異世界転移、転生系作品は「穿越」という人気のジャンルではあるものの、あくまで人気ジャンルのひとつでしかなく、ほかにも武侠や仙侠から発展した中華ファンタジーとも言われる「玄幻」や、遺跡を探索する「盗墓」、ミリタリー的に「俺TUEEEEE」をする「軍人」などの超人気ジャンルが存在するそうで、いつも異世界転移ネタばかり(に見える)日本の作品に関する評価はどんどん下降していったのだとか。

もっとも、収入に直接関わる熾烈な競争がさまざまな作品を生み出し続けることにつながっている半面、中国のネット小説は「商売になるジャンル」だけが発達するという状況にもなっているそうで、文字数を稼げる、テンプレの活用で量産できるようなジャンル以外は生き残るのが難しくなり、娯楽分野での存在感がどんどん薄れているのが悩ましいところだそうです。
そういったジャンルには、たとえば文字数が稼げない中短編作品、ジャンルでは引き延ばしや安定した評価の獲得と万人向けのテンプレの適用が難しいラブコメ系などがあるとのことです。ちなみに日本の作品では、異世界系は評価が低いものの、ラブコメ系の作品は妙に中国のオタク界隈での評価が高いといった話もあるそうです。

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