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fhánaのいくつもの世界が、ひとつに繋がったアルバムです
──佐藤さん、今回のアルバムのテーマとは何ですか?
佐藤 「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」は、〈幾千回ものループを繰り返し今ここに 辿り着いた「この僕」〉という歌詞から始まるのですが、それはまさに、fhánaの今を示しているように感じたんです。もともと別々に活動していたメンバーが、「CLANNAD」に代表されるノベルゲームが好きという共通項で意気投合して結成されたのがfhánaで、メジャーデビュー前に出したミニアルバムには「New World Line」というタイトルを付けていました。「World Line」というのは「世界線」という意味で、選択肢を選ぶごとにストーリーが枝分かれし、さまざまなエンディングの可能性があるノベルゲームの世界観に影響を受けて作ったアルバムです。しかし、メジャーデビュー後は、アニメの主題歌を作り続けてきて、デビュー前のノベルゲーム的なコンセプトとは離れてしまった気がしていた。でも「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」の歌詞を読んで、待てよと。
──fhánaのやってきたことは、デビュー以前以後で、別に違ってはいなかったと?
佐藤 そうですね。デビュー後のシングルは、それぞれのアニメの世界観に寄せていて、一見バラバラのように思えるのですが、実はそのどれもが、fhánaがひとつのルートを選ぶことによって生まれてきた結果なんであり、それぞれのアニメの物語も、fhánaという大きな物語の可能性の1つだったんだなと。僕らもまた〈幾千回ものループを繰り返し今ここに 辿り着いた〉ということに気づいて、まったくブレてなかったと。今回のアルバムは、fhánaのいくつもの可能性が統合された作品、と捉えることができるんじゃないかと思いました。
──「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」が完成したことによって、アルバム全体を見通すことができたということですね。
佐藤 アルバムを作り始めた時は、そこまで見通せてなくて。でも「メランコリー」という言葉を使いたいということだけをは決めていました。「Outside of Melancholy」というワードも、そもそもは、「誰もが憂鬱を抱えながら生きているので、その向こう側に行こう、メランコリーから抜け出そう」というメッセージをこめたものでした。でも「世界線」という概念と照らし合わせたら、もっと深い意味が出てきました。
たくさんの選択をして枝分かれしていった可能性の中から、今、自分がこの世界にいます。逆に言えば、もし別な選択をしていたら、今とは別な自分がいたはずです。そこで、本当はこうが良かったと、憂鬱を感じるのではなく、ここまで辿りついたことは、ある意味、奇跡だなと希望を見いだそうというのがこのアルバムにこめられた思いです。fhánaはそうして1stアルバムまで歩んでこられたし、このアルバムを聴いてくださる人にも、世界を肯定することで、憂鬱の向こう側に行こうというメッセージを届けたいなと。
kevin 僕も佐藤さんの話を聞いて、すごい合点がいきましたね。メールでアルバムのテーマが共有された時、本当にそうだなと思ったし、完成したアルバムを聴くと、すべての曲が、僕らの可能性を表していて。
yuxuki 過去と現在がきれいに繋がったなと。アレンジ面にも、その考えが反映されているんです。たとえば最後の曲「white light」のピアノのリフを、「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」の間奏にも入れて、全体でループ構造を作ったり。そういう発想は、いくつもの世界を繋ぐというテーマがあったからこそ出てきたものだと思います。
towana 私は、とにかく「Outside of Melancholy ~憂鬱の向こう側~」の歌詞に感動して。さらに、佐藤さんから届いたテーマについての熱いメールを読んだことで、エモーショナルなボーカルを乗せることができました。