「ミリマス」キャストにアイドル、ポケモン大使が来台! コロナウイルスに揺れた「台北国際動漫節2020」現地レポート

2020年03月03日 16:070

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春節(中華圏の旧正月)明けの2月上旬、台湾は台北国際動漫節(1月31日~2月4日)、Fancy Frontier 開拓動漫祭(2月1日~2日)、台北國際電玩展(台北ゲームショウ・2月6日~9日)と、アニメやゲームなどの大型コンテンツイベントが目白押しとなった。

この季節の台湾に興味を持ったきっかけは、発表されたばかりの「アイドルマスター スターリットシーズン」が台北ゲームショウで初のステージイベントを行なうというニュースだった。アイマス各タイトルからアイドルが登場する家庭用最新作のイベントということもあり、「シンデレラガールズ」双葉杏役の五十嵐裕美さん、「シャイニーカラーズ」大崎甜花役の前川涼子さんというアイマス二大“働きたくない”アイドルの共演は歴史的なステージ……になるはずだった(詳細は後述)。

 

先日、TOKYO MXなど各局での放送が“編成上の理由”により中止となった、いろんな意味で注目作であるTVアニメ「異種族レビュアーズ」だが、台湾サイト・バハムート(巴哈姆特)では第1話が完全無修正バージョンで配信されたことが日本国内でも大きな話題となった。そんな日本コンテンツとの親和性が抜群に高く、いろんな意味でホットな土地、台湾。今回は台湾が熱く盛り上がったコンテンツウィークを現地レポートする。

 

春節明けのコンテンツウィークを直撃したコロナ騒動

日本では主に大晦日から正月三が日にかけて新年を祝うが、中華圏では旧暦における正月=春節が本番だ。今年の春節は1月25日で、台湾では1月23日~29日までが連休となった。春節期間中はコンビニや百貨店など一部の店舗を除いては軒並みシャッターを下ろし新年を祝う。

 

 

 

 

そんな春節シーズンでも変わらず、いや普段以上の活況を呈しているのが台北地下街だ。桃園空港からMRT(地下鉄)に乗って台北に到着して目の前の地下街は、ゲーム一色! PlayStationやNintendo Switchの大型広告をはじめ、見渡す限りがゲームの広告だらけ。「新櫻花大戦(新サクラ大戦)」「人中之龍(龍が如く)7」「DEAD OR ALIVE」「莱莎的錬金工房(ライザのアトリエ)」など日本でもおなじみのタイトルがほとんどで、7~8割は日本産コンテンツだろうか。

 

 


あるエリアでは、見渡す限りが中国産タイトルの「碧藍航線(アズールレーン)」だった。首都台北のど真ん中の地下街にゲームショップ、グッズショップ、アーケードゲームセンターがどこまでも並び、どの店も活況を呈しているのは、ゲームファンからすればどこか懐かしくもあり、うらやましい光景でもあった。地上に上がっても主要な大通りのポールには「台北国際動漫節(TICA)」か「台北ゲームショウ」のフラッグがひるがえり、台湾にとって重要なイベントであることが感じられた。

 

 

 

それだけに、春節明けのシーズンをコロナウイルス騒動が直撃したのは大きな痛手だった。国際色の強い台北ゲームショウは中止が決定。その1週間前の「台北国際動漫節」と「開拓動漫祭」も、会場入口やブースごとに発熱検査やアルコール洗浄などを行なう厳戒態勢の中、開催された。驚いたのは台湾人の防疫意識の高さで、来場者のほぼ100%がマスクを着用。各国でのマスク品薄が報じられているが、台湾では政府が一括してマスクを買い上げて管理、1枚6元(約20円)という安価で流通させていることもあり、大きな混乱はなかった。

 

 

今回主に取材した「台北国際動漫節」はアニメ・コミックを中心とした大型コンテンツイベントだ。出展は現地出版社とグッズショップなどが中心で、同人誌即売会+ステージイベント+コスプレなどが中心の台湾版コミケ「開拓動漫祭」とは、同じ週末開催の中ですみ分けている感じだ。「台北国際動漫節」には台湾東販、青文出版、台湾角川、東立出版社など日本のコミック・ライトノベルなどを買いつけている現地パブリッシャーが多数出展しており、日本では特定の出版社のイメージが強いタイトルが各社に分散していて面白い。

 

 


日本でおなじみの企業では、コトブキヤが新作フィギュアを展示していたほか、ブシロードもブース出展。「ヴァイスシュヴァルツ」や「Reバース for you」などカードゲームのティーチングでていねいにコンテンツの裾野を広げているのが印象的だった。「台北国際動漫節」全体で見ると、ステージイベントのゲストには作家を招いていることが多く、「アイドリッシュセブン」ブースが種村有菜さんをトークゲストに呼んでいたのは、普通に観客として見たくなってしまった。

 

 

台湾アイマスファンは日本と同じ言葉、テンションで応援

そんな「台北国際動漫節」の中で、日本と台湾をつないでいたのが「日本館 ICHIBAN JAPAN」ブースだった。同ブースでは例年日本からアニソンアーティストや声優、アイドルなどを招いてイベントを行なっている。

 

 

2月1日のステージで大観衆を集めていたのが、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」(「偶像大師 百萬人演唱會! 劇場時光」)のステージだ。2019年8月30日に同作の繁体字版がリリースされていることもあり、ステージ前には現地プロデューサー(アイマスのファンのこと)を中心にファンがぎっしり! 山崎はるかさん、田所あずささん、Machicoさんらのトークとミニライブステージを楽しんだ。Machicoさんが歌う「恋のLesson初級編」では「エルオーブイイーラブリーMachico!」とコッテコテの日本語コールが飛んだことからうかがえるように、キャスト陣にとっても日本と変わらないノリと熱さのライブだったようだ。

 

「アイドルマスター」の名物男である「ガミP」こと坂上陽三総合プロデューサーは、動漫節出演が3回目。トレードマークのオレンジ色のシャツで坂上Pが登場すると、会場からは愛情を込めた「変態!」の声が飛んだ(そういうお約束になっており、発音は日本語だ。現地ではピエンタイと読むらしい)。ステージ後には別イベントとして「プロデューサー名刺交換会」が行なわれ、坂上総合プロデューサーと「ミリシタ」の小美野日出文プロデューサーが現地ファンと直接交流した。

 

 

交流後の坂上総合プロデューサーに、台湾を含むアジア展開について聞いてみた。

「アイドルマスターというコンテンツは日本から始まったコンテンツですので、海外に向けて展開を始めるにあたってもやはりアジア、その中でも台湾、韓国といった近隣の地域からスタートしました。台湾のファンの皆さんはとても真面目で、真剣に『アイマス』を愛してくれることを感じます。交流する時もワーッと集まってくる感じでなく、礼儀正しく挨拶してくれるんです。台湾のファンの皆さんも“プロデューサー”としての意識を持ってくれてるんだなと感じます(坂上総合プロデューサー)」。
小美野日出文プロデューサーによれば、繁体字版は事前登録段階から注目度が高いという。「偶像大師 百萬人演唱會! 劇場時光」は日本版をベースにしつつも、基本衣装が日本版とはデザイン違いの「グロリアストリニティ」になっていたり、繁体字版限定のカードを実装したりで差別化もしているとのことだ。

 

復興ありがとう大使としてポケモンが登場

「日本館 ICHIBAN JAPAN」ブースでかなり毛色が異なっていたのが、“感謝復興接待城市 with ポケモン”のステージだ。岩手県大槌町、野田村、福島県南相馬市、北塩原村といった東北各地の代表者が登場し、ポケモンのラッキー、イシツブテ(の着ぐるみ)とともに復興の感謝と、オリンピックの成功を願うコメントを発していた。

 

 

復興、五輪、ポケモンと情報が渋滞していたので、担当者をつかまえて詳しい話を聞いてみた。

「東京五輪・パラリンピックの参加国・地域をもてなすホストタウンプロジェクトを、日本政府として行なっており、日本全国の自治体で事前合宿や交流を行なうことになっています。その枠組みがある中で、さらに岩手県、宮城県、福島県の三県に関しては、“復興ありがとうホストタウン”として震災復興に協力してくれた国や地域への感謝をテーマにしています。今回登壇してくださった自治体の皆さんは、台湾が対象地域となっているのです」。

政府主導の活動だったようで、担当者から“内閣官房”の名刺が出てきたのには驚いた。なぜ、そこにポケモンが登場したのだろうか。

「ポケモンの皆さんには、去年の11月から“ありがとう大使”に就任していただいています。やはり認知度の高さから、若い層にも興味を持ってほしいと考えています。もともとイシツブテは岩手県、ラプラスは宮城県、ラッキーは福島県の応援ポケモンなんです。三体が一緒になっての活動は今回が初めてになります」とのことだった。

ラッキーの着ぐるみが会場を周ると人だかりができており、さすがの人気を感じさせた。 

 

 

アニソンやアイドルは国境を超える!

イベントステージでは、ミライスカート、DANJYO、Luce Twinkle Wink☆、いぎなり東北産といった、日本から来たアイドルも多数ライブを行なっていた。アキバ総研的な注目アイドルは、やはりアニソンとアイドルの架け橋を目指すLuce Twinkle Wink☆(以下、ルーチェ)だ。

 

 

ステージ直前は人がまばらだったエリアだが、ルーチェのステージが始まる時間になると次から次にファンが集まって満員となった。今回深沢紗希さんが体調不良のため4人でステージに立ったルーチェだが、それを感じさせないエネルギーで「go to Romance>>>>>」や「Wonder Five」、「Symphony」など全6曲を披露。MCでは「go to Romance>>>>>」のMVを台湾の九份で撮影した話などで盛り上がったが、あくまでもメインはすさまじい運動量のライブをぶっ通しで見せる歌とダンスで勝負するパフォーマンス。国を超えて肉体言語で勝負できる強みを感じさせられた。

 

 

台湾のファンが、日本からの遠征組のダンスやコールを見よう見まねで真似しているのがとても微笑ましかったのだが、「恋色▽思考回路」の「君が大好きだ!!」の歌詞にウィンカーが「俺もー! 俺もー!」とコールを返すおなじみのくだりになると「こいつら何を言い出したんだ?」と驚いた顔をしていたのには笑ってしまった。

 

 

担当マネージャーに聞いたところ、台湾では「ねこパラ」が人気のため、ネコぱらOVA「仔ネコの日の約束」の主題歌である「Symphony」が大人気なのだそうだ。3回目の台湾訪問で着実に現地ファンを増やしている様子のルーチェだったが、アイドルの海外での活動にもアニメ、アニソンの力は大きく役立っているようだった。

 

 

(取材・文/中里キリ)

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