後味は良くない作品だった。
定番のガンダムストーリーとは異色で、皆殺しが主人公にまで及んでしまいATG映画じゃあるまいし的な鬱さはガンダムアニメでも新境地を開いたものとも評価できる。
考えて見れば設定から異質。
ガンダム世界では福井晴敏氏がブライトノアに語らせたように、主人公がガンダムに乗るのがその時は偶然でも、必然だった。それは状況だけではなく、ガンダム開発者の子息や高級軍事技術将校の子と血や才能という意味でも。
この作品ではどうか?
戦争・宇宙開発棄児として人為的な施術で能力を高めた中での最高の適応者だったに過ぎない。
同じような境遇だったジュドー・アーシタは正規軍に拾われたが、裏社会に通じた民間経済組織の末端に位置づけられただけだった。
そういう意味で中盤から登場したジュリエッタ・ジュリスの位置づけが注目された。
歴史は勝者が紡ぐもの。
この世界では英明なラスタルエリオンがマクギリスの乱を鎮圧、硬直し衰退を始めたギャラルホルン体勢を建て直し、繁栄を築くのが正史。悪魔を討ち取ったジュリエッタの英雄譚で、彼女を育み、支えたのは鉄華団からは蛇蝎のように見えた強くて聡明なおじ様たち。
劇中でも語られたように、鉄華団もマクギリスもスケープゴードとしてその礎にさせられた。
鉄華団の話は、この物語世界の外伝だとすれば、この節回しは首肯できる。
ただ、マクギリスも鉄華団の子供たちだけでなく、ジュリエッタの過去語りは、育った過程は違っただけで出自は違わない親を選べない棄児で、ラスタルの改革が進んだとしても残された貴族社会の為の道具にされたことは憂鬱さを深める。
利用され、収奪され続けた鉄華団の子供たちが、強化人間の悲劇を見せられ続けたガンダム世界で、大人や社会の都合ではなく家族と信じた者の為に命を役立てられたのはせめてもの救いだった。
それでもヒーローが快刀乱麻で明るい未来を築く王道ではない、ガンダム世界ならではの異なる角度から映し出される物語を紡ぎ切った世界観、アニメ世界では時に暴走までも美化されていた少年兵の闇にも言及している点も含め、問題作として高い評価を受けるだろう。