大人気の日本のアニメ映画と希望が見えない日本の新作アニメ配信 中国の4月新作アニメ事情【中国オタクのアニメ事情】

2023年05月04日 12:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

あっさりと中国における日本映画興収記録を塗り替えた「すずめの戸締まり」


中国における日本の新作アニメ配信に関してはお世辞にも希望があるとは言えませんが、それとは対照的に日本のアニメ映画はかなり盛り上がっているようです。

2023年3月24日から中国本土での上映が始まった「すずめの戸締まり」は上映開始から1週間で4億元(約78億円)近い興収を叩き出し、その後も順調に伸び続けて、この原稿を書いている4月下旬の時点で興収は7.5億元(約146億円)を超えています。

そんな「すずめの戸締まり」ですが、実は中国でも興収がこんなに伸びるのは予想外だったという人は多いそうです。
中国のオタクな方々の話によると、「すずめの戸締まり」に関しては、中国国内における活発な宣伝やチケット予約の数字の伸びのよさからそれなり以上の人気になるという見方はあったものの、日本での作品評価や前の新海誠監督作品の「天気の子」の中国本土での興収が約2.8億元と、「君の名は。」の5.76億元の興収記録と比べて半減(それでも日本映画として見れば非常にいい数字なのですが)していたこともあり、「すずめの戸締まり」の興収に関してはやや厳しめの予想をする人も珍しくなかったのだとか。

しかし、いざフタを開けてみれば、初動からものすごい勢いで興収が伸びていき、あっさりと「君の名は。」が打ち立てた中国本土における日本映画の興収記録の5.76億元を更新してしまったことから、現在中国では
「どこまで伸びるのか」
「現在の中国市場における日本のアニメ映画というジャンルはどういった状況なのか」
などといったことに関しても注目が集まっているとのことです。

実際、「すずめの戸締まり」の人気に関しては、ほかの中国の人気映画とは異なる部分も目に付くようです。中国のオタクな方々から教えていただいた話の中には
「作品の評価自体はそれほど高くはありません。私の周りでも以前の新海誠作品のほうがよかったという人は少なくないです。しかしアニメ映像としてのクオリティは高く、映画の視聴体験として悪くないのも確かです」
などといったものもあり、興収の大きさと作品の面白さがあまり釣り合っていないと感じる人もいるようです。

中国の二次元業界に詳しい方によると、中国の映画関連サイトのデータでは
「客の性別が男女半々、あるいは男性のほうがやや多い珍しい割合になっている」
「売上げの割合を見ていくと地方都市で非常に強く大都市圏では今ひとつ」
「主に若い世代、特に20代前半までの学生世代が見に行っている」
などといった傾向あるそうで、そこから
「現在の中国の若い世代にとって、新海誠作品は横のつながりを作るための話題、交流ツール的な価値を獲得しているのかもしれない」
といった話も出てきました。それに加えて実際に映画館に行った印象では
「ひとりで見に来ている男性も多かったのがほかの映画とは違った」
「何度も繰り返し見に行っている人も多いのでは」
などというものもあるそうです。

またほかに外的な要素として、近年の中国映画業界の事情の影響も考えられるといった意見もあるようです。近年の中国国産映画は、いわゆる大予算の大作映画以外で気楽に見ることのできる作品が不足しているらしく、中国のオタクな方の話によると
「中国では低予算映画の武器にもなる尖った内容、エログロ的な内容が審査の関係上使えません。そのため最近の中国の低予算映画はナンセンスギャグや安っぽい恋愛モノ作品がやたらと増えています」
といった状況だそうで、日本のアニメ映画はそのあたりの需要を満たす使い勝手のいい、業界側が何かと力を入れて扱うようなコンテンツになっているという見方も出ているそうです。

ちなみに新海誠監督の作品に関しては、内容以外のところで「中国市場において何かと巡り合わせがいい」といった話題もあるとのことです。
中国のオタクな方々からは
「『君の名は。』の中国国内上映当時は、中国で韓国系コンテンツが規制されて娯楽コンテンツが不足していた時期と重なっていました。今回の『すずめの戸締まり』も中国国内では競合する作品がなく需要が高まるタイミングと重なったうえに、国内の感情からアメリカの映画が伸び悩んでいるという状況もあります」

「今の中国のネットでは人気作品は何かと炎上しやすく『すずめの戸締まり』に関してもちょっとした炎上が発生したのですが、あまり間を置かずにほかの作品が大炎上したので結果的に大きな問題になることを回避できました」
などといった話も出てきました。
中国で人気になるには、作品自体にパワーがあるのが大前提ではあるものの、そこからさらに広まって大人気になるには巡り合わせのよさなども無視できない要素なのかもしれませんね。

中国における日本のアニメ映画に関しては、4月下旬から中国本土での上映が始まっている「THE FIRST SLAM DUNK」も絶好調なこともあってか、景気のいいニュースがかなり目に付くようになっています。
しかしそれと同時に中国における日本の新作アニメの配信が非常に厳しくなっているのを見ると、何とも言えない気分になってしまいますね。

(文/百元籠羊)

画像一覧

関連作品

【推しの子】

【推しの子】

放送日: 2023年4月12日~2023年6月28日   制作会社: 動画工房
キャスト: 高橋李依、大塚剛央、伊駒ゆりえ、伊東健人、高柳知葉、内山夕実、潘めぐみ、石見舞菜香、大久保瑠美
(C) 赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会

王様ランキング 勇気の宝箱

王様ランキング 勇気の宝箱

放送日: 2023年4月13日~2023年6月15日   制作会社: WIT STUDIO
キャスト: 日向未南、村瀬歩、梶裕貴、佐藤利奈、江口拓也、上田燿司、安元洋貴、田所陽向、山下大輝、下山吉光、櫻井孝宏、遊佐浩二、坂本真綾
(C) 十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング 勇気の宝箱」製作委員会

劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 前編Wandering; Agateram

劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 前編Wandering; Agateram

上映開始日: 2020年12月5日   制作会社: Signal-MD
キャスト: 宮野真守、島﨑信長、高橋李依、坂本真綾、川澄綾子、水島大宙、沢城みゆき、置鮎龍太郎、内山昂輝、安元洋貴、子安武人、田中美海、小松未可子、鶴岡聡、稲田徹、千本木彩花、鈴村健一
(C) TYPE-MOON / FGO6 ANIME PROJECT

劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編Paladin; Agateram

劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編Paladin; Agateram

上映開始日: 2021年5月15日   制作会社: プロダクションI.G
キャスト: 宮野真守、島﨑信長、高橋李依
(C) TYPE-MOON / FGO6 ANIME PROJECT

すずめの戸締まり

すずめの戸締まり

上映開始日: 2022年11月11日   制作会社: コミックス・ウェーブ・フィルム
キャスト: 原菜乃華、松村北斗、松本白鸚、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜
(C) 2022「すずめの戸締まり」製作委員会

天気の子

天気の子

上映開始日: 2019年7月19日   制作会社: コミックス・ウェーブ・フィルム
キャスト: 醍醐虎汰朗、森七菜、吉柳咲良、小栗旬、本田翼、島本須美、野沢雅子、倍賞千恵子、平泉成、梶裕貴、市ノ瀬加那、花澤香菜、佐倉綾音、荒木健太郎、神木隆之介、上白石萌音
(C) 2019「天気の子」製作委員会

君の名は。

君の名は。

上映開始日: 2016年8月26日   制作会社: コミックス・ウェーブ・フィルム
キャスト: 神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、悠木碧、島﨑信長、石川界人、成田凌、谷花音
(C) 2016「君の名は。」製作委員会

THE FIRST SLAM DUNK

THE FIRST SLAM DUNK

上映開始日: 2022年12月3日   制作会社: 東映アニメーション/ダンデライオンアニメーションスタジオ
キャスト: 仲村宗悟、笠間淳、神尾晋一郎、木村昴、三宅健太、岩崎諒太、阿座上洋平、櫻井トオル、遠藤大智、村田太志、堀井茶渡、星野佑典、瀬戸麻沙美、宝亀克寿、奈良徹、長谷川芳明、武内駿輔、鶴岡聡、かぬか光明、岩城泰司、真木駿一、江越彬紀、田所陽向、峰晃弘、金光宣明、武田太一、山本祥太、梶原岳人、島袋美由利、久野美咲、園崎未恵、坂本真綾、小林親弘、こばたけまさふみ、松田健一郎、福西勝也、稲田徹、金子隼人、佐藤美一、濱岡敬祐、新垣樽助、蒼谷和樹、堀総士郎、中村章吾、塩田朋子、元井拓巳、佐藤元
(C) I.T.PLANNING,INC. (C) 2022 SLAM DUNK Film Partners

ログイン/会員登録をしてこのニュースにコメントしよう!

※記事中に記載の税込価格については記事掲載時のものとなります。税率の変更にともない、変更される場合がありますのでご注意ください。

関連記事