ぶれないさんの評価レビュー

リアルタイム時はまだ小さかったので、リアルタイム放送時から１０年程田ってから
の再放送で初めて見ました。
主人公のケンシロウが拳法で軽快に敵を倒すアクション描写も痛快ですが、
大人になって、この作品の世界観を考察すると改めてこの作品の深さを感じさせられます。
核戦争によって、秩序が崩壊し、強い者が弱い者を暴力だけで支配する地獄のようなまさに世紀末な世界で、正義と愛の心で、弱気を助け、強きを挫き、世界に再び平和と協調を
取り戻そうと立ち上がった救世主の物語。というのは、なかなか他に類を見ない発想だと思います。

法も秩序も無く、力さえ強ければ何をしても許される世界で、人はどれだけ貪欲で残虐になれるか。この作品のシンやラオウ、サウザーなどの悪役キャラの描写を見ているとそれが痛いくらい生々しく伝わってきます。
そして、そんな世界において誰よりも強大なチカラを持ち得ながら、けっしてチカラに溺れず、理不尽な暴力に怒り、弱者にはあくまでも慈しみをもって接する
ケンシロウに本物の偉大さを感じます。
また、この作品の良い所は、ラオウ、サウザー、カイオウといった悪役キャラの
幼年期の人情エピソードがあるところです。
現在では民衆を武力で牛耳るほどの強大なチカラを得た恐ろしい存在の彼らでも、
幼少時には人の温かさに触れ、人を敬うことがあった過去が語られるエピソードを
見ていると、どんな人間にもかならず温かさや愛の心があり、根っからの悪人なんて
何処にも居ないんだな。と感じさせられ人の深さを感じさせます。