大賢者さんの評価レビュー

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ボロ泣きしてしまいました

観賞手段:動画サイト
ネタバレ
クレしん映画の最高峰と言えるアニメだと思います。個人的にはオトナ帝国より多角的に見ても良い作品だと思います。
ここのところアニメ映画が流行っていますがこんなに心が揺さぶられる映画はないでしょう。ジブリでも今敏作品でもありません。
高橋渉監督、天才だと思います。是非クレしん以外のアニメ映画も作っていただきたいです。

クレヨンしんちゃんの基本は家族とギャグです。家族をテーマとしてその家族愛を見事に書ききっています。確かにオトナ帝国も戦国も良い作品でしたがこの二点が弱く、クレヨンしんちゃん以外でも良いかな、という内容でした。
今回のろぼとーちゃんでは主眼をしんのすけとヒロシ、みさえとヒロシの関係をメインに進めています。まずここが良い。
日本人が慣れ親しんできたクレヨンしんちゃんだからこそ、感動できる部分を上手く使っています。
そしてギャグも面白い。芸能ネタやオマージュネタをしっかり入れているあたりクレヨンしんちゃんらしいです。子供が楽しめることはもちろん大人が楽しめるという、クレヨンしんちゃんの映画を見に来る層のことも考えられています。ただ過去作と比べるとギャグが弱いかもしれません(ブタのヒヅメ以前)。

きゃりーぱみゅぱみゅの声も意外と親和性よく、中田ヤスタカがクレヨンしんちゃん、映画のプロットを知った上で書いていることがわかる、父親を主題にした歌詞、メロディになっています。電子音がまたロボットという意味で映画として一貫性を保っています。
この曲を聞くだけで泣いてしまう…。
BGMも本筋を引き立てる映画らしい音で全く違和感ありません。

最近の深層強化学習、オートエンコーダやらの流行りでひょっとすると汎用人工知能ができるかもしれない、という流れになっています。
その時一体家族はどうなるのか、人間とロボット(知能)のどちらをとるのか?何が起きるのか?性はどうなるのか?子供はどう思うのか?記憶とは何か?
そんなことを問いかける意味も感じられます。
死を安易に使うのではなく、ロボットという一言をかませることでただの感動モノで終わらせていません。

みさえが肉体のあるヒロシを選んだということがおかしい、みたいな感想を見たことがありますが、意図してやっていることであり、ろぼとーちゃんが消えることをゆっくり選んでいくきっかけになっています。
最後、しんのすけに対する愛情は等しくヒロシであり、みさえの声でロボットである自分の存在価値がゆらぎ負けるという、親子、夫婦の対比がそれを示しています。
みさえ、ヒロシお互いにそれを理解した上での答えです。
その後畳み掛けるようにろぼとーちゃん視点での最期が描かれます。父親の立場、母親の立場を想像してしまい涙が止まりませんでした。
テーマである「父親の威厳」ですが、このシーンが全てを示していると思います。世の父親たちが家庭で威張ることを威厳としているが、それは違う、ヒロシのように命をかけ母子を守り家庭に笑顔をもたらすのがまっとうな父親である、ということでしょう。

クレヨンしんちゃんの映画なので仕方ありませんが、絵がもっと綺麗なら…ってもはやクレヨンしんちゃんか怪しいですが、そこが映画としては足りないかもしれません。

細かい点は書きませんが、あらゆる点で素晴らしい映画です。
クレヨンしんちゃんという「子供向けアニメ」なのに渋いことをやっているオトナ帝国は面白い、というサブカル的な考え方からするとオトナ帝国のほうが興味を持てるのかもしれませんが、子供を持つ親からしたらこちらの方が面白く、また感動させられてしまうんじゃないかと思います。
大賢者
大賢者
ストーリー
5.0
作画
4.0
キャラクター
5.0
音楽
5.0
オリジナリティ
4.0
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2017-01-04 15:10:28

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