「逆転裁判」とは違う、もうひとつの逆転。成歩堂龍一のライバル・御剣怜侍を主人公に据えた名作アドベンチャー「逆転検事2」【思い出ゲームレビュー第2回】

2020年12月12日 12:000

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筆者が過去に遊んだゲームの中でも、オススメの作品を紹介する企画。第2回は、2011年にニンテンドーDS向けに発売された(現在はiOS/Androidで配信中)推理アドベンチャー「逆転検事2」(カプコン)を紹介する。


「逆転裁判」シリーズは、2001年にゲームボーイアドバンス向けに第1作が発売されて以来、現在までに6作が発売されている。強い正義感、ムジュンを見破る勘とハッタリを武器に、弁護士の成歩堂龍一(なるほどうりゅういち)がさまざまな事件に挑む、法廷バトルアドベンチャーだ。本シリーズは累計600万本近くの売り上げを誇り、主人公の先祖が登場する「大逆転裁判」シリーズや、レベルファイブが制作している「レイトン教授」シリーズとのコラボ作品も制作された。成歩堂君は、いまやカプコンを代表するキャラクターの一角と言える。


「逆転検事2」は、成歩堂君が活躍する「逆転裁判」シリーズでライバルとして登場した検事・御剣怜侍(みつるぎれいじ)が主人公を務めるシリーズの2作目にあたる。御剣は、検事局に所属する検事であり、優れた観察眼や洞察力、推理力を持つことから「天才検事」とも言われている。



伝統的なミステリーと御剣のロジック



事件現場での調査→法廷での弁護といった流れの「逆転裁判」シリーズとは異なり、「逆転検事」シリーズの物語は、基本的に現場で物語は進む。御剣が現場で証拠や証言を集めていき、御剣は冤罪をかけられた容疑者や被告人を助けつつ、最終的に真犯人を見つけ出す。

 

証拠や証言をつきつけて、聴取対象の話のムジュンを指摘し、怪しい部分をゆさぶってさらに情報を引き出す。「逆転裁判」でもおなじみのシステムは本シリーズにも採用されている。



要は、環境や立場は変わってもやることは「逆転裁判」と基本的に同じということだ。これを定番とするか、変わり映えしないと受け取るかは、意見が分かれるところだが、少なくとも筆者は好意的にとらえている。検事が主人公なら、言い逃れする相手を、証拠や証言をもとに追い詰め有罪にするのが自然だろう。だが「有罪」は当然悪い意味で、たとえプレイヤーの追求が正義であっても、いい気はしないし、エンタメ向きではない。つまりゲーム向きでもない。シリーズ作品は毎度新しいことを求められがちだが、変えないほうがいいものもある。


とはいえ、何から何まで同じというわけではない。御剣が信条とするロジック(論理・筋道)が、「逆転検事」では重要な意味を持つ。文字通り「ロジック」と呼ばれるシステムでは、プレイヤーは集めた特定の情報をまとめ、理詰めで新たな事実を見つけ出していく。




ちなみに、この「ロジック」システムは、前作から引き継がれたもの。本作では新たに「ロジックチェス」が追加されている。「ロジックチェス」では、プレイヤーは制限時間の下、話し相手と駆け引きを行い、情報を引き出す。提示された選択肢から最良のものを選んで会話を有利に進めるのがキモで、弱気の相手に畳みかけたり、逆に怒っている場合は、あえて様子を見て発言を待つなど、状況に応じた判断が求められる。選択肢を間違えれば制限時間が減り、ゼロになるとゲームオーバー。読むと難しそうだが、相手の態度はオーバーでわかりやすく、おかげで見逃すことはあまりない。失敗しても「ロジックチェス」の最初からすぐにやり直せる。



理詰めで物事を考え、堅実に進んでいくというのは、機転やハッタリを武器にする成歩堂君とは対極だ。新米から始まった彼の物語は、すったもんだの冷や汗ものだったが、才能とキャリアをあわせ持った御剣が冷静に情報を分析し、相手を論破していく様は安定感がある。推理ものとして不動の地位を築いている「逆転裁判」だが、よく考えれば「法廷」をゲームに取り入れるというのは異色で、現場で謎を解いていく「逆転検事」のほうが、あるいは王道と言えるのかもしれない。



濃密なシナリオと御剣の成長



最初はニンテンドーDS向けに発売された本作だが、シナリオのボリュームは「逆転裁判6」や「大逆転裁判2」といった比較的最近登場した作品と比べても十分。正確なプレイ時間を計ったわけではないが、もしかすると「逆転検事2」が全シリーズ中最長かもしれない。長い物語にはテンポの悪さや冗長的な演出などがよくあるものの、今回の記事のために久しぶりにアプリ版を遊んでも、そういった点は感じられなかった。独立した各話を通して主人公や周囲の人物が少しずつ成長し、やがてクライマックスで大事件を解決する、それが「逆転裁判」ひいては「逆転」シリーズの醍醐味だが、「逆転検事2」では各話のつながりが非常に濃い。ひとつひとつの話が積み重なり、最終話を大きく盛り上げていく。ネタバレになるので、詳細は言えない。ただ、長大でありながら無駄なく内容が詰め込まれたシナリオ、そして自然に伏線を回収しながらクライマックスに迫る流れは、全シリーズ中、屈指のクオリティだ。



その物語の中で、御剣もまた成長していく。被告人を有罪にするためなら手段を問わなかった彼も、「逆転裁判」シリーズで成歩堂君と法廷で闘い、考えを改めるようになる。人の手で歪められたものではなく、成歩堂君のように純粋な真実を求め始めるが、代償に警察や検事局といった組織と対立するように。物語を進めていくと、天才検事と言われた御剣が、次第に弁護士のように立ちふるまうようになる。



御剣を助けてくれる相棒・鋸圭介刑事(左)と、前作のヒロイン・一条美雲(右)。

ある事件を機に、弁護士だった父・御剣信とは正反対ともいえる検事の道を進んでいた息子も、さまざまな事件を解決していき、父の弟子である信楽(しがらき)盾之と出会うことで、自身の生き方を見つめ直すようになる。本作の基本的なシステムが「逆転裁判」シリーズを踏襲していることはすでに書いた。そのシステムが、御剣の物語の核となる「検事か、弁護士か」をより印象付けているように思える。成歩堂君と似た境遇で動く御剣を見れば「彼は弁護士も似合っているのでは?」とプレイヤーは思う。どちらの生き方を選ぶべきか悩む御剣の気持ちを、シナリオと、ゲームシステムの両面から感じ取ることができる。こじつけかもしれないが、少なくとも私はそう思った。



本作の3話「受け継がれし逆転」は、その最たる例だろう。シナリオは、現在と18年前を行き来する。かつて御剣信が担当していた殺人事件の現場で、新たな殺人事件が発生。御剣怜侍が呼ばれる。同じ現場を舞台に、現在の殺人事件を追う検事・御剣怜侍と、18年前の殺人事件を追う弁護士・御剣信。両者を操作して、2つの事件を暴いていく。御剣が父の背中を追うことで、検事と弁護士という対比だけでなく、「父を超える」というテーマも浮かび上がってくる。「受け継がれし」というタイトルが示すとおり、御剣親子の話にも焦点が当てられ、御剣怜侍というキャラクターの深みもさらに増していく。「レイトン教授」とのコラボ作品を除いてすべての「逆転」シリーズを遊んだ私だが、「逆転検事2」の「受け継がれし逆転」がいちばん好きだ。


 

「逆転検事」シリーズは作品ごとにほぼ独立しており、また「逆転裁判」シリーズの知識を前提としているわけでもない。だが「逆転検事」シリーズは元々外伝であり、その世界観や物語を余すことなく楽しむには、やはり本編のプレイは欠かせない。なお、時系列的に「逆転検事」は「逆転裁判3」と「逆転裁判4」のあいだに位置するので、未プレイの人は「逆転裁判123 成歩堂セレクション」を事前に遊んでおくのもいいかもしれない。



成歩堂君が主人公の「逆転裁判」シリーズのほうにどうしても注目しがちだが、御剣が活躍する「逆転検事」シリーズも同等以上のクオリティがある。「逆転裁判」シリーズの要素と検事・御剣怜侍のロジックが合わさって生まれた、ひと味違った逆転劇。筆者のロジックで興味を持っていただけたのなら、ぜひ彼の生き様にじかに触れてみてほしい。

(文・夏無内好)

【作品情報】

■逆転検事2

ジャンル:推理アドベンチャー

対応機種;ニンテンドーDS/iOS/Android

価格:2,440円(税込)

※アプリ版:シナリオ全セット

※1話は120円(税込)/第2話以降は各730円(税込)

発売日:現在発売中


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