かっこいいのはこれだけではない。実は「はじまりのサイン」は、斉藤さんが今年4月に開催した「朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『はじまりのサイン』」のために制作した楽曲……なのだが、ライブ本番ではこの新曲を制作していたことが、サプライズで明かされたのだ。つまり、新曲の存在をライブタイトルで先出し、後から“コタエアワセ”のようにきれいな伏線回収をしたのである。
しかもその後には、8月より最大最長のライブハウスツアー「朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『キミとはだしの青春』」を予定していることも発表。本職のバンドが選ぶような、ステージとフロアの距離感が限りなく近い300~500名収容規模のハコ選びをしている点で、ライブを見る前からさすがに圧巻である。
ここまで2作連続となった表題曲のロック路線は最新作でも健在。TVアニメ「ブラック★★ロックシューター DAWN FALL」エンディングテーマとなっている「Before the Nightmare」を含めて、高槻かなこさんが全収録曲で作詞するスタイルも引き続き踏襲している。
アニソン/声優アーティスト楽曲の線引きこそ曖昧ではあるものの、高槻さんのアニソンシンガー的な自意識がひしひしと迫ってくるのが、前述した「Before the Nightmare」。パラレルワールド的な世界線を描くTVアニメ本編に寄せて、高槻さん自身も実際に私生活で悪夢を見たのちに、楽曲の作詞に取りかかったとのこと。
そして、高槻さんの作品で欠かせないのがカップリング曲。これまで「I wanna be a STAR」「soda」といった数多くの名曲を生み出してきた収録枠だが、今作ではフュージョン的なタッチの「嘘つきダーティ」と、ピアノだけのイントロから始まるバラード「Love myself, All myself」の全2曲を用意。「嘘つきダーティ」は、ボカロP・市瀬るぽ氏を迎え、人から言われた何気ない嘘を題材に、自身のなかの怒りのエネルギーを歌詞に昇華したとのことだ。
対して、高槻さんが自身のベールをめくるように、ありのままの人柄を露わにしたような歌声を聴かせる「Love myself, All myself」。こちらは彼女の目標とする姿を歌っているとのことで、誰でもない自分自身のためにもっとていねいに生きていきたいというメッセージが、赤裸々かつ力強く刻まれている。なかでも〈しがみついてぐしゃぐしゃになってた/未来図は紙で持ってなくたって/その時流れる 時が導く 流れに乗ろう/時に形は必要ない〉は、形あるもの/ないものの対比をうまく捉えた、今回のシングルでも随一のパンチラインでは。