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何も持たずに死ぬよりは、「COCOLORS」をつくったほうが、ずっといい
── マスクをつけたキャラクターたちの演技も見どころですが、色のない地下世界から地上へ探索しに行って、「色」を持ち帰ってくることがテーマになっていますね。 横嶋 地下世界より、地上のほうが色がなくて白黒のような状態になっています。地下にはまだ色が残っていて、暮らしている人たちも意外と楽しそうにしている。しかし、地下世界も先細っていって、ストーリーの後半にかけてどんどん色が抜けていく。そして最後に、完全に色のない世界が出てくる。ですから、にぎやかだった地下世界から少しずつ色がなくなっていくことが、作品の大きな流れになっています。
── ビジュアルの設計から、ストーリーやテーマが見えてくるわけですね。アートアニメーションの系譜に属する作品だと感じました。 横嶋 商業アニメとアートアニメーションの中道を行くような作品を生み出せないか、と考えました。僕個人はアカデミックな作品づくりをしてきた人間ではありませんが、商業ともアートとも言えない作品を、神風動画ならつくれるんじゃないかという期待があったんです。
水﨑 僕たちはミュージックビデオやゲームのオープニングムービーなど、そのIPのファンの人たちに喜んでもらえる仕事をしてきました。「カッコよければ正義」という、ビジネスセンスを優先した仕事です。だけど、ビジネスという呪縛を捨てたとき、僕たちには何ができるんだろう? 「儲かる」「売れる」とか「受けて入れてもらえる」とか考えず、どこのスタジオにもない、どこも手元に残せないような作品をひとつ持っていたら、いつかすごく強力な武器になるんじゃないだろうか。他社さんにないものが、神風動画にはある。それが「COCOLORS」だとしたら、すごくいいと思ったんです。誰にも相談せず、何かあったときに使える。抵当に入れられるものがある、というか(笑)。
横嶋 正直に言うと、つくっている間は「COCOLORS」が何になるのか、これといった手ごたえはありませんでした。ちゃんと世の中に出るのか、それとも、ひっそりと誰にも知られないまま埋もれていくのか―それだけはイヤだなと思っていました。結果として、作品ができてから3年以上も経つのに、まだあちこちで上映してもらえて、パッケージを発売することもできました。
水﨑 そう、今ごろになってBlu-rayを出す(笑)。海外でも多くの賞をもらいましたし、国内での今後の上映もいくつか決まっています。制作中に「COCOLORS」が売れるなんて予感はしていなかったけど、いきなり大きな成果を出すのではなく、ずっと先に大きく化ける可能性は十分にあると思っています。神風動画ががんばって自社で「COCOLORS」をつくって認められたから、同業他社も続くかというと続くとは思えない……って、誉めているのか何なのかわからないけど(笑)、僕らしか持っていない“ひとつだけの花”になってくれるとは思っています。何も持たずに死んでしまうよりは、「COCOLORS」をつくったほうがいい。
── 横嶋さんが「会社を辞めたい」と言ってスタートした企画だそうですけど、つくり終えた今、辞めてないのがいいですね。 水﨑 彼は、囲うと逃げるんです。会社に繋ぎとめるのも、引き止めるのもお互いによくないとわかりました。なので、契約の形態は変えました。横嶋くんが「今、やりたい仕事がない」と判断するなら、こちらから無理強いしなくてすむようにしたんです。
横嶋 僕は「COCOLORS」をつくったことで、「まだこの先があるかもしれないな」と期待を持たせてもらえました。ですから、会社に籍は置かせてもらっています。「この仕事をしたら、いつかやりたいと思っている仕事に繋がるかも知れない、そのためのステップを踏めるのではないか」と感じたら、自分向けではないと思える仕事でもやります。
水﨑 横嶋くんはすぐれた演出家というだけでなく、初期のころから会社のこともよく知っている。すごく助けられているからこそ、「あまり頼りにしすぎると悪いな」という気持ちがあるんです。だから「君がいてくれないと、どうにもならない」という事態だけは避けるようにしています。去っていったと思ったらまだそこにいる、庭にいる猫のような存在でいてほしい(笑)。