ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

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デュークという男の気高さ

観賞手段:ビデオ/DVD、動画サイト
シラカバ牧場で暮らす青年・宇門大介。その正体はフリード星の王子・デュークフリードである。フリード星を滅ぼしたベガ大王は、次に地球を毒牙に掛けようとする。大介はフリード星の守護神であるロボット・グレンダイザーに乗り、新たな故郷となった地球のために戦うのだった。
スーパーロボット・グレンダイザーが敵の円盤獣をやっつける活躍の影に、デュークという男の悲劇と気高さがあるのが「UFOロボ グレンダイザー」という作品だ。
彼の故郷であるフリード星はベガ大王に滅ぼされ、幸せだった日々は永遠に失われてしまった。かろうじて生き延びたデュークは宇門博士に拾われて養子となり、シラカバ牧場で働くことに。牧場は平和だが、大介の表情にはときおり陰がよぎる。ベガ大王と戦ったとてフリード星が戻ってくることはないし、いくら地球に尽くしてもフリード星人であるデュークは地球人にはなれないのだ。デュークの戦いは苦難の連続。彼同様にベガ大王の犠牲者となった人々やかつての知己が手先とされて次々と悲惨な最期を遂げるほか、毎回倒してきた円盤獣にショッキングな事実が秘められているなど、過去はデュークを掴んで離さない。このまま抜け殻になってもおかしくない程に辛い状態だが、それでもデュークはグレンダイザーに乗って戦う。その様には悲壮さと高貴さが漂っている。視聴者はいつの間にかデュークの幸福を祈っている自分に気付くだろう。彼が仲間と語らったり、季節の行事に参加するなど笑顔を見せる度、心が温かくなってくるのだ。本作はフランスやイタリア、イラクといった海外でも非常に高い人気を誇るが、その理由はデュークの悲劇と高貴さにあるように感じられる。当初は全てを一人で背負い込もうとしていたデュークも、地球の仲間たちに心を開いてともに戦うようになる。流浪の貴公子が安住の地を得るまでの物語という側面もあるわけで、そこには時代を越えて人を惹きつける魅力がある。全74話を改めて見返すことで、2024年に「グレンダイザーU」としてリブートされることに得心がいくはずだ。
これは余談になるのだが、個人的には前2作である「マジンガーZ」「グレートマジンガー」からのオープニングの変化も興味深いものがある。前2作ではでは勇壮な歌詞とともに主役ロボットの武器や機能も歌っている。一方、本作では武器や機能はなりを潜め、宇宙における地球の小ささや尊さ、これを守る決意を歌い上げる。人が乗るロボットという概念が前2作で一般的となったからこそ可能になった主題歌といえるだろう。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
5.0
作画
4.0
キャラクター
5.0
音楽
5.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 4.5
いいね(0) 2024-04-30 17:53:03

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