ムーミンアニメとしては初となる長編作品で、しかもキャストは全員『楽しいムーミン一家』の面々。観たくならない訳がありません。
やわらかい色調の画面とキャラクターたちのなめらかな動きに、心地良い音楽があわさり、OPだけでもう胸がキュンとなります。
『楽しいムーミン一家』シリーズよりも原作に近い、繊細なタッチの絵で、とにかくきれいで癒されます。
特にリゾート地に着いて以降は、空気のあたたかさを感じさせる演出でしょうか、背景全体にオレンジがかった独特の彩色が施してあり、なんとも趣がありました。
しかし雰囲気だけでは終わらないのがムーミンの魅力。
ストーリーがとにかくぶっ飛んでいます。
マイペースなムーミン一家が、外界の常識をことごとく蹂躙していく(しかもすべて無意識に)のが、ものすごくおもしろい。ただこのおもしろさはややシュール寄りなので、必ずしも子ども向けとは言いがたい作品になっていると思います。
ドラマチックさとは程遠く、ゆるく穏やかに話が進んでいくので、日本の長編アニメに慣れていると拍子抜けに思うかもしれません。
しかし、アニメ映画のまた違う可能性を感じさせること、そしてムーミンというコンテンツの持つ魅力を再確認できることの二点をもってして、充分観ごたえのある映画だと感じました。