ライター 箭本 進一さんの評価レビュー

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見返す度に魅力を再認識する、愛溢れるアニメ化

観賞手段:テレビ、CS/BS/ケーブル、ビデオ/DVD
ネタバレ
大河シリーズの第3部がついにアニメ化。これまでも単独でOVA化やカセットブック化され、シリーズで初めてゲーム化もされた人気の高い部だけに大きな注目を集めたが、原作への深いリスペクトが見えるアニメ化となった。
超能力を守護霊的に表現した「スタンド」と、日本人の主人公が海外へと旅するロードムービー的な構成が上手く組み合わさっているのが特徴の一つ。個性的な特殊能力を持つ奇怪な敵が、見知らぬ土地で密かに襲いかかってくる様は正に「奇妙な冒険」。その感情移入しやすさから「ジョジョ」未経験者が初めて見るにも持ってこいの部といえるだろう。
原作の再現と改変のバランスが絶妙であるのも「スターダストクルセイダース」の特徴だ。例えば審判のカメオ戦。ポルナレフが妹・シェリーの偽物に襲われて絶体絶命の危機に陥るという話だ。アニメ版ではポルナレフがシェリーを慈しんでいた過去のシーンが追加されたのに加え、結末も「黒幕であるカメオが偽シェリーを投げつけて破壊する」から「ポルナレフは偽シェリーがまがい物であることを受け入れ、自らトドメを刺す」ものへと変更されている。陽気なポルナレフが偽物とはいえ妹を刺すシーンは衝撃的だが、彼の心の流れを改めて見ていくと自然な流れである。かつてポルナレフはシェリーの敵討ちに執着するあまり、冷静な判断力を失って仲間であるアヴドゥルを死なせている。これを反省したポルナレフは精神的に成長を遂げるのだが、今回の変更により、成長がより印象的に描写されている。キャラクターを深彫りしたからこそできる大きな変更といえるだろう。また、原作で唐突に消えた「家出少女」にも原作者考案の「アン」という名前が与えられ、別れのシーンが描かれているなど、原作ファンだからこそ納得できる変更点も少なくない。このように大きな変更がありつつ、忠実にすべき所は徹底的に忠実。本放送時はアニメ版を観る→原作と比較しつつ録画を観る→改めて録画を単独で観ると3度視聴をしていたのだが、変更も再現も唸らされることしきりだった。
原作の連載から25年を経たアニメ化だが、「スタンド」のアイデアや濃いキャラクターたち、スピーディな展開は色あせることがない。見返す度に魅力を再認識する、そんなアニメ版といえるだろう。
プロレビュアー
ライター 箭本 進一
ライター 箭本 進一
ストーリー
5.0
作画
5.0
キャラクター
5.0
音楽
5.0
オリジナリティ
5.0
演出
5.0
声優
5.0
5.0
満足度 5.0
いいね(0) 2023-08-31 17:47:12

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