ほとり～たださいわいを希う。～

現在から近いような未来。ある病院に入院している一人の少年＜スズ＞。彼は＜小倉　涼（りょう）＞の＜人格素子＞を移植された人格プラント用のロボットである。 人格素子とは人間の記憶をデータとして取り出したものであり、人格プラント用のロボットはその人格素子を注入されることによって記憶の持ち主のように振舞う。 スズは亡くなった涼の身代わりとして涼の両親の願いで生み出され、現在は少しずつ記憶を定着させている最中なのだ。 スズはある日、旧病棟に入院している＜清水ほとり＞という少女と出会う。彼女はスズが人格プラント用ロボットだと知ると「私と反対」だと言った。ほとりは記憶を失い、やがては死にいたる病気を抱えていたのだ。『なかったはずの記憶が増えていく』スズと『あったはずの記憶が消えていく』ほとり。対照的な二人、そしてこの二人のこれからとは…。