YOU44さんの評価レビュー

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ロマンチック・ラブ・イデオロギーの次につながる

観賞手段:テレビ
「幼馴染が親友だなんて…素敵です」
ほんわかしたラブコメだろうという当初の予想を翻し、
注目すべき点がいくつかある

①田舎から東京へとか、都会から田舎へという話は
たくさんあるが、ほとんどが家族の事情か
就職、大学進学で親元を離れるもの。
本作は自分の意志で東京の高校へ進学。
『のんのんびより』のひかげもそうだった。
②その志は硬派だ。
「私はこの高校生活、ただの一度だって失敗しない」
「なぜなら私には明確な人生設計があるから」
「大学はもちろんT大」「法学部を首席で卒業」
「総務省に入省」「過疎対策に大きく貢献」
「定年後は地元に戻り市長」「財政を大幅に改善」
「死んだらお骨は日本海にまいてもらう」
「この3年間はそんな夢の土俵に立てるだけの
学力を身につけるためにある」
親の影響かと思えば、親は至って平凡で温厚。
③ヒロイン岩倉美津未は、絵的にまったく地味顔。
こういう作風なのかと思ったら、都会っ子たちの描写はツヤッツヤの
キラッキラ。まるで芸能人のよう。意識的な描き分けなのだ。

上野千鶴子や『家族と国家は共謀する』の著者信田さよ子など
フェミニストを自認する人たちは
「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」
(結婚のもとにおける愛と性と生殖の三位一体)
という言葉を嘲笑気味に使う。作為、幻想、解体せよと。
たしかに昭和の後半と平成の始め頃に
普遍的価値のように使われた概念で
歴史的には超短い間に流行った通念と言える。
ただアニメの世界ではドラマになりやすいので
いまだ根強い。
本作はその次につながるエポックメイキングな
作品に思える。

4月らしい「ピカピカの一年生」感ある出だし。
折しも、TVではサッシーと椎名桔平の一人暮らしを応援する
「ハウスメイト」のCMが流れる。
4月ならでは初々しさ、都会へ出てきた地方出身者の思い、
そういったものがどっと流れ込んでくる。

よく見ると、スカート丈、ソックスが個性に合わせ微妙に
描き分けられている。
作者・高松美咲は「人の心の機微」に関心があるという。
その言葉通り、小物、言葉、動作、表情。芸が細かい。

第4話と第5話は白眉。
「あっ、ものを教えるってね
問題に答えるより難しいんだって」
「人格的には褒めてないよ そんな特には」
さらに第8話
「そんなん、改めて言わなくていいって、恥ずかしいから。
センベイ食うか?」
お泊り女子会で、結月の打ち明け話に誠が返すこの言葉に
作品のスタンスが凝縮されてる。
そして第10話、結月の口は動いていないのに
「は?出ませんが。舞台美術とかやりますが」
心の声が語る。初め何が起こってるのか分からなかった。
「キャラ?とか気にして、嫌なこと言わなかったりとかさ
やっぱいつかは無理がくるんじゃないの」
これはクリス君。
「そこまで気にしなくても」
こちらは志摩君。この微細な視点、まさに真骨頂。
第11話、誠の中学の友だちの描写もそう。
細かいところに神が宿る。
寺崎裕香と潘めぐみ、ベテランが脇を締めて、感服です。
YOU44
YOU44
ストーリー
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作画
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キャラクター
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音楽
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オリジナリティ
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演出
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声優
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満足度 5.0
いいね(0) 2023-06-17 08:01:49

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