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ワンワードにこだわらない歌い方もあるんだなと学びました
── 2曲目の「ふわふわとしてる」も、「ぼくのヴィーナス」に共通する懐かしさがありました。こちらは、EPOさんの作詞・作曲です。 安野 日々、こういう心持ちでいることが大切だよ、という歌だと私は思いました。哀しいことがあったとしても、明るい未来を信じていこうという聖歌ですね。
── 歌詞を具体的に言うと、まだ出会えていない、運命の人を待っているという内容ですよね。 安野 はい、出会っていません。でも、どこかにいるあなたの電波をピピピって感じているんです。だから、大丈夫だよ、という。
── 思っているだけなんですけど、ある意味、すごく幸せですよね。 安野 すごく幸せですね。でも、まだ会えていないことに、切なくて泣きそうになったりする場面も描かれているんです。「あなた、本当にいるの?」みたいな感じで。でも、大丈夫なんですね。会ったら絶対にわかるから。目が合った瞬間に、この人だってわかって、「フゥ~」という気持ちになるんです。
── 「フゥ~」というのはサビにある一節で、EPOさんらしい歌詞ですし、安野さんが歌うと本当にふわふわな感じでした。 安野 本当ですか? ありがとうございます。この曲はコーラスでも、「フゥー」とか「ウー」という声がふんだんに入っているんです。ハモっているのではなく、主旋律とはまったく関係ない感じで動いているので、歌うのが難しかったです。
── そのコーラスが、この曲のやわらかさをさらに増しているんですね。 安野 はい、心地よくて、分厚いコーラスになっているので、がんばった成果をぜひ聴いていただきたいです。
── 3曲目は「笑顔。」。アルバムタイトルと同名曲です。 安野 「笑顔。」は、すごくのびのびと、聴いてくださる人の肩が凝らない歌にしたいというのが、自分のテーマでした。カフェや部屋でリラックスしているような、ホッとしたときに隣にある音楽になれたらいいなと思って、歌いました。
── この曲も幸せいっぱいで、歌詞もメロディも、とても温かいですよね。 安野 2ndミニアルバム「笑顔。」は、やさしい気持ちになれるやわらかい歌が多くて、歌い上げる曲は4曲目の「Wonder Shot」だけでした。「ぼくのヴィーナス」では、「そんなにがんばらないで。もっと楽しいキラキラとしたフレッシュさで歌って」とディレクションされましたし、「笑顔。」も、「しっかり歌っちゃってるので、もっとルーズな感じで」と。全体的に、カジュアルでリラクシーな歌い方を意識したんです。
── 声優として歌うキャラソンやワルキューレの曲は、激しい歌、ドラマチックな歌、感情をこめた歌が多かったと思います。 安野 そうですね。しっかり歌うことを求められることのほうが多かったので、今回のような抑えた表現の仕方もあるんだなって、アルバム制作を通して教えられました。
── シンガーによっては、息を吐くように歌う人も少なくないですよね。 安野 シンガーのそういう表現って、気持ちで歌っているから、言葉を1つひとつしっかり伝えなくても、歌心は伝わるんだという想いの現れですよね。「笑顔。」の歌詞だったら、「あなたがアクビする」というところはアクビしているように歌ったり、「ケンカしたり 怒ってみたりしてもね」というところは怒ったふうに歌ったりできるじゃないですか。でも、そういうふうにワンワードに縛られずに、曲全体を通して聴いたときに気持ちが残るボーカルを目指すというのも、歌の表現のひとつなんだなとわかりました。
── ボーカルって歌詞の世界観を伝えるのも大事なんですけど、楽器のひとつでもあるんですよね。 安野 そうなんです。演奏の一部になって揺られるというのも大切だと思いました。それがグルーヴになって、聴き手に心地よさとして伝わるんですよね。
── そういう歌い方を唯一しなかったのが、「Wonder Shot」。堂島孝平さんの作詞・作曲です。 安野 ワルキューレの「涙目爆発音」、1stミニアルバム「涙。」の「悲劇なんて大キライ」に続いての、堂島さん爆弾投下!という感じの曲です。聴いた瞬間、「ヤバい曲きちゃったな」って思いました(笑)。ああ、堂島さんだって思わされつつ、曲のテンションは記録更新されていて、「もう最高!」という。メッセージ性が強い曲なので、私もビシッとそれを叩きつけないといけないと思って、かっこよさを意識しました。
── 歌詞を表面的に捉えると、被写体に、いい表情をしてと要求しているカメラマンの歌ですよね。 安野 いつもとは違う表情を見せてよ、という歌詞です。ライブに置き換えると、この一瞬を見て、逃さないで、という意味になると思いました。「目を開きな ちゃんと開きな」という部分は、ぜひコール&レスポンスしたいです。みなさん、よろしくお願いします!
── 今この場にいることを大事にしてほしいというメッセージがこめられていると思いました。 安野 ライブって、みんなで同じ音楽を共有しているその瞬間が一番大切じゃないですか。それを訴える曲を作っていただけたなと思いました。
── 「Wonder Shot」のボーカル録りはいかがでしたか? 安野 自分なりの成長を感じました。ワルキューレの初期は、下ハモが多くて、メインボーカルに負けないしっかりした声を出すために、台に乗って歌っていたんです。そうするとお腹に力が入って、太い声が出るんですね。でも、いつしか台に乗らなくても大丈夫なようになっていました。「Wonder Shot」はまさに、しっかりした声を出さなきゃいけない音域の曲だったんですけど、私、もう台に乗らなくてもひとりで歌いきることができるんだと思うと、感慨深かったです。
── ワルキューレで鍛えられた成果が出たということですね。 安野 はい。鍛えられたと思います、本当に。