「ナイツ&マジック」のOP「Hello!My World!!」も、非常に高い中毒性を持っています。
おもちゃ箱をひっくり返したようなキッチュでにぎやかな楽曲を引っ張っているのがtowanaさんのボーカル。エレクトロ、プログレ、ポップスなど雑多なジャンルを内包したオルタナティブな楽曲に負けない「声のキャラクターの濃さ」がぴったりハマっています。異なる要素が不思議な化学変化を起こし、忘れられない楽曲が生まれる。これぞ音楽のマジックではないでしょうか。セオリーを逸脱する面白さも音楽の面白さのひとつです。
セオリー無視の面白さで言えば、「セントールの悩み」のOP「教えてダーウィン」もかなり常軌を逸しています。
メロディをじっくり聴くことを拒絶しているような転調に次ぐ転調。あまりにも多すぎる情報量は、終点のないジェットコースターに乗っているようなアップダウンが感じられます。「バランスも大切」と言いながら、まったくバランスを無視して爆走しているのが最高に痛快。メジャーキーとマイナーキーが行き来する不安感は、「かわいい」と「狂気」が表裏一体になっていると解釈できます。繰り返し聞いていますが、ほんとにすごい曲だな。
続いては、これぞ王道の格好よさとも言える「最遊記RELOAD BLAST」のED「リフレイン」を。
ソリッドでエッジの効いたギターリフとペンタトニックを基調とした歌謡曲の質感が感じられるメロディラインの応酬は、先進的なバンドサウンドにありながらどこか郷愁を誘います。オリエンタルな雰囲気も歌詞は口語体で言葉遊びになっているなど、気取らないフラットなスタンスが劇中の登場人物たちとリンクしている点も見逃せません。
ベーシストとして今期イチオシの楽曲は、「妖怪アパートの幽雅な日常」のED「日常識Broken down」と、「賭ケグルイ」のOP「Deal with the devil」の2曲です。
どちらの曲もジャズを下敷きにしていますが、そのアプローチは真逆となっています。
「日常識Broken down」ではオーソドックス(と言っても結構難易度高い)な渋いランニングフレーズから、手数の多いスラップまで横断する「ベーシスト必須スキル見本市」のようなフレーズは聴きどころ満載。
「Deal with the devil」はフリーキーでアバンギャルドな超高速モダンジャズ、と形容したくなる楽曲。支離滅裂一歩手前のヒリヒリした音の駆け引きが堪りません。高速ランニングフレーズをビシビシ決めるベースが縦横無尽に駆け回るすべての楽器の統率をとっているのがおわかりいただけると思います。
こちらもベースの役割として「ベーシスト必須スキル見本市」と言えます。どちらもかなり難易度は高いので、練習する際は心して挑みましょう。
最後は「プリンセス・プリンシパル」のOP「The Other Side of the Wall」、この曲を今期のイチ押しとさせていただきます。いやースゴい! カッコいい! 優勝!
一切の無駄がないストイックなアレンジ、パワフルなボーカル(しかも英歌詞!)、緩急の付け方、どこを切ってもひたすらにカッコいい。もう、カッコいいしか言ってない。
ホーンセクションが楽曲を爆走させる起爆剤になり、フリーキーなピアノが楽曲に幅を与える。この構造はジャズに近いものですが、和風でも洋風でもない無国籍感があるのも魅力です。どこの国ともわからない雑多な熱量がないまぜになった爆発力のあるアニメソングです。
いかがだったでしょうか?
恐悦ながら春アニメ楽曲に続き夏アニメ楽曲も選出させていただきました。皆さんお気に入りの作品の楽曲は入っていましたか?
今回は本当に最後まで悩みました。それくらい多様なジャンルのアニメソングがあり、それは同時に多様なアニメ作品が豊富に作られている証拠でもあります。次はどんな作品が、アニメソングが私たちを夢中にさせるのか、今から楽しみでなりません。
それでは、秋アニメの時期にお会いできたら幸いです。