【インタビュー】石川吉元プロデューサーに聞く。「攻殻機動隊」シリーズ・全ボーカル曲のハイレゾ音源を収録したUSBメモリーが発売！

「GHOST IN THE SHELL/ 攻殻機動隊」の音楽には衝撃を受けました

── 石川さんはディレクターとして、「攻殻」シリーズに長く関わってこられたんですよね。

石川　ビクター・エンタテインメント（当時）から出た「イノセンス」以降、すべてのシリーズに関わってきました。最初の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」はBMGビクター（当時）からのリリースで、現在はソニー・ミュージックさんが版権を持っています。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」は1995年の公開当時、映画館でいち観客として見ました。川井憲次さんと仕事で関わるようになったのは、その数年後ですね。

── 川井さんとのきっかけは、なんだったのでしょう？

石川　川井さんは弊社の佐々木（フライングドッグ社長・佐々木史朗）とほぼ同年代で、学生の頃から同じバンドの大会に出たりして顔なじみだったんです。それで我々とも親交があって、僕が最初にご一緒したのは、「WXIII 機動警察パトレイバー」（2002年3月公開）でした。そこから「イノセンス」（2004年公開）で再び声をかけていただいたという流れです。それとほぼ同時進行で、「攻殻機動隊 S.A.C.」（2002年10月放送開始）で菅野よう子さんと仕事していました。

── 「イノセンス」での川井さんとのお仕事はいかがでしたか？

石川　押井（守）さんと川井さんは長らくタッグを組まれているので、突き詰めれば、お2人が話し合って音楽を決めていくという感じでした。押井さんの言葉を川井さんが読み取って作っていくというスタイルですね。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の音楽を踏襲しつつ、映画的には「静」の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」から、「動」の「イノセンス」になったので、音楽もアクティブでダイナミックなものになってきました。合唱の編成も大きくなりましたし、打楽器も大幅に編成を拡充しています。合唱に関しては、西田和枝社中（にしだかずえしゃちゅう）の方々を75人お呼びしてコンサートホールで録音しました。

── 西田和枝社中は、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」でも「謡」を歌った民謡グループです。

石川　川井さんは、TVアニメ「獣戦士ガルキーバ」（1995年）で西田和枝社中と初めて仕事して、その流れで押井さんに紹介したということでした。試しに歌っていただいたらすごくよくて、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」に参加することになったという流れです。


── 「謡I-Making of Cyborg」が流れた「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」のオープニングは、最初に見たとき、衝撃的でした。

石川　僕も、体が震えるほど衝撃的でしたね。100年残る、映画のオープニングシーンだと思います。いっぽうの「イノセンス」には「傀儡謡 - 陽炎は黄泉に待たむと」という9分を超える長い曲がありますけど、この曲が「イノセンス」の音楽の集大成と言っていいと思います。シーンに合わせてフィルムスコアリングで作られた曲で、合唱と打楽器が怒濤のように押し寄せてくるんですけど、途中にオルゴールが入るあたりがハッとさせられるんです。この曲などはハイレゾで聴くと、怒涛の中にも楽器が分離して聞こえるのがよくわかると思います。

── 「イノセンス」では、伊藤君子さんが歌った「Follow Me」も印象的でした。こういうジャズナンバーは「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」にはない新たな要素でした。

石川　これは既存の外国曲で映画プロデューサーの鈴木敏夫さんのアイデアです。川井さんは要望を受けてアレンジを手がけて。もう1曲、伊藤さんが歌った「River of Crystals」は川井さんが作曲しています。