めぐり合わせでアニメ・ゲーム業界に
─キャリアについてうかがいます。アニメ・ゲーム業界に入られたご経緯は?
橋本 「作編曲家になる」という意識はなかったんですけど、もともとレコーディングは好きでした。インディーユニットで曲を書いていた時、たまたま作編の事務所の方に聴いていただいて、アイドル系の編曲を始めました。それから今の事務所のベリーグーに移って、めぐり合わせでアニメの仕事が増えていきました。
─アニメ・ゲーム関係で、最初のお仕事は何でしょうか?
橋本 PlayStation用ゲーム「トゥルー・ラブストーリー」(1998)のボーカルコレクションで、「いつの日か また逢いましょう」の編曲をやったのが最初です。同年には声優・保志総一朗さんの「ONEWAY RADIO」のカップリング「Lost my past」の詩曲編もやらせていただきました。
アニメはキャラソンだと「Get Ride! アムドライバー」(2004)の「Wild Wind」の詩曲編、劇伴だと「とらドラ!」が最初ですね。「とらドラ!」は作品がすばらしくて、音楽もうまく使っていただいたので、それを聴いた業界の方も興味を持ってくださって、次の依頼につながっていきました。
転機はアニメ主題歌
─キャリア上、転機になったお仕事は?
橋本 アニメの主題歌に決まったというのが大きくて、2004年に「恋風」のオープニングテーマ「恋風」と、「月詠 -MOON PHASE-」のエンディングテーマ「悲しい予感」が決まりました。それで自分のいる場所があるかな、自分の作っているものがアニメの世界でも受け入れられるかな、と思えるようになりました。
その後に「乙女はお姉さまに恋してる」(2006)で「Love Power」がオープニングテーマに決まったことで、いろいろなものが広がった感じがしますね。「さよなら絶望先生」の主題歌をやる機会にも恵まれて、その後、同じプロデューサーから「とらドラ!」の依頼もありました。
─印象に残っている作品やシーンは?
橋本 「輪るピングドラム」で「ROCK OVER JAPAN」が使われるバンク・シーンです。観た時には「これはすごい!」と感動しました。映像と曲と効果音とセリフ、これら全部が絡まっていくのが理想的な挿入歌だと実感しました。
大切なのは対応力と音楽そのものが好きであること
─アニメの作曲家、編曲家、作詞家に求められる資質能力とは何でしょうか?
橋本 いろいろなオーダーがあるのでそれに対応できること、オーダーを柔軟に受け止めて対応するのをいとわないということですね。コンテンツがあって発注があるから作る音楽なので、それに合わないとか、合わせられないというのでは曲を作品に反映していきにくいのでは、と思います。そこがアーティストで、自分の作品を発表する方とは違うところだと思います。
あとやっぱり、音楽そのものが好きであることですね。アニメやゲームが好きというのも重要ですけど、音楽を作る時には音楽が好きというのが根底にないと、嫌になってきちゃうと思うんですよね(笑)。
─今後挑戦されたいことは?
橋本 劇場版のBGMはまだ作ったことがないので作ってみたいのと、実写ももっとやってみたいですね。あとはゲームのサントラにも興味があります。やったことないことは、やりたいなと思っています。
─最近は、アニメやゲーム原作の舞台作品も増えてきました。
橋本 ミュージカルに近いものとか、非常に興味がありますね。「おそ松さん」の舞台は観にいかせていただいたのですが、BGMもアニメのサントラを使ってくださって、すごくおもしろかったです。
─アニメからは離れますが、橋本さんと坂本和賀子さんのユニット「maybelle(メイベル)」の今後のご予定は?
橋本 私とボーカルの時間がなかなかかみ合わなくて……(苦笑)。でも、ストック曲はあるので、いつか発表できるところがあるといいなと思っています。
─2018年1月放送予定の「刀使ノ巫女」への意気込みをお聞かせください。
橋本 女子高生のバトルもので、しかもオリジナルストーリーなので、期待していただければと思います。あとバトルに対しての音楽というのも久しぶりなので、非常に楽しみです。
─アニメファンの皆さんにメッセージをお願いいたします!
橋本 アニメもゲームも、楽しんでもらえるのが一番うれしいですね。音楽は映像のわき役であるとは思うんですけど、「あの時のあの曲、よかったな」とか、ちょっとでも記憶に残ってくれたらうれしいです。
●橋本由香利 プロフィール
作曲家、編曲家、作詞家。インディーズユニットでの活動を経て、現在はベリーグー所属。ネオアコ、ギターポップ、フレンチポップを得意とする。アニメでは主題歌、キャラクターソング、劇伴などを手がけ、そのクオリティの高さはトップレベルと言える。参加作品は「Get Ride! アムドライバー」(2004)、「恋風」(2004)、「月詠 -MOON PHASE-」(2004)、「乙女はお姉さまに恋してる」(2006)、「らき☆すた」(2007)、「さよなら絶望先生」(2007~09)、「ストライクウィッチーズ」(2008)、「とらドラ!」(2008~09)、「かなめも」(2009)、「生徒会の一存」(2009)、「おとめ妖怪 ざくろ」(2010)、「THE IDOLM@STER」(2011)、「まよチキ!」(2011)、「輪るピングドラム」(2011)、「K」(2012、2015)、「ささみさん@がんばらない」(2013)、「月刊少女野崎くん」(2014)、「ユリ熊嵐」(2015)、「アイドルマスター シンデレラガールズ」(2015)、「おそ松さん」(2015~17)、「3月のライオン」(2016~17)、「ひなこのーと」(2017)など多数。声優やアイドルにも数多くの楽曲を提供している。現在は、2018年1月放送予定の「刀使ノ巫女」の音楽を鋭意制作中。
※TVアニメ「さよなら絶望先生」 公式サイト
http://king-cr.jp/special/zetsubou/top.html
※TVアニメ「とらドラ!」 公式サイト
http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/toradora/
※TVアニメ「おとめ妖怪 ざくろ」 公式サイト
http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/otome-zakuro/
※TVアニメ「輪るピングドラム」公式サイト
http://penguindrum.jp/
※TVアニメ「ささみさん@がんばらない」 公式サイト
http://www.tbs.co.jp/anime/sasami/
※TVアニメ「3月のライオン」 公式サイト
http://3lion-anime.com/
※TVアニメ「おそ松さん」 公式サイト
http://osomatsusan.com/
※TVアニメ「刀使ノ巫女」 公式サイト
http://tojinomiko.jp/
※橋本由香利 プロフィール(有限会社ベリーグーHPより)
http://www.verygoo.jp/artists/hashimoto.php
※橋本由香利 ツイッター
https://twitter.com/yukalihashimoto
(取材・文:crepuscular)