ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

»一覧へ

悪魔の王子と老人が砂漠を旅する冒険活劇

観賞手段:動画サイト
「梅雨を吹き飛ばす、カラッと楽しめるアニメ」ということでオススメしたいのが「SAND LAND:THE SERIES」。カラッとし過ぎて水不足に喘ぐ砂漠の国で、悪魔の王子ベルゼブブと初老の保安官ラオ、老練な魔物シーフがトリオを組み、幻の泉を探す旅に出る。
鳥山明氏が「Dr.スランプ」や「ドラゴンボール」などの表紙において、使い込まれた未来メカとともに旅する様を描いていたのはご存じの通り。本作では、そうした世界観が前面に押し出されており、鳥山氏の作家的原風景といってもいいだろう。
ワルぶっているが心は純粋で超人的なパワーを持つベルゼブブ。冷静な判断能力を持ち、こと戦いとなれば年齢を感じさせない技量で敵を圧倒、寡黙な中に幾多の過去を秘めるラオ。経験と知識は重ねた年齢に相応しいものだが、好奇心も旺盛でアクティブに頑張るシーフ。3人の絡みと掛け合いはキャラが立っているがゆえに面白く、漫画の教科書のようでもある。彼らがいるなら幾らでも冒険が展開できそうだし、皆がワチャワチャしている様は飽きずに眺められるのだ。良く見ると3人の年齢層は別々で、子どものベルゼブブ、大人のラオ、老人のシーフと綺麗なグラデーションを描く。彼らの有り様は、鳥山氏が考える理想的な年の重ね方を示しているようにも見える。純粋で強い子どもと、底知れない過去と強さを持つ素敵な大人たち、という図式は氏の過去作にも通じるものがあり、ファンならばたまらないはず。鳥山氏のマンガを読んだことが無くても、現代っ子的なベルゼブブと渋いラオ、コミカルなシーフの誰かに感情移入できるだろう。
鳥山氏らしい個性的なキャラクターと、やはり鳥山氏らしい独特のフォルムとみっちりとしたディテールによる未来メカが絡み合い、対人戦からメカ戦まで様々な様相のアクションを繰り広げるのも魅力の一つだ。人間と悪魔とメカが出てくるバトル、となれば悪魔だけが大暴れして人間とメカの存在感が霞みそうなものだが、本作ではこのパワーバランスが絶妙。それぞれが協力して絶体絶命の危機を乗り切っていく様に現代的な面白さがある。もちろん、氏の作品らしい身体を張って超パワーを駆使する大立ち回りも楽しめる。ベルゼブブが悪魔のパワーで暴れる様が爽快で、梅雨の憂鬱を吹き飛ばしてくれるだろう。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
4.5
作画
4.5
キャラクター
5.0
音楽
4.5
オリジナリティ
4.5
演出
4.5
声優
4.5
4.5
満足度 4.5
いいね(0) 2024-05-31 17:42:42

ログイン/会員登録をしてコメントしよう!