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ーー第2話の「風の強い日は嫌いか? FranChouChou cover」はほぼ作画ですよね?
境 全部手描きになります。
ーータオルを振っているところの動きがなめらかで、CGかと思っていました。
黒岩 モーションキャプチャーでガイドを出して、それをお渡しして手描きにしてもらっているからかもしれません。
境 一応CGでガイドを出してもらい、それをなぞって作画している形になります。
黒岩 モーキャプはエアタオル(タオルなし)で収録して、作画でタオルを足していただきました。
ちょっとしたダンスがある場合もモーキャプを撮っていて、第6話のヘッドスピン対決も、2人(山田たえとコッコくん)とも実際にやってもらっています。
境 女性でヘッドスピンができる人があまりいなくて大変だったのですが、すごい人にやってもらっているんです。
ーーでも最終的に、たえはほぼ一直線でヘッドスピンしていましたよね?(笑)
黒岩 そうですね。顔は完全に止まっていましたね(笑)。このシーンは私も大好きです。
ーーダンスチーム怒羅美の3人のダンスも撮っていたのですか?
黒岩 はい。あれもわざと下手に踊ってもらったんですけど、めっちゃかわいかったです(笑)。
境 たえのダンスもそうですけど、ダンスができる人に下手に踊ってくださいというのは心苦しいですね(笑)。
ーー第4話の「激昂サバイブ」は、たえのドラムだけでなく純子のギター&ボーカルもCGで描いていましたね。
黒岩 はい。ギターも3Dモデルを用意して実際にモーキャプを撮っています。
ーーギターはフレットや弦などパーツの正確性も必要となるからCGの強みが生かせますよね。あと、エフェクターを踏むところが、めちゃめちゃリアルでカッコよかったです。
黒岩 あのエフェクターボードも、パーツが多いなぁと思いながら、モデラーに発注しました(笑)。
境 でもあのモデリング、(モーションキャプチャーを)撮影した次の日くらいにできていたよね?
黒岩 今のうちに作らなきゃと思って早めに作りました(笑)。あのエフェクターボードは、曲のレコーディングで、ギターの方が実際に使っていたものを写真に撮っていただき、それを元にモデリングしています。
境 確か、そのあと感電させるために必要だったというのはあるけど、実際にモーキャプを撮影しているところを見て、カッコいいから取り入れよう!ってなった気がする……。
黒岩 そんな感じだったと思います。あっ、やること増えた!って思いました(笑)。
ーーたえの動きもリアルで、シンバルをミュートするところとか、かなり細かいですよね。
境 すごくカッコいい!と思っていました。でも、表情付けに関しては、叩くところを見ながらやると意思があるように感じてしまうので、本能で叩いている感じにしてくださいとお願いしました。
「佐賀事変」はMVで一度やっているけど、それを上回りたかったんです
ーー「目覚めRETURNER」のエレクトロ演出は、どんどん激しくなっていきますね。
黒岩 ここは撮影さんのほうで全部やってもらっています。
境 撮影さんにお任せしたほうがいいのかなと思ったんですけど、僕の絵コンテもざっくりしていたんです。だから最終的な撮影さんが付ける演出を想定して、どういうアングルで、どんなカメラワークにしたらいいのかを考えていったので、ちょっと難しかったです。
ーーここでは水野愛がひとり制服で飛び入り参加しましたけど、すごく表情がかわいいんですよね。
境 ここだけモデルを作りましたよね?
黒岩 制服衣装は作りました。あと愛に関しては第2期では顔のモデルを調整したり表現の上乗せをすごくしているんです。それによって、できあがりの平均値があがりました。さらにここは、1枚1枚(表情を)描いています。
ーーここまで表情豊かだと、ほぼ作画と見分けがつかないですよね……。そして、第7話では新キャラクターの楪 舞々が登場します。
黒岩 楪 舞々はアイドルをやったことがないんですけど、ほかの子たちはステージ慣れをしている状態だったので、「ぶっちゃけてフォーユー」では、ダンスにちょっとした小芝居を入れてほしいと演出さんから指示があり、アニメーターのほうで自由に芝居させています。
ーーあと、人数が偶数になったからか、センターが2人いるような感じで新鮮でしたし、わりとフォーメーションも複雑だなと思いました。
境 ここはステージのモデルを作れなかったので背景が手描きなんです。それをあまり感じさせないように絵コンテを切りました。だから引きの画とか、回り込むカメラワークみたいなカットはないんです。全体を見せながらフォーメーションチェンジしているのを見せるカットがなかったので、役者さんたちが10月のライブのリハでフォーメーションを知って「こんなにすごいフォーメーションだったんだと思って震えています」と言っていました(笑)。
ーーラインダンスとか、前後で入れ替わったりとか、結構複雑なことをしているなと思っていました。これはキャストのインタビューで気づいたのですが、「ぶっちゃけてフォーユー」の途中で、舞々視点のカットがあるんですよね。
黒岩 はい。その前に舞々がさくらのほうをちらっと見ているんです。
境 そこからの舞々から見たフランシュシュというのを描きたくて……。あと〈遅刻遅刻ダッシュで〉のところのサキとたえの追いかけっこもいいですよね。
黒岩 あそこは楽しかったです!
ーー第9話の「佐賀事変」ですが、ゆうぎりの表情がすごく豊かでした。
黒岩 「佐賀事変」はMVで一度やっていることもあって、それを上回りたいなというのがありました。なので、MVのときよりも情感を込めて表情を作っています。
ーー表情以外で、パワーアップさせるために大変だったところはありますか?
黒岩 着物の裾ですね。やわらかく揺らそうというのを意識していました。
境 揺れモノはモーションキャプチャーできないから大変ですよね。
黒岩 これは全体的にですけど、第1期のときからスカートやリボンは大きく揺らしてくださいと深川さんがおっしゃられていたので、シミュレーションをかけたうえで手付けで直しています。
境 そういう動きで表情も出るからね……。
黒岩 そうなんです。だから揺れモノは大事です。大事ですが、「佐賀事変」の衣装は本当にエグいんです(笑)!
ーーでも、そこを妥協しないことで名シーンが生まれるんですよね。監督も、MVからの違いを生み出そうと考えていたのですか?
境 モーションキャプチャーはMVのときのものなので、そこをライブシーンにするときにどうしようかと思いました。まずマイクがないというところで、ヘッドセットを今さら付けるのもなぁと思ったんです。だから自分の中では、これも観客を入れたMVのようなイメージでした。そして「観客目線」というのも取り込みながら見せていければいいなと思っていました。それは第12話の伏線でもあるのですが。
アニメーターとしての自分と、この作品のファンとしての自分。両方の情熱を持って臨めた
ーー最後の第12話ですが、ここまでライブシーンに時間を使うTVアニメはあまりなかったと思います。
黒岩 最初に物量を聞いたときはびっくりしました。
境 戦慄していましたよね(笑)。
黒岩 全部できるかな?と思いましたけど、最初からそれを見据えて取りかかっていてよかったです。大きくはモブをどうラクにさばくかという課題があったのですが、結果的に結構がんばってしまいました(笑)。
ーー具体的にはどんな感じだったのでしょうか?
黒岩 シチュエーションに応じて動きを細かく変えていまして、たとえば「輝いて」の始まりは、その前のたえちゃんのコール&レスポンスの余韻を少し引きずりつつ、何か始まるぞ、というくらいのペンライトの動きに抑えていたりします。空気を読めずにペンライトを振っている人もいます。そこまで細かく調整するのは実際すごく大変なことなのですが、やってしまいました。
境 たえのコール&レスポンスのときも、ちゃんとレスポンスして振っていたしね(笑)。
ーー改めて見返してみると、観客のペンライトの動きがすごいですよね。本当に、俺たちがいるなぁと思いました。
境 このライブは、観客目線ということを本当に大事にしたかったので、そこの動きがちゃんとできていたのはすごく良かったです。
黒岩 いろんなスタッフに声をかけて、ちょっとずつ作ってもらったんです。それでバリエーションが増えていった結果、このような形になりました。
境 第1話からの積み重ねですね。
ーー観客目線というのも、すごく臨場感がありました。
境 手前の観客がフランシュシュにかぶってしまうことも臆さずにやっていきました。最終的にフランシュシュに目がいくようになっていればいいと思ったので、そういうところを大事にできたからいいなと。
ーー全部で3曲ありましたけど、それぞれCG的なテーマはあったのでしょうか?
黒岩 「REVENGE」は気合いが入っているのでキリッとした表情を意識しつつ、笑顔も混ぜつつやっていました。大変だったのは「輝いて」なんですけど、ダンスというより、その場で身振り手振りをする振り付けだったので、ごまかしがきかないんです。CGは激しい動きは得意なのですが、ゆっくり動くと途端に人形っぽくなってしまうんです。それをどうカバーするかというところで、先ほども話しましたが、ボディはモーキャプで細かく動くので、表情もそれに合わせてコロコロ変えるようにしていきました。
ーー2月にあった実際のライブ(2021年2月27日に開催された「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ LIVE OF THE DEAD “R”~」のこと)のような感じがしましたし、表情豊かですごく感動しました。
黒岩 いちばんやりたかった曲なので気合いを入れてやりました。モーキャプを撮っているときは、どうしよう……って青くなっていたんですけどね……(笑)。
たとえば、愛の〈生きている〉のところは、この子たちは死んでいるのに生きていると歌うところなので、とにかく訴えかけるように、ということを意識して表情を作っていたりします。
境 フランシュシュは熱い曲が多いから、こうやって感情を出していかないと乗らないんですよね。
黒岩 アイドルとしては珍しく、キリッとしたままずっと歌っている曲もあれば、大きく口を開けて叫んでいるような歌もあるので、そこも意識していました。あと、いちばん生き生きして見えるというところで“目線”は大事にしました。どこを見ているのか、というのは細かく指示を出していましたね。目と目を合わせて仲良しアピールをしたり、ここは絶対に見つめ合ってほしい、など。
ーー最後の「追い風トラベラーズ」はどうですか?
黒岩 この曲はアンコールだったのでとにかく楽しく、明るく元気にというところは意識して、マックスの笑顔でやっていました。最後にさくらが泣いてしまうんですけど、ここはコンテの段階で私も感情移入してもらい泣きしてしまいました(笑)。
ーー最後の泣きは、引きで見せたかったと監督もおっしゃっていましたね?
境 泣き顔のアップはイヤだと思っていたので。あと、最後の曲で、伸びやかさもある曲なので、途中のカメラワークも飛行機のように動く感じにしたいとCG打ちで話していました。いちばん激しいカメラワークが「REVENGE」ならば、「追い風~」は伸びやかなカメラワークにするというところで区別を付けていました。
ーー3曲それぞれ全然違う魅力がありましたね。ここまで細かくお話していただきましたが、最後にファンへメッセージをお願いします。
黒岩 この制作が始まる前の方向性を決める打ち合わせで、深川さんが「パッション」と言ったんです。情熱が大事だよと。作り手の想いがあれば、好きな要素をカットに入れていいとおっしゃったので、それを作業者の方にも伝えました。
そうしたら多くのスタッフの方が情熱的なカットを上げてくださって。私自身も、アニメーターとしての自分とこの作品のファンとしての自分の両方の情熱を持って臨めたと思っています。なので「ここはきっとこだわっているんだろうな」と思いながら見ていただけますと、新しい発見があるのではないかと思います。ライブシーンはYouTubeでも見られますので、ぜひ観ていただけると幸いです。
境 1コマ1コマ本当に力を入れて作っていたので、全部見てほしいよね。
黒岩 はい。魂が込められています!
ーー監督は3DCGシーンについて、どう思いましたか?
境 僕は本当に好き勝手言って、黒岩さんの胃をキリキリさせてばかりで申し訳なかったなと思っています。それでもできあがったものは何の問題もなかったので本当に感謝しています。
最終話に向けてどんどんハコが大きくなっていくから、それに対して、どう見せ方を変えていくか、観客もどうやって最終話に繋げていくのか、素材からじっくり用意してもらったので、それをうまく落とし込めたと思い、僕も最終話は感動しました。ライブシーンを描くときは、常に見ている人がその現場にいる感覚になれるようにと意識して作っていたので、それを見事映像で表現してくれていたと思います。本当に素晴らしいです。ありがとうございました。
黒岩 ライブシーンの絵コンテを見たとき、毎回すごくワクワクします。これをどう表現しようかをずっと考えて取り組んでいました。こちらのアイデアも詰め込ませていただいて、すごく楽しく作業ができました。第1期より物量も多かったですし、大変ではあったのですが、優秀なスタッフにも恵まれ本当にやりがいのある案件でした。
(取材・文/塚越淳一)
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