「シドニアの騎士」「亜人」「BLAME!」……ポリゴン・ピクチュアズの“これまで”と“これから”を塩田周三代表取締役に聞く

2016年10月12日 15:000

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「亜人」から「BLAME!」、そしてこれからのポリゴン・ピクチュアズ


──ロボットアニメでファンをつかんだのだから、次のアニメもロボットアニメ……という流れになるのが自然かと思うのですが。


塩田 社名がポリゴン・ピクチュアズ……ポリゴンは多角形という意味なんですが、その名前の通り、作風が一貫しないというか……これはもうウチの“血”のようなものだと思うんですが。ロボットアニメで成功したんだからロボットアニメをやるのがビジネスとしては儲かるのでしょうが、そうはならないというか。次に出会う作品でまた面白いことをやろう、となる。

──そこで選ばれたのが桜井画門先生の「亜人」という。

塩田 現代劇、しかも人間の芝居が多い「亜人」は、決して3DCGで作るのに向いている題材ではありません。しかしポリゴン・ピクチュアズは常に「CGであるからこそできる表現」を求めています。元々がCG屋なので「CGの可能性」を広げていきたいという、CG至上主義的な部分があるんです。

──CG至上主義、ですか。

塩田 手描きのアニメからCGアニメを作るようになった他の会社と我々の、方向性の違いといいますか。マンガをアニメ化するとして、もちろん原作のテイストをCGで再現することに注力はしますが、それはイラストを完全コピーするということではありません。必ずCGならではの表現というものを追求します。たとえば「亜人」であれば「IBM(黒い幽霊)」の表現ですよね。あの表現はCGだからこそできたことだと思います。またCGにとっては不得手な現代劇に挑戦することも、CGの可能性を広げるチャレンジになります。そういうところから「亜人」を制作することになりました。


──チャレンジといえば、「亜人」はTVシリーズと劇場版が並行して制作されているんですよね。

 

塩田 最近はTVアニメを作って映像ソフトを売るという従来のビジネスがうまく回りにくくなっていくいっぽうで、映像コンテンツといえども映画館などのライブの場におけるファンとの直接の触れ合いがより大切になってきています。これは日本のアニメビジネスのすごいところで、こうやってあらゆる媒体が平等にシームレスに連動していくというのは他の国ではなかなかないことですし、参考になるな、とも思います。

「亜人」では、そういう流れを意識して、まずは映画、つまりライブとして展開し、その勢いでTVシリーズを放映、ファン層を熟成していく……そうやって勢いをキープして、ビジネスに繋げていきたいと考えました。

──さて、現在、劇場版最終章となる「亜人 -衝戟-」が上映中ですが、観客の反応も含め、手ごたえはいかがですか?

 

塩田 今のところTwitterなどの反応を眺めていると好評で、面白かったと思っていただけているようですね。
基本的に制作には口を出していないんですが、唯一「映画で見せるなら、映画としての価値をきちんと持たせてほしい」ということは常に言ってきました。アクションも、バトルも、音まで含めた「ライブ」としての価値です。お金を払って観に来てくださるお客さんが上映時間の中でしっかりと満足して帰っていただけるようでなければいけない。皆さんの反応を見て、それをちゃんと実現できたかな、と思っています。


──たしかに最終章にふさわしく、バトルやアクションも盛りだくさんで、エンディングも含めて大変“映画らしい”作品だと感じました。

 

塩田 逆に、現在放送中のTVシリーズ第2クールは時間をかけて、より各キャラの人物像にフォーカスしていく内容になっています。こちらも、また劇場版とは違った楽しみ方ができると思います。

──TVシリーズを見て、再び劇場版「亜人」を観返す……なんて楽しみ方もありですね。さて、続いては2017年に公開予定の劇場アニメ「BLAME!」ですが……再び弐瓶勉先生の原作です。あえて今、本作にチャレンジする理由を教えてください。


塩田 「シドニアの騎士」をやったら次は「BLAME!」でしょう、みたいな(笑)。そういう気持ちだったと思うんです。やっぱり「BLAME!」はひとつの金字塔ですから。世界中にハードコアなファンが多い作品だし、だからこそちゃんとやりたい。そしてそういう人たちにこれぞ「BLAME!」というアニメを届けたい、という話を原作者である弐瓶先生とも話をしています。

──弐瓶先生の全面協力・総監修がうたわれていますよね。

塩田 今回、弐瓶先生に「シドニアの騎士」のとき以上にガッツリと参加いただいています。原作はなかなか難解なストーリーのマンガではあるんですが、映画としてのエンターテインメント性はもちろん重要ですから、初めて劇場で「BLAME!」に触れるという方にも理解していただけるように再構成しています。もちろん、ハードなファンの方が観ても喜んでもらえる要素もしっかり盛り込んだ内容です。

──「BLAME!」制作における映像面でのテーマとは何でしょうか?

 



塩田 現在公開中のトレーラーを見ていただくと少しわかるのですが、いわゆるアニメ調というだけではない、トゥーンなんだけどきちんと物理計算を必要とするリアルなライティングにチャレンジしています。これは子会社である「J CUBE(ジェー・キューブ)」が開発した、「マネキ」という新しいトゥーンシェーダーをこのプロジェクトで全面的に使用しているためで、これまでのCGアニメとはまったく異なる質感を出すことができると思います。

 

──それは、本編を観るのがすごく楽しみです。それでは最後に今後の3DCGアニメ、そしてポリゴン・ピクチュアズの展望について、うかがいたいと思います。

塩田 ポリゴン・ピクチュアは元々CG屋として、常に世界と戦って勝ちたいと思っている会社なんですが、アニメ調のCG作品という分野においてはそれができると思っています。
日本ほど複雑で凝ったアニメをつくる国はありませんが、そういう作品に対する需要って世界中どこの国にもあるんですよね。ただ、ほとんどの国のマーケットに供給ができていない。それはアニメやコミックは子どものものだという先入観があるからです。そういう中でNetflixと組んで世界供給を実現していけば、我々は絶対的なプレーヤーになれると思っています。そういったヤングアダルト、アダルト向けのアニメ作品というのは、アメリカの会社には作れませんから。

あとは最近すごく流行っているVR、ARもやっていきたいですね。先日発表したバンダイナムコエンターテインメントさんとの「プロジェクト レイヤード」では、リアルタイムエンジンを主体的に作りながらアニメーションを作り、それによってゲームとの親和性を高めていくという試みにチャレンジしていますが、こういうことにもドンドン挑戦していきたいと思っています。


──今後のポリゴン・ピクチュアズの活躍が楽しみです。本日はありがとうございました。

塩田周三(しおた・しゅうぞう) プロフィール

1997年に株式会社ドリーム・ピクチュアズ・スタジオ立ち上げに参画後、 1999年にポリゴン・ピクチュアズ入社。2003年には代表取締役に就任し、海外マーケット開拓に注力。TV シリーズ制作や海外市場をターゲットにしたコンテンツ企画開発を実現する。いっぽうで「Prix Ars Electronica」(オーストリア)、「SIGGRAPH」(米) などの国内外映像祭の審査員を歴任し、2008 年には、米国アニメーション専門誌「Animation Magazine」が選ぶ「25Toon Titans of Asia( アジア・アニメーション業界の25 傑)」の1人に選定された。2016年のアヌシー国際アニメーション映画祭では審査員を務めた。米国育ち、趣味はバンド活動。

(取材・文/編集部)


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