誰に付き、誰を斬るか。それが問題だ。「ファイアーエムブレム 風花雪月」をレビュー(前編)

2019年08月06日 18:550
誰に付き、誰を斬るか。それが問題だ。「ファイアーエムブレム 風花雪月」をレビュー(前編)

ニンテンドー3DSで「ファイアーエムブレム if」が発売されたのは2015年。「ファイアーエムブレム 風花雪月」は、それから4年ぶりのシリーズ完全最新作となる。発売から1週間がたち、ようやく1周目をクリアした私が、印象的だった要素などをピックアップし、本作をレビューする。物語に関するネタバレは極力抑えているので、これから購入を検討している人の一助になれば幸いだ。



主人公は3つの学級のうちひとつを担任し、生徒を導く


本作の舞台となるのは、フォドラと呼ばれる広大な大地。アドラステア帝国、ファーガス神聖王国、レスター諸侯同盟という3つの大国がせめぎ合っている。物語序盤、主人公はガルグ=マク大修道院の士官学校に所属する3人の級長と出会う。いろいろあり、士官学校の教師として教鞭をとることに。




アドラステア帝国の次期皇帝であるエーデルガルトが率いる“黒鷲の学級(アドラークラッセ)”、ファーガス神聖王国の次期国王ディミトリが率いる“青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)”、レスター諸侯同盟の次期盟主クロードが率いる“金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)”のうち、プレイヤーはひとつを選ぶ。

まず覚えておきたいのは、「ファイアーエムブレム」シリーズでは、基本的に“失った仲間は戻らない”こと。加えて、本作のプレイヤーは教師である。率いるのは軍隊ではなく、生徒だ。彼らに戦闘術や座学を教え、そして戦闘を指揮する。万一倒れることがあれば、それは、すべてプレイヤーの責任である。あまつさえ本作は二部構成となっており、第一部の5年後が描かれる第二部では学級同士が敵対するのだ。これは、厳しい。どうしたものか、私はしばらく悩んだ。





筆者が選んだのは、青獅子の学級。女性陣であるアネット、イングリット、メルセデスが“刺さった”のが最たる理由だが、全体的に前衛向けのキャラクターがメインになっていたという点も、一応あげておく。






学校生活と戦闘をくり返し、物語は進んでいく


本作の物語は、学校生活と月末に発生する戦闘の2つのパートを節(月のようなもの)ごとにくり返して進めていく。学校生活のパートは、生徒への指導が中心。週のはじめに行われる教育では、剣や槍、魔法といった各技能のうちどれを生徒たちが学ぶのか選び、育成を行う。技能のレベルが一定に達すると、特定の“兵種”になることができる。こう書くと難しそうだが、生徒たちは自分の目標を持っており、それに合った技能を最初から選択、学習する。プレイヤーがカスタマイズすることも可能だが、基本的に変えなくても問題ない。もしこだわりがあれば、生徒ごとに目標技能を設定し直せばいい。なお、主人公にも技能があり、ほかの教師を講師として招いたりすることで育成が可能だ。




毎週末には修道院内を散策できる。3Dで表現された修道院は非常に広く、釣り池で釣りをしたり、武闘大会に生徒を出場させたり、生徒や教師陣を誘って食堂で食事をしたりと、できることは多い。ただし、それらの施設の中には、利用するのに“行動力”が必要となるものもあるため、ある程度の計画性が求められる。物語が進むとキャラクターをお茶会にも誘えるものだから、こちらとしては悩みどころである。






そういった交流を通していくと、仲間との支援値が上昇。一定値に達すると“支援会話”が発生し、相手の心情や過去など、普段は見られない一面を知ることができる。士官学校には、フォドラの3大国のみならず、外国の生徒も在籍しており、入学の経緯なども各人によって大きく異なる。フォドラの歴史や、貴族の慣例、対立などといったさまざまな思惑があり、その一端も垣間見える。キャラクターごとのテキスト量は非常に多く、さらに修道院内の書庫にある読み物では本編より前の歴史が詳しく解説されており、作り込まれた世界観に感服した。





しっかりとしたシステムはこれぞJRPGといった風情で、最近の流行りであるオープンワールドなゲームと比べると自由度の差は言うまでもなく、やや面倒くささはある。あるが、かえってそれが手間を生み、手間によって生徒たちへの思い入れが、一層増したように感じた。



新要素&改良を加え、より戦術的な立ち回りが可能になったバトル


「ファイアーエムブレム」と言えば、やはり戦闘である。ターン制の下、さまざまな兵種のキャラクターたちがマス目状のマップを移動し、敵と戦う。基本的なシステムは第一作の時点で完成していたが、本作は、シリーズ作品にはない新要素や変更点が多く見受けられる。



もっとも特徴的なのは“騎士団”の存在だろう。キャラクターごとに配備することができ、団ごとにさまざまなパラメーター補正を得られる。基本的な性能を強化できるほか、“計略” も利用できるように。計略は、騎士団を使った特殊行動で、相手から反撃を受けないうえ、成功すると、対象の敵に全能力10%低下・移動不可・騎士団のパラメーター補正無効・計略発動不可が付く。一時的だが敵を大幅に弱体化できるため、敵将など強力な相手と戦う際はかなりお世話になった。ペガサスナイトやソシアルナイトといった移動力にすぐれる兵種の相手を足止めできる点は魅力的で、味方を守る際にも非常に有用だ。敵への攻撃が基本の計略だが、味方への回復といった支援タイプも存在し、騎士団の種類に応じてバリエーション豊富。使い勝手がいい。計略は使用回数に制限があるため、使うタイミングの駆け引きも、バトルに緊張感を与えてくれる。




これだけの利点がある騎士団だが、キャラクターたちとともに戦闘を行えば当然消耗する。そのたびに戦力の補充が必要で、費用もかかるのだが、これが安い。クリアするまで、一度の補充で1000G以上を使った試しがない。物語が進むと騎士団持ちの敵が当然のように出てくるので、それを踏まえた調整なのだろう。騎士団の配備には技能のひとつである“指揮”がかかわってくるのだが、最低ランクのEでも配備できる騎士団はあるので、利用しない手はなかった。


新要素ではないが、兵種間のクラスチェンジ制限の変更も重要だ。これまでのシリーズでは、キャラクターごとに就ける兵種にはある程度制限があったが、本作には前述の通り技能が導入されている。女性専用職の“ペガサスナイト”や、男性専用職の“拳闘士”などの例外はあるものの、特定の技能を育てさえすれば、基本的に誰でも対応した兵種になれるようになった。例えば、青獅子の学級には前衛向きのドゥドゥーという男がいるのだが、彼を超近接戦闘タイプの兵種“アーマーナイト”から、遠距離魔法タイプの“ウォーロック”にすることだって可能だ。全員をアーマーナイトにして重装甲部隊を編成したり、ウォーロックのみで構成される魔法部隊も作ったりしてもいい。すべてはプレイヤーの思いのままだ。とはいえ、各キャラクターの得意技能はある程度決まっているので、各々が得意な技能との相性がよい兵種にするのが王道といえるだろう。




クラスチェンジの仕様変更の影響か、武器も大幅にシステムが変わっている。剣や槍、斧に弓といった物理系の武器は、一部の例外を除きすべての兵種で使えるようになった。黒魔法や白魔法などの魔法系は特定の兵種でなければ使用できないが、それでも、クラスチェンジと武器の仕様が変わったことによる戦術の広がりは大きい。武器種の使用制限がほぼ消えたことで、シリーズ伝統の三すくみもなくなった。相手の装備している武器に対して相性のよい物をぶつける、いわば後出しじゃんけん的な仕組みが消えて戦闘はよりシンプルになったが、騎士団や計略などのわかりやすく奥深い要素が合わさったことでシミュレーション要素はむしろ強化されている。




少し残念だったのは、それらの影響で敵の飛行ユニットが大して脅威に感じなかったことだろうか。仲間全員が弓を使えるようにしておけば、移動力にすぐれ一瞬で間合いを詰めてくる飛行ユニットもやすやすと倒せる。「ファイアーエムブレム」シリーズには“特効”と呼ばれるシステムが存在し、ある兵種を特定の武器種で攻撃すると通常の3倍のダメージを与えられる。弓は飛行ユニットに対し特効があり、たとえ味方の力のパラメーターが低くてもダメージに補正がかかり、威力不足も解消されるというわけだ。さらに、弓専門の兵種では射程が+1~2されるスキルがあるほか、“曲射”と呼ばれる“戦技”(耐久値を多めに消費してくり出す、武器ごとの特殊技)を使うことでも射程が伸ばせる。本作の弓はほかの武器と比べても抜きん出て強く、「とりあえず弓を持たせておこう」とさえ考えた。




また、武器を幅広く扱えるという強みが、味方にしか適用されていないのも少々気になった。一 部特別な敵を除き、ほとんどの相手は自分の兵種にあった武器を持っているのが大半である。本作の仕様を生かし、斧を持った魔法系の敵がこっそり紛れ込んでいて、アーチャーで倒そうと近づいてきたプレイヤーを絶望に叩き落すようなことがあったら、より刺激的になったと思う(難易度ハードや、ほかの学級にはまだ挑んでいないので、私の早とちりかもしれない)。




いっぽう、シミュレーションゲームに不慣れな人への救済措置は手厚い。失った仲間は戻らないという特徴は先述した通りだが、本作はその伝統的なシステムにのっとった“クラシック”モードのほか、倒れたキャラクターがつぎの戦闘時には復活する“カジュアル”モードも用意されている。また、物語を進めていくと序盤から使用可能になる“天刻の拍動”は、使える回数に制限こそあるが、一手単位で好きなところまでさかのぼれるので、詰みの状況を簡単に回避できる。さらに、戦闘中は敵がどの味方を狙っているのかが赤い線で視覚化されるなど、至れり尽くせり。戦闘は苦手だが物語を楽しみたいという人も、安心して進められる。


私見だが、本作の戦闘はそこまで難しくはない。上記の通り初心者向けの要素も多く、学校生活パートでは、選択すれば敵との戦闘をこなすこともできるのでレベル上げも容易。私は難度ノーマルのクラシックで挑戦したが、クリアまでに天刻の拍動を使ったのは2回だった。




今回はここまで。後半では、黒鷲の学級や金鹿の学級の物語もクリアしたうえで、第二部に主眼を置いてレビューを行う。いましばらく待っていてほしい。


(文・夏無内好)

【商品情報】
■ファイアーエムブレム 風花雪月
発売日:2019年7月26日(金)
価格:6980円(税別)※パッケージ版、ダウンロード版共通
ジャンル:シミュレーションRPG
プラットフォーム:Nintendo Switch(TM)
プレイ人数:1人
CERO:B

(C) 2019 Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS Co-developed by KOEI TECMO GAMES CO., LTD.

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