soiboshiさんの評価レビュー

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真実と幻想と。

観賞手段:テレビ、試写会、動画サイト
ネタバレ
江戸川乱歩没後50周年という言葉を掲げて始まるこの作品。
残念ながらわたしは乱歩を読んでいなかったが、
オリジナル作品として魅力的なので、終始楽しむことができた。

天真爛漫だが、浮世離れして危なっかしい思想の持ち主である
コバヤシ少年は、事件に巻き込まれることで顔見知りになる
天才少年探偵・アケチの事務所に入り浸り、助手を志願する。
そんなコバヤシを心配してなにかと世話を焼く同級生ハシバ。

ハシバ少年は随所でコバヤシを異性として(?)意識しているが、
原作のコバヤシ少年も二十面相に気に入られたり女装をしたりなど
するそうで、アニメの演出はあながち誇張でないのがまた面白い。

アケチは国に特別に認められた探偵として幾多の事件を追う。
その天才的な頭脳から、学校に登校をしなくてもよい立場だ。
警察の機密施設である新宿プリズンにも手帳の提示で出入り自由だ。
そこには過去に対峙した黒蜥蜴という女怪盗が収監されている。

原作もそうなのかもしれないが、アニメで見る限り、
登場人物の関係をエンタテインメントとして判りやすく組んでおり、
濃ゆいキャラクタアをうまくまとめ、活かして話を進めている。

変装の名人で希代の怪盗と謳われる影男はなかでも特に面白い。
哀しい事件絡みの登場からのコメディ要員への転身がまた可笑しい。
最終回まで活躍を見せる実にいいキャラクタアとなっている。
子安武人さんの演技も魅力的だ。

話数が進むにつれてアケチの過去が判明してくるのだが、
アケチの親友とも言える存在であったナミコシが
正真正銘の二十面相であるという設定は、意外性はないが、
作品を活かすための太い骨子となっている。
作品の副題が、Game of Laplaceであるゆえんだ。

最終回まで視聴しての感想だが、
ナミコシは、他作品だがベルセルクのグリフィスに似ている。
親友アケチに拒絶されたと思い込んだところから深く傷つき、
闇に深く身を沈めてしまう。人生の歯車を狂わせてしまうのだ。
差し伸べられた手でさえ振りほどくほど、
アケチとともに生み出した数式、暗黒星の証明と成功に固執
するようになり、結果、その過程で模倣犯……
つまり多くの二十面相を生み出す結果を導く。

別にアケチはかれを否定などしていない。
むしろ作成者に死をもたらすという暗黒星の結果を案じ、
そのためにナミコシに数式の失敗を言い渡すのだが、
ナミコシはその不安定で繊細なパーソナリティから、
取り返しのつかない方向へといわゆる闇落ちをしてしまう。

最終回ではナミコシの安否、ゆくえは不明となっている。
2期を作りやすいと思われる締めくくりなので、
最後までアケチとナミコシの関係を見てみたい。

ノベライズとコミカライズが決まっているので、
まだまだ乱歩奇譚に期待しているところだ。
soiboshi
soiboshi
ストーリー
5.0
作画
4.5
キャラクター
5.0
音楽
4.5
オリジナリティ
4.5
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2015-09-20 10:19:05

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