「アガサ・クリスティ オリエント急行殺人事件」最速レビュー! 名作推理小説が、ゲーム初心者からヘビーユーザーまで楽しめる本格推理アドベンチャーに

2024年01月26日 15:100

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アガサ・クリスティの名作推理小説「オリエント急行殺人事件」が、Switch、PS4、PS5用アドベンチャーゲーム「アガサ・クリスティ オリエント急行殺人事件」として、3gooより2024年1月25日に発売されました。

ミステリー小説の大家アガサ・クリスティによって1934年に発表された「オリエント急行殺人事件」は、推理小説ファンの間に人気がとどまることなく、幅広い層に親しまれている推理小説の歴史的ヒット作です。現在までに何度も映像化されており、もしかするとドラマ「名探偵ポアロ」シリーズの一作と言った方が、理解が早い方もいるかもしれません。


そんな世界的に知名度の超高い本作が、原作小説発表から90年の時を経てのゲーム化! 2006年にすでに別メーカーから本作を原作とするゲームが発売されていますが、ポアロを操作する作品は今回が初。そんな作品史上初の試みに挑戦した本作を、アキバ総研がさっそくレビューしてみたいと思います!


主人公の分身・名探偵ポアロ。口ひげが自慢のナイスミドルだ


大筋は原作を大切にしつつ、細部を大胆アレンジ!


ゲーム版「オリエント急行殺人事件」のあらすじは以下の通り。


仕事を終え、イスタンブール発カレー行きのオリエント急行に乗ってイギリスへの帰途についた名探偵エルキュール・ポアロ。豪華な旅客列車での優雅な旅になると思われていたが、豪雪に巻き込まれオリエント急行は雪に囲まれた山中で立ち往生してしまう。そんな密室的状況の中で殺人事件が発生する。乗客の誰にもにアリバイがある中、ポアロは次の被害者が出る前に真犯人を見つけねばならない。


これが今回の舞台となるオリエント急行


雪崩によって線路が寸断され、オリエント急行は携帯電話の電波も届かない山中で立ち往生する


すでに他メディアで本作を知っている方は、「ああ、いつも通りのストーリーだ」と思われるかもしれませんが、今回のゲーム版は時代設定を2023年にアレンジしているのが面白いところ。となると当然出てくるガジェットや推理そのものが、まったく異なってくる状況もあります。


スマートフォンが重要アイテムになることもある


SNSでの炎上が犠牲者を生む。まさに現代的な要素だ


スマートフォンやSNSといった現代ならではの要素が入ってきて、そこは過去の作品を知っている方は新鮮な気分でストーリーを楽しめますし、ゲームで本作に初めて触れる若い世代のユーザーも古臭さを感じることなく遊べるはず。そこはナイス英断と言えるでしょう。


新キャラクター・ジョアンナ。彼女を操作する回想シーンも多い


また、原作小説では事件の前日譚として描かれている令嬢デイジー・アームストロング誘拐殺人事件が大きくフィーチャーされているのもポイント。原作小説でも、重要な位置づけにあるこのエピソードを掘り下げるにあたり、ゲームオリジナルの新キャラクターとなるもう一人の探偵ジョアンナが登場。彼女を操作するパートでは、かつて起きた事件を追体験することになります。


何者かに誘拐されたデイジーの行方を追って、ジョアンナは捜査を進める


ジョアンナパートの組み込み方も絶妙で、新たな「オリエント急行殺人事件」の世界に深みを与えるのみならず、基本的に列車内で展開するため、ビジュアル的に変化が乏しい本作にいいアクセントを与えています。


デイジー誘拐殺人の犯人を追い詰めるべく、新たな情報をボードに貼っていこう


このように、原作の核になる部分はしっかりと守りつつ、2023年にリリースされる作品として。また、ゲームというメディアで展開する作品としてのアレンジもしっかりと施されているところは、本作の魅力と言えます。

手ごたえある推理と遊びやすさが共存!



ゲームに触れてみると、本作は思った以上にガチな推理アドベンチャーゲームになっていることがわかります。
プレイヤーは基本的にポアロを操作して、列車内で情報を収集。集まった情報をもとにして推理を行い、次のストーリーが始まる、という流れになります。


破り捨てられた写真を修復して、新たな情報を得ることもある。あらゆる物が事件解決のヒントとなる


列車内の捜査時は、くまなく車内を歩き回り気になるチェックポイントをフォーカス。情報を見つけることが目的となります。
この際、ミニゲームやギミックを攻略する時もあります。この難易度が絶妙で、必ず少し頭を使わないといけないのですが、少し気を付ければ「ひょっとしてこれはヒントなんじゃ…」と解決の糸口となる情報が画面のどこかに潜んでいるのです。このヒントを見つけた時の気持ちよさと、その結果操作が進展した時の「自分は一歩ずつ解決に向かって歩んでいる!」という手ごたえはかなり癖になります。


時にはパニック状態になっている乗客をなだめて、情報を引き出す必要もある


また、時には乗客との会話から情報を得る必要もありますが、彼らはさまざまな事情から必ず本当のことを話してくれるわけではないのが難しいところ。そこで、プレイヤーはこれまで集めた情報をもとに、相手が嘘をついていないか見破る必要があります。この「対決シーン」は、なかなかに緊張感があります。


相手の発言の矛盾点をついて、アリバイを崩していこう


次に集まった情報をもとに推理を行います。推理パートでは、まるでパズルゲームを解くようにヒントを組み合わせて、ポアロに正しい推理をさせることになります。ここでも、これまで集めた情報に加え、プレイヤー側にもちょっとしたひらめきを要求することが多いです。


推理パートはパズルゲームのようなノリで楽しめる


このように、本作は地道な情報収集の積み重ねと、時には大胆な発想と推理による捜査という、まさに静と動が絶妙なバランスで配置されているのです。この緩急が、ゲームにドライブ感をもたらしています。
ここでありがたいのが、間違った選択肢を選んでも、そこでゲームオーバーになることは基本的にはないというところ。例え間違った選択肢を選んでも、「よく考えよう。これは違うぞ」みたいなセリフと共にポアロが思いとどまってくれるのです。つまり、正解にたどり着くまで何度でもトライ&エラーができるというわけで、これは嬉しいシステム。


どうしても謎が解けない時は、ヒントを解放していこう


また、それでも答えがわからない場合はヒントを解放することで、徐々に正解に導いてもらえたりもします。何が何でも自力でプレイしたい人は、もちろんヒントを解放する必要はありません。
この、ゲーム全体に徹底しているにユーザーを見放さない姿勢は、アドベンチャーゲームが苦手な人や初めてゲームを遊ぶ人にとっては大きな救いになると思います。「絶対にこのゲームを最後まで楽しませてやる!」という制作サイドの意地みたいなものも感じますし、多くの手助けを与えながらも、最終的には自力で課題をクリアさせることでゲームの達成感も担保しています。


誰もがポアロの気分で遊べる、絶妙なゲームバランスとなっている


プレイヤーの腕前や年齢、ゲームに慣れているかどうか、などさまざまな条件に対応するホスピタリティは特筆すべき点かもしれません。

有機的に情報を整理し、推理に役立つ「マインドマップ」


もうひとつ触れておきたいのが、ポアロの脳内で展開する推理の流れを一覧できる「マインドマップ」というツールです。


複数の事件、出来事が展開する車内において、ポアロは同時並行的に捜査、推理を行っていきます。しかし、情報が集まっていくに従い複数のそれらの謎は一つの答えに収斂していきます。「マインドマップ」では、その過程が視覚化されているのです。


どの事象が、別のどの事象と関連しているのかもこれで一目瞭然


ストーリーを進めていくうちに、今対面している事態はわかるけど、そこに至るまでの過程が記憶から抜け落ちたり、物事の因果関係をちゃんと理解しきれてないままストーリーが進んでしまっているのに、過去の情報を振り返れなかったり……という困った状況は、推理アドベンチャーゲームあるあるなのですが、本作では「マインドマップ」を見れば、その問題がある程度解決できるようになっています。
頭のいい人って、こういう感じで情報を整理して、有機的に結び付けて物ごとを考えるんだろうなあ、と納得しちゃいますね。


推理パートはオレンジのアイコンで表示。これをクリアすると、次の展開へと進行する


またマインドマップである程度情報が整理されると、推理ができるようになります。ここでは、先述の通りパズルゲームのように情報を繋げて一つの答えにたどり着くことになります。この面白さはゲームならでは。見事答えにたどり着いた時は、ポアロ自身が褒めてくれるのでプレイヤーの達成感もひとしおです。


推理に成功すると、ポアロが褒めてくれる。褒められて伸びるタイプのプレイヤーならたまらないだろう


時には直感に頼ることができるのですが、探偵には閃きも時には必要!ということで、そういう時は思い切って自分の信じる答えを選ぶのが吉です!


直観に頼りたくない場合は、地道に捜査を続ける選択もできるので、ご安心を

個性豊かな乗客たちが物語を盛り上げる



乗客たちとのやりとりが物語の軸になることから、登場人物たちも非常に個性的。 まず主人公のエルキュール・ポアロからして、なかなかの曲者。ただのいい人ではなく、事件解決のためなら時には相手をだましたり、ブラフをかけて揺さぶりをかけたりとなかなかの役者ぶりを見せてくれます。


ポアロの自室には、口ひげをケアするアイテムがやたらと置いてある



かと思えば、自慢の口ひげに異常なこだわりを見せたりと、そういう人間臭いところが魅力的なのかもしれません。


そして、列車に乗り合わせた乗客たちも、キャラが濃い!


新たな登場人物が出てくると、まずは人間観察してしまう職業病のポアロ


胡散臭い実業家と彼の秘書たち。イギリス退役軍人の中年男性と、彼とただならぬ関係にある女性。フランスに亡命したロシア貴族。ハンガリーの外交官と、彼が事件にあまり接触させないようにかばっている若き夫人。今回の事件の被害者から護衛を頼まれていた私立探偵。過度の睡眠薬を飲まされてトイレで昏倒していた刑事などなど、プロフィールだけでもお腹いっぱいになりそうな面々ばかり。
彼らとのやりとりもまた本作の魅力です。


なんだかんだでポアロを信頼しているブーク。ある意味癒し系キャラだ


個人的にはポアロの友人にして、オリエント急行を運営する会社の重役であるブーグが愛すべきキャラとして印象的です。いい意味で小物感があり、深刻になりそうな社内の空気を少し和らげてくれる言動に、毎回ほっこりさせられます。 ただ推理シーンで、ノンストップでポアロを急かし続けるのはちょっとうるさいので、そこは自重してほしい!(実際にゲーム中に、ポアロから「黙ってくれ」と突っ込まれてました)

リアルに作りこまれたオリエント急行


アドベンチャーゲームとしてのやりごたえはかなり高い本作ですが、それだけでなく豪華な列車内を自由に歩き回れる観光体験もプッシュしたいところです。

見るからにおいしそうなディナーが出てきそうなレストラン


常にオシャレな音楽がBGMで流れているバー


セレブたちが乗り込むオリエント号の車内は、列車とは思えないほどゴージャスな作り。客室はもちろん、ラウンジ、バー、レストランと長旅をエンジョイするうえで大切な施設が、CGでリアルに作りこまれています。実際にこんな旅客列車でヨーロッパを旅してみたいもんですね。


客室も実に豪華。コンパクトな部屋ながら、快適な旅を楽しめることが想像できる


旅好き、列車好きな方なら車内をただ歩き回るだけでも、「自分ならこの列車内で、こんな旅を送りたいな」なんて想像して楽しめるかもしれません。

なぜか車内のあちこちに落ちている金の口ひげ。発見した時はポアロも思わず大喜び


ちなみに車内には、時々「黄金の口髭」が落ちています。特に攻略に必要なアイテムではないのですが、ゲーム的なやりこみ要素としてこれをコンプリートすると何か嬉しい特典があるのかもしれません。一度ゲームをクリアした後も、この黄金の口髭をコンプするために何度も遊んでみるのもいいかもしれません。



このようにゲーム版「オリエント急行殺人事件」は、原作の持ち味を生かしつつ、誰もが快適なゲーム体験ができるように徹底的に作りこまれた推理アドベンチャーゲームとなっています。 特にゲーム操作に慣れ、事件が動き始める中盤あたりからはもうゲームのやめ時が見つからないほど。謎が謎を呼び、どんどん面白さ加速していく感覚は、さすがの原作パワーと言えます。 この面白さに身を任せて一気に攻略するもよし、毎日少しずつプレイして自分のペースで楽しむもよし。まさしく推理小説を楽しむように、本作も自分なりのスタイルで楽しんでみてはいかがでしょうか。

  • 【タイトル情報】
  • ■「アガサ・クリスティ オリエント急行殺人事件」
  • 発売日:2024年1月25日
  • 対応機種:PlayStation5(パッケージ版およびダウンロード版)
  • PlayStation4(ダウンロード版)
  • Nintendo Switch(ダウンロード版)
  • 価格:5,280円(税込)
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 発売元:株式会社3goo
  • 製品紹介ページ: https://www.3goo.co.jp/product/agathachristieorientexpress/

(C)2023 Microids SA and Agatha Christie Limited. All rights reserved. Published by Microids SA. Developed by Microids Studio Lyon. All rights reserved. Murder On The Orient Express (C)1934 Agatha Christie Limited. All rights reserved. MURDER ON THE ORIENT EXPRESS, AGATHA CHRISTIE, POIROT, the Agatha Christie Signature and the AC Monogram Logo are registered trademarks of Agatha Christie Limited in the UK and elsewhere. All rights reserved. Published and distributed by 3goo K.K. in Japan.

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