スタジオジブリ・宮﨑駿、引退会見レポート! 「監督になって良かったと思ったことは一度もありません」

2013年09月06日 17:110

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・日本のアニメーションについて
宮崎:申し訳ないんですが、テレビも映画も一切見ないので、ジャパニメーションというものがどこにあるのかさえわかっていません。なので、その発言権は僕にはありません。

・フランスは好き?
宮崎:正直、イタリア料理のほうが口に合います(笑) どこのレストランでもフォアグラが出てきてツラかった! あ、ルーブルは良かったですね。

・これまで一番ツラかったことと良かったこと
宮崎:ツラかったのは本当にスケジュール。どの作品も大変でした。それから、終わりまで見えている作品は作ったことがないということ。結末が定まっていない作品ばかりだったので本当にツラかったですね。スタッフもどこにたどり着くかわからないまま作業してたわけですから、よくやってたと思いますよ。でも、上がってきたカットを見ていじっていく間にいろいろ見えてくることも事実なんです。
監督になって良かったと思ったことは一度もありませんけど、アニメーターになって良かったと思ったことは何度かあります。なんでもないカットが描けたとか、うまく風が描けたとか、うまく水の処理ができたとか、光の差し方がうまくいったとか、それで2~3日は幸せになれるんですよ。少なくとも2時間くらいは幸せでいられる。監督は最後まで判決を待たなきゃいけないので…これは胃によくない。ですから、アニメーターという職業は自分に合ってる良い職業だと思っています。

・それでも監督を続けてきた理由は?
宮崎:高畑勲の姿を見るたび、監督はやりたくないしやる必要はない。僕は映像のほうだけやっていればいいと思っていました。まして音楽なんて何もわからない。ある時期が来て、演出をやれと言われたときは本当に途方にくれました。つまり、はじめからまったく監督や演出をやろうと思ってませんでしたから、その戸惑いは「風立ちぬ」までずっと引きずってきたと僕は今でも思っています。監督になってからも、僕はアニメーターをやりましたから、多くの助けがありました。ですから、プロデューサーの力やチームのおかげでやれて来れたんだなと思います。
高畑勲には、「今日一緒に(会見に)出よう」と誘ったら断られたので、彼はまだまだやる気だと思います(笑)

・これまでの仕事の達成感と悔いは?
宮崎:その総括はしてません。手抜きをした感覚があったらツラいだろうと思いますけど、たどり着けるところまではたどり着いた、といつでも思ってましたから。終わったあとはもうその映画は見ませんでした。ダメなところはわかってるし、いつの間にか直ってるなんてことも絶対ないんで、振り向かないように振り向かないようにやってました。あと、同じことはしないつもりでやってきました。

・将来、ジブリ作品は中国で上映される?
星野:規制緩和の状況は理解していますが、まだまだ本格的に日本作品が上映される流れではないと思っています。

・「風立ちぬ」で庵野さんらをキャスティングした理由は?
宮崎:僕は映画やテレビを見ていないので、いつも…特に今回よみがえってきた記憶は、モノクロ時代の日本の映画なんです。昭和30年以前の。それらと今のタレントさんたちを比べると、ギャップに愕然とします。なんという存在感の無さだろうと。で、庵野もスティーブン・アルパートさんも(選んだのは)存在感だけです。かなり乱暴だったとは思いますが、そのほうが映画にピッタリくると。でも、他の方がダメだったとは思ってません。

・昔と比べてずいぶんやせましたが、今の健康状態は?
宮崎:僕は今、63.2kgです。50年前、アニメーターになったころは57kgでした。それが60kgを超えたのは結婚して三度三度メシを食うようなったからです。一時は70kgを超えましたが、その頃の写真を見ると、醜いブタのようでツラいんです。で、映画を作っていくうえで体調を整える必要がありますから、外食をやめました。朝ごはんはしっかり食べて、昼は家内の作ってくれた弁当を食べて、夜は家でおかずだけを食べるようにしました。別にそれでキツくないことがわかって、こういう体型に。で、僕は最後、スタートの体重である57kgになって死ねればいいなと思ってるんです(笑) 健康面はいろいろ問題がありますけども、心配して下さる方々の助言に従っていこうと思っていますので、なんとかなるんじゃないかと思います。あと、歩きが足りないので、もうちょっと歩くと元気になると思います。

・「熱風」でのコメントについて
宮崎:思っていることを率直に話しました。もうちょっと考えてキチンとしゃべれば良かったんですけど、別に訂正する気も何もありません。僕は文化人じゃありませんので、(発信していくのではなくて)その範囲に止めようと思います。
鈴木さんが中日新聞で憲法について語ったら、脅迫状が届くようになったんです。それで知らんぷりしてるわけにはいかないんで、僕も発言しようと。高畑監督にもついでに発言してもらえば、3人いるから的が定まらないだろう、みたいな話で発言しました(笑)

・奥さんには引退をどう伝えた?
宮崎:家内には、引退の話をした、と言いました。それで、お弁当は今後もよろしくお願いします、と伝えたら、フン!と言われましたけど(苦笑) もう外食は向かない体になっているようで、ずっと好きだったラーメン屋にひさびさに行ったらあまりのしょっぱさにビックリしました。

・「風立ちぬ」にはどんな想いを込めた?
宮崎:映画は自分のメッセージを込めようとしては作れないんですよ。自分の意識で捕まえられる方向に入っていくとロクでもないことしかおきないので、何か、自分でよくわからない方向に入って行かざるを得ない。それで、最後に風呂敷を畳まなきゃいけませんし、長くてもせいぜい2時間しかないので、刻々と残りの秒数は減っていきます。それが実態で、「生きねば」というセリフがポスターに大きく出ていて、僕が叫んでるように見えますが、僕は叫んでおりません。でも、宣伝については、僕は任せるしかありませんので。

・年齢以外で、作品発表スパン長期化の要因は?
宮崎:1年間隔で作っていたこともありましたが、ナウシカ、ラピュタ、トトロ、魔女の宅急便などは、演出をやる前に材料が溜まっていまして、出口がバッと出てくる状態だったんです。その後は、題材探しから始めなきゃいけなかったから長くなったんだと思います。あと、「ルパン三世 カリオストロの城」は4ヶ月半で作りました。それは、スタッフ全体が若くて、長編アニメをやる機会が生涯に1度あるかどうかという意識がみんなにあったからです。それをずっとスタッフに求めるのは無理ですし、僕はもう机で12~14時間も仕事ができるような状況ではありません。今は7時間がいいところだと思います。僕にとって、打ち合わせや外での仕事は仕事じゃなくて、机で描くことが仕事なんです。最近は、キリの良いところまで描いてから帰ろう、というのも一切諦めて、(疲れたら)すぐに鉛筆を置いてそのまま帰るということをしてました。やりっぱなしで放り出したまま。それでも、もう限界ギリギリでしたから、これ以上はもう無理です。

・最後に一言
長い間、いろいろお世話になりました。もう2度とこういうこと(=引退会見)はないと思います。ありがとうございました。

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関連作品

風立ちぬ

風立ちぬ

上映開始日: 2013年7月20日   制作会社: スタジオジブリ
キャスト: 庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、風間杜夫、竹下景子、志田未来、國村隼、大竹しのぶ、野村萬斎
(C) 2013 二馬力・GNDHDDTK

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