クリエイティブなことをどんどんやって、世界をもっと面白く!
─今後挑戦されたいことは?
中村 現在進行形で新しいことに挑戦しておりまして、ご期待ください!(笑)
─過去のインタビューでは、京極夏彦さんの「鉄鼠の檻(てっそのおり)」がやりたいと。
中村 「『魍魎』の後に続けて京極さんのシリーズをやろう」というお話があったので、僕からはそう提案しました。機会があれば今でもぜひ、と思いますよ。
─同人活動のほうはいかがでしょうか?
中村 僕はもう「同人」という言い方をしない、そこに線を引かないようにしています。アニメ業界では、「本業がアニメで、同人活動は余暇でやる」的なニュアンスでおっしゃる方も多いのですが、そもそも自分の表現をアニメに限らなくてもいい話だし、何より本気以外の取り組みでは全く通用しないほどに、世の中全体のレベルが上がっていると感じるからです。区別せず、線引きせず、すべてにガチで取り組むという以外の感覚は、今の自分にはありません。
僕らの仕事って、「すでにある1を100にする」ものなんだと思っています。「0から1を生み出す」には別の苦労が必要で、すべての工程を経験してみて自分がつまづくのはどこかを知りたいんです。
新海誠監督は、個人的な活動からだんだんと商業的なアニメーションの作り方に移行してきたわけですが、僕はむしろ個人的な活動のころを知りたい。自分も経験してみたいという気持ちです。なんか生き方の順番が、逆を行ってるみたいな話ですけれども。
─実写はどうでしょうか?
中村 「シン・ゴジラ」(2016)面白かったです(笑)。庵野さんらしさが、実写でもすごく充満してましたね。アニメーション出身の実写監督にも、「その人にしかない何か」を表現して、勝負できるということを見せたと思います。そうであれば、アニメ監督が実写を撮ることにも意味があるなと感じました。それこそ、線を引く必要がない話です。
ただ、今はまだ自分に関しては、実写には純粋にお客でいたいという気持ちです。
─最後にアニメファンの皆さんにメッセージをお願いします!
中村 僕はアニメ業界に来たときに、この仕事に必要な多くの技術をまったく持っていなかった人間です。それでもこの仕事をし続けてきて、本当に楽しかったです。つらいことがないとは言いません。楽しめるのも才能かもしれません。ですが、その才能は誰もが持っているはずのものだと、僕は確信しています。
クリエイティブな仕事をしていきたい若い人は、昔よりも今のほうがずっと多いと思います。僕でも楽しめているのですから、何かクリエイティブなことをやりたい皆さんは、何でもどんどんやってみて下さい。
今は、業界に行かなきゃ何もできない、という時代ではありません。皆さんが垣根をこえて面白いことを次々としていけば、きっとその分だけこの世の中は明日、もっと面白くなっていくんじゃないでしょうか。
●中村亮介 プロフィール
アニメーション監督・演出家。東京大学卒業後、1999年にマッドハウス入社。2010年5月以降、フリーとして活動している。演出家として参加した作品は「はじめの一歩」(2000~02、脚本・演出)、「花田少年史」(2002~03、演出)、「MONSTER」(2004~05、監督助手・脚本・絵コンテ・演出)、「逆境無頼カイジ」(2007~08、絵コンテ・演出)、「ばらかもん」(2014、オープニング絵コンテ・演出)、「四月は君の嘘」(2014、オープニング絵コンテ・演出・原画)、「バッテリー」(2016、エンディング絵コンテ・演出)、「3月のライオン」(2016、エンディング絵コンテ・演出)、「機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ」(2016、エンディング絵コンテ・演出)など多数。監督作品には「魍魎の匣」(2008)、「走れメロス」(2009、「青い文学」シリーズ)、「ねらわれた学園」(2012)、「あいうら」(2013)、「灰と幻想のグリムガル」(2016)などがある。
「魍魎の匣」 公式サイト
http://www.ntv.co.jp/mouryou/
「走れメロス」 公式サイト
http://www.ntv.co.jp/bungaku/cast/run_m.html
「ねらわれた学園」 公式サイト
http://www.neragaku.com/
「あいうら」 公式サイト
http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/aiura/index2.html
「灰と幻想のグリムガル」
http://grimgar.com/
「松風工房」 個人ブログ
http://ryousuke1976.blog123.fc2.com/
中村亮介 ツイッター
https://twitter.com/Ryousuke_Nak
(取材・文:crepuscular)