YOU44さんの評価レビュー

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「断頭台のアウラよりも」にしびれた

観賞手段:テレビ、動画サイト
数ヶ月前、漫画にそれほど詳しくない知人が
「葬送」とか「フリーレン」という言葉を発した。
そういった漫画がある気はしたが、
その時は特に気に留めなかった。
恒例の3ヶ月スパーンのアニメ切換期、
次期作品を物色した。
『アンダーニンジャ』や2期目『陰の実力者』
にはすぐ目が行った。
後日、数巡目に本作に目が留まった。
輝かしい漫画賞を複数獲得、知人の発言を思い出す。
「鳴り物入り」とはこのことだろう。
初回放映は掟破りの9月29日、切り換え期限前だ。
金曜ロードショー枠の2時間SP。
主題歌はあのYOASOBI。
「ずぼらで魔法オタクの主人公の声は
『SPY×FAMILY』アーニャ役で人気の種崎敦美。
普段は澄ましているが、時折飛び出すふにゃっと
気の抜けた声がかわいい」
新聞TV欄に解説まであった。
そんなことより、注目は
「魔王が倒された後の世界」が舞台ということ。
「帰ったら仕事探さないとな。
魔王を倒したからと言って終わりじゃない。
この先の人生の方が長いんだ」
頂点を極めたところから始まる物語なんて
今まであっただろうか。
東京の空き家、地方の消滅可能都市、シャッター街、
少子高齢化、限界集落。
空虚感が今の時代と重なる。
何もないこと、潔さ。
「ぼくはね、終わったあと、くだらなかったって
笑い飛ばせるような、楽しい旅がしたいんだ」
水戸黄門みたいなのに、全然偉そうじゃない。
ステキだ。
ブッダや禅でいう「空」とか「諦念」を想起する。
「クヴァール、お前の魔法は強すぎたんだ」
「天国はある。そのほうが都合がいいだろう」
「分かり合うための言葉」と「欺くための言葉」。
「(「お母さん」って言えば)殺せなくなるでしょう…
まるで魔法のような素敵な言葉」
「人をおびき寄せるために物陰から
『助けて』と言葉を発した」
人食い魔族が人間の言葉を使う理由。
リーニエの冷ややかな表情のような
(この例えはちょっと違うか)
物語の底に流れる透徹した感性に瞠目する。
歴史に残る傑作に立ち会っている恍惚。

第13話、「同族嫌悪」の意味が分からず
もう一度観直す。
背中を押されないとやらない、似たもの者同士、
という意味での「同族」。
こういう遣い方もあるのか。
ちなみに水無田気流は『非婚ですが、それが何か』
で「同類嫌悪」という言葉を使っていた(P177)。

「涙の別れなんて僕たちには似合わない。
だってまた会った時に恥ずかしいからね」
泣いた。
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ストーリー
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作画
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キャラクター
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音楽
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オリジナリティ
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演出
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声優
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満足度 5.0
いいね(0) 2024-03-23 06:37:07

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