Story ―アニメ映画『サカサマのパテマ』のあらすじ

アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン01
アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン02
アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン03
アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン04
アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン05

夜明け直前の‘空’を見上げる少年、エイジ。
彼の住むアイガでは、「かつて、多くの罪びとが空に落ちた」と‘空’を忌み嫌う世界であった。
そこに、突然現れた‘サカサマの少女’ 。彼女は、必死にフェンスにしがみつき、今にも‘空’に落ちそうである。
彼女の名前はパテマ。地下世界から降ってきた。
エイジが彼女を助けようと、パテマの手を握った時、体がふっと軽くなり二人は空に浮かびあがった。 恐怖に慄くパテマと、想像を超える体験に驚愕するエイジ。 二人は未だ知るまでもないが、この奇妙な出会いは、封じられた<真逆の世界>の謎を解く禁断の事件であった。
その頃、アイガの君主イザムラの元には、「サカサマ人」があらわれたとの報告が届く。 イザムラは治安警察のジャクを呼び、「サカサマ人」を捕獲するよう命じるのだった…。

吉浦康裕監督インタビュー

人間とアンドロイドの関係性を斬新な手法で描き、ネット配信から劇場公開までに至った前作「イヴの時間」の大反響で、次世代アニメーション監督として一躍脚光を浴びた新鋭・吉浦康裕監督。 そんな吉浦監督待望の初長編アニメーションが、文字通り“天と地をひっくり返す”新感覚映画「サカサマのパテマ」だ。 早くも次回作を製作中の吉浦監督に、企画の成り立ちから製作裏話、アニメ監督となるまでの道のりまでを語っていただきました!

もっとも大切にしているのは企画コンセプト。天地逆転の世界観は昔からあったイメージで、まさに自分が落ちていきそうな空でした。

――――「手を離したら、彼女は空に落ちていく」というコピーもとてもキャッチーですが、天地が逆転した世界でヒロインが青い空に引き込まれていくかのようなビジュアルが鮮烈な印象を残します。この斬新なアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

僕は北海道生まれでして、幼少期から6歳くらいまで札幌で暮らしていたんです。札幌って電線が少なくて、空がとても広いんです。よく家の近くの公園に連れて行かれては、緑の芝生に寝転がって空を見上げていました。「落ちてきそうな空」って比喩表現はあるけれども、僕は逆に自身が空に落ちてゆくような感覚がしました。すると自分が、地面と言う名の天井に張り付いているだけの不安定なものに感じたんです。空を見上げる度にそういう感覚をもっていたので、「サカサマのパテマ」の世界観は昔からあったイメージなんです。

アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン06

――――ロジックというよりは、エモーショナルなものが企画の根幹にあるんですね。

そうですね。それとゲーム世代だったので、「スーパーマリオブラザーズ」や「ロックマン」、マニアックなところだと「重力装甲メタルストーム」とかが大好きで。特にゲームの世界では、壁や天井を歩くというギミックは昔からあったんです。前作の「イヴの時間」が終わり、次は何を作ろうかなと考えていた時、「ある日全人類が突然サカサマ化したらどうなるだろう?」と思いついたんです。突然重力が斥力になって全人類が空に落ちてしまい、たまたま室内にいた人間だけが生き残る。そこから残された人類がどうやって生き延びていくかみたいな、昔のSFみたいな物語を思いついたんです。もしハリウッドでやるとすればビックバジェットのメジャー大作になってしまうので難しいだろうけど、このサカサマのアイデアでうまく何か作れないかなと。そこでちょっと発想を変えてみて、ヒロインだけがサカサマってのはどうだろうと考えたんです。すると、ただひとりだけ空に落ちていきそうなヒロインと、それを抱きとめている主人公という構図ができた。ストーリー的にも、そっちの方がドラマを作りやすいんじゃないかなと。その後は淀みなく企画が進み、企画書に載せた最初のイメージボードがまさにこの構図でした。

(※ビックバジェット:1億ドルを超えるような製作費のこと)

――――まず根本となるアイデアを生み、そこから先を理論で突き詰めていくというスタイルなのですね。

はい。組み立てていく上では理系の脳を働かせます。ただ、重力の違う2種族”もしくは”真逆の2つの世界”といったこだわりではなく、ただ1人“サカサマの女の子”がいるというモチーフから始まったんです。そこから何ができるか。ゲームの「ICO」じゃないけれど、サカサマの女の子を守ってあげる男の子というアイデアからのスタートですね。じゃあ彼女はふだんどうやって生活しているんだろうと考えた時、きっと地上では暮らせないだろうと。そうするとたぶん地下に潜るのかなと。じゃあ地下世界から物語を作ってみようと。笑えるところ、泣けるところ、ロマンチックなところ、怖いところ、いろいろな要素があるけれど、すべてサカサマというトリックにからめた描写にしようと考えました。

――――なるほど。“サカサマ”という設定が制作過程の主軸となっていたのですね。

制作者にはいろいろな方がいると思いますが、僕は絵から発想するタイプではないんです。キャラクターデザインも世界観も、当初の企画書とは多少変わったりもしますが、サカサマという構図だけは変わらない。つまり、もっとも大切にしているのは企画コンセプトですね。映画でも漫画でも小説でも、僕が惹かれるタイプの映画ってひと言で説明できる作品なんです。“殺人ロボットが永遠と追いかけてくる映画”だとか、“殺人サメをやっつける映画”とか(笑)。そういった作品の核を見つけることが大事で、この映画の場合は“サカサマ人間”です。

――――ちなみに「イヴの時間」のひと言コンセプトとは?

“人間そっくりのアンドロイドがいる世界で、人間とアンドロイドの区別がつかなくなる場所の話”ですね。…ちょっと長いですが(笑)

違うものを作っているつもりでも同じようなものが込められてしまう。これは作り手の性(さが)なのかもしれないと思います。

アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン07

――――「イヴの時間」と「サカサマのパテマ」に共通するものとして、“立場の違う他者と何かを共有する物語”がテーマなのかなという印象も受けました。

確かに似たようなモチーフですよね。でも、実は同じテーマを意識しているわけではないんですよ。不思議なもので、違うものを作っているつもりでも同じようなものが込められてしまう。これは作り手の性なのかもしれないと思います。毎回全く相反する2種族、価値観の違う2人が歩み寄っていく物語を作ろうと意識してるわけじゃないんですが…。ついでに言うと、“うじうじした男の子が元気な女の子に引っ張られる”という構図も意識してるわけじゃないんです(笑)。僕の人となりが無意識に出ちゃうんですかね。これはきっと作り手みんなに共通することじゃないかと逃げておきます。

――――「ペイル・コクーン」(2005)も、地下世界というクローズな場所から大きな世界に広がっていく物語ですよね。

それに関しては、僕は古典的なSFが好きなので、“今ある世界が外側にどんどん広がってゆく”という物語に興味があるんですよね。今回の「サカサマのパテマ」にもそういうところはかなりあります。

――――吉浦監督が、これまでに強く影響を受けた作品とは?

昔のルックを再現したSFが好きですね。漫画でも、描き込んでる未来像よりは「火の鳥 未来編」などのシンプルなものが好きです。人々がドームに暮らしていて、みんなベルトコンベアで運ばれているみたいな。映画だと「ガタカ」「リベリオン」「未来世紀ブラジル」のような、レトロフューチャーな世界観が好きです。みんな同じ服を着て、洗脳教育を受けているようなビジュアルとか。古典的なSF要素って、実はアニメでは珍しいんじゃないかと思っています。

――――“サカサマのヒロイン”というアニメーションでしか実現できない、それを逆手に取ったような新しい表現方法に挑まれているのだなという気がしました。

前回もそうなんですが、厳密にいえばアニメでしかできない表現だなと思っています。「イヴの時間」だとわかりやすいんですが、実写で女優さんがアンドロイドを演じると、“人間の女優が演じている人間そっくりのロボット”という認識を覆すのは困難なんです。すると観客は、生身の少年がアンドロイドにドキドキするという気持ちに感情移入しづらくなってしまう。それがアニメだと、ロボットが本物のロボットでいられるんです。だからこそ成立するドラマでした。それと同じで、サカサマ人間が実写だとすると、どうせ合成なんだろうなという印象を与えてしまい、“サカサマでいることの恐怖”というものに感情移入しづらくなってしまう。アニメって全部嘘だからこそ、サカサマ人間が本物に見えるんですよね。そこはアニメじゃないとできないのではと、確信犯的に狙っていったところです。

――――天地がぐるりと180度ひっくり返るカメラワークも印象的です。

企画を立てた時点で、ただカメラをひっくり返すだけで同じ場所でも違うものになるという確信はあったんです。イマジナリーラインがもう1本増えるような、映像の見せ方がもうひとつ増えたような感じで。ただ、映像を見てもらってやっとピンときてもらえるので、企画書の段階ではそのイメージを他者に伝えるのが難しかったですね。脚本の段階で世界の模式図は描いたけれど、それだと概念でしか説明できず、エモーショナルな怖さが伝わらないんです。重力が反転するというアイデアはゲームなどにはあったので、今回は“サカサマを宿命づけられる”というコンセプトが面白いかなとそこを強調しました。

(※イマジナリーライン:映画やビデオを撮影する場合の用語で、2人の登場人物の間を結ぶ仮想の線のこと)

パテマの声は、ほぼ主演をやったことのない藤井ゆきよさんでやってみようという冒険心。これはハマる役だと。

吉浦監督01

――――制作の流れはどんな感じなのでしょう? 現場はどのように動いていたのですか?

企画が立ち上がったら、まずはざっくりとしたストーリーを作ります。脚本を作る作業と同時に、もやっとキャラクターもできてきます。服装や容姿という意味ではなく、きっとこんなキャラクターだろうという大まかな肉付けですね。世界観も同様です。全てが同時進行で流れていく感じですね。

――――原作・脚本・監督というポジションはほとんどの制作行程に関与できることで、理想の世界観のブレを少なくできるという強みもありますよね。

そうですね。インディーズとして自主制作でやってきたので、ざっくりとは全行程にタッチできます。今回も絵コンテからCGレイアウト、撮影・編集は自分でやっていますが、画力については職人的に絵を描けるタイプじゃなくギリギリ味のある漫画家になれるくらいのレベル(笑)。だからある程度まで描くけれど、最終的な絵は自分で決め込まないで、世界観は美術監督に、キャラクターは作画監督・キャラクターデザインに任せます。もうひとつのメリットは、制作のフットワークを軽くできることですね。今回のスタッフィングも、劇場作品としてはミニマムな規模でやっています。製作中は、隣に作画監督、後ろに美術監督、その隣にはCG監督といった具合に、常に各セクションの監督が一堂に会していました。普通は規模が大きくなると、チーム間の情報伝達は制作進行を通した伝言ゲームみたいになってしまう傾向があるそうです。今回はそれを避けたかったので、ムダを省いて直接ぱっと話せるような、作品の方向性を定めるにはとても仕事のしやすい環境でしたね。

――――製作期間はどれくらいでしたか?

準備期間は1年くらい。実製作期間は1年半くらいですね。劇場アニメとしては健康的な期間かと思います。少ないスタッフだったので素材の回りが早かったのもあります。僕のやり方は、3DCGで各カットのレイアウトを簡易的に自分で組んじゃうんです。普通は各カットごとにアニメーターさんがコンテをもとに構図を書くのですが、CGで全カットの構図を決め込んで、その構図にアニメーターさんにキャラクターを、美術さんに背景を描いてもらうというスタイル。アニメーターさんと美術さんに同時に渡せるので、そこは制作のスピードを大きく左右しますね。

――――そのやり方によって、演出の調整の手間が省けたのでしょうか?

そうですね。もちろん、構図が決まっていると伸び伸びと描けないというアニメーターさんもいると思います。幸いにも今回の作画監督さんはこのやり方になじんでくれ、制作もスムーズに進みました。今回はサカサマ人間というコンセプト上、三次元的な構図が多いので、手描きのレイアウトでは難しかっただろうなとも思います。主人公が地面に立っていて、それをあおると天井に俯瞰のパテマがいる。そういう構図は頭で描こうと思ってもなかなか描けないんです。このスタイルは、今作のコンセプトには必須だったのかなと思います。

――――声優のキャスティングについてもお伺いします。キャスティング上、吉浦監督がもっともこだわったのはどんなところでしょうか?

アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン08

自分も演劇をやっていたので、声のキャスティングはとても重要だと思っています。語弊があるかもしれないけれど、技量よりもイメージをまず優先します。イメージさえ合えば何とかなるもの。もちろんバランスも重要で、他のキャストと声の区別がつかない人は配置しません。 この映画では主人公のエイジとパテマが肝。14歳という設定は純粋な少年少女ではないけれど、すぐに“惚れた腫れた”にいく高校生とも違う。なので、うまくて色つやのある声ではなく、スレていない初々しい声のイメージがありました。 パテマの声は、ほぼ主演をやったことのない藤井ゆきよさんでやってみようという冒険心が出てきました。スレていない素っぽい感じがイメージに合ったんです。収録前に2、3回本読みをやり、キャラクターもかっちり丁寧に作っていき、その中でこれはいけると確信しました。 最初は藤井さんの声質にグッときて、やっていくうちに演技もどんどんうまくなりましたね。エイジ役の岡本信彦さんは、オーディションではちょっとカッコいい声だったけど、中学生らしいヒーロー然としていない声を出してもらったらうまくハマった。あとはバランスよく、周りを安定感のある方々で固めていきましたね。

今回は意図的にドアの外に出る物語にしたかった。個人的には、活劇の皮を被った恋愛映画なのかなと思っています。

――――前作「イヴの時間」から、決定的に変えた演出などはありましたか?

「イヴの時間」は室内劇だったので、CGでセットを組むという意味が大いにあったんです。今回は外の世界もCGで組んでいるのですが、それは空の広がりや、逆転した時の空間性を表現するのに必要だったので、それは新しい要素と言えるかも。作風としても今までは椅子に座っての会話劇が多かったけれど、今回は冒険活劇。そのへんの躍動感は意識しましたね。空を飛ぶ時の気持ちよさというよりは、空を飛ぶ時の怖さ、高い所の怖さを出したかったんです。

アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン09

――――「イヴの時間」のファンの方はどんなギャップを感じるのでしょうか? 作り手として、いい意味で観客を裏切りたいという気持ちはありますか?

これまでの自分の作品で、世間に広く知られているのは「イヴの時間」の一本だけなんですよね。だからその一本で作風を固定してしまわず、2本目で全く違うものが出てきてもいいんじゃないかと思います。決意表明としては、意図的にドアの外に出る物語にしたかった。そこは強く意識したところです。

――――“ドアの外に出る物語”という真逆のベクトルにしようと思ったきっかけとは?

「ペイル・コクーン」や「イヴの時間」の前身となるアニメ「水のコトバ」、さらにその前の「キクマナ」もそうですが、そういえば全部室内劇だなと(笑)。「いい加減飽きたな」というのが割と正直なきっかけですね。……実はドアの外に飛び出す企画と言いつつ、実際に作ってみると意外と室内会話のパートもそれなりにあって、やっぱり自分はそっちの人間なのかなとも思いましたけど。

――――室内会話劇の趣向は、吉浦監督が演劇出身というのもあるのかもしれませんね。

もともと芝居を作りたかったんです。三谷幸喜さんの「王様のレストラン」とかが大好きで、ああいうものをアニメでやれたらとずっと思っていました。僕はエンターテインメント全般に関して貪欲で、日本人に生まれて一番よかったなと思うのは、漫画もアニメも小説も映画も演劇もみんな面白いこと。悪く言えば広く浅くだけど、それぞれの分野の代表的に面白いものを片っ端から見るのが好きです。

――――いい意味でジャンルに縛られないのですね。アニメ―ションの世界には、いつ頃から興味をもたれたのですか?

いつの間にか……。小学生の頃は小説ばかり読んでいたので小説家になりたいなって思っていたし、高校の時は演劇部に入っていたので演劇に携わりたいと思っていました。そしてゲームにCGが使われ始めた時代、パソコンの「ミスト」というゲームにハマり、「CGで何かを作る作家になろう!」と思って大学に入ったんです。ただCGでもキャラクターアニメにはあまり興味がいかなくて、CGで世界観を作り込むことに没頭した感じです。するとそのうち、CGで作った背景に手描きのキャラがのるというデジタルアニメが増えてきて、それに影響されて「STUDIO4℃」作品の真似事で制作したPV風アニメを学内の上映会で発表したところ、先輩たちが褒めてくれた。それがアニメ制作のきっかけで、次第にストーリーにも興味がゆき出したんです。 大学を卒業する頃には、漠然とですがアニメを作って仕事していきたいなと思うようになって。それで個人制作で「ペイル・コクーン」を作ったら、今度はチーム体制でアニメを作ってみたくなった。作りたいものが目の前にあって、それを作り続けていたらいつの間にかアニメ監督になっていたという感じですかね。劇場にかかる長編アニメを作るというのは夢だったので、最終的には映画好きというところに帰ってきました。

――――作品づくりにおいては、作家性というよりエンターテインメント性を重視しているのでしょうか?

アニメ映画『サカサマのパテマ』シーン10

実は学生時代の自主制作アニメはとてもマニアックな作風でした。今は、作家性みたいなものはちょっと我慢しているくらいがちょうどいい気がします。そういうのは放っておいても勝手ににじみ出てしまうと思うので(笑)。

――――アンドロイドって基本的にエッチなので(笑)、「イヴの時間」には大人向けエロスのようなものを少々感じましたが、そういう意味でも今回は客層のターゲットを大きく広げたのかなと思いました。

確かにアンドロイドは内部を露出したりするので、壊れているシーンなどはちょっとエロいんですよね。肉体感覚が生々しいというか。またエロさという観点以外でも、非常にロジカルな会話劇という点で「イヴの時間」はハイティーン向けでした。 今回は少し裾野が広がって、年齢や国も関係なく、アイデアや絵的なもので外国の方が見てもぱっとわかるようなものにしたいという思いはありました。エイジとパテマが抱き合うというのはひとつのポイントで、抱き合っても健全な関係性、その気持ちよさというのは出したかったですね。エロさはあまり意識しませんでした(笑)。

――――キャラクターのセリフと絵が見事にリンクして、エイジとパテマにすっと感情移入できる瞬間がとても気持ちよかったです。それはとても“映画的体験”だったように思います。

それを狙って作っているので、その感想は作り手としてすごくうれしいです。アニメや映画ってもちろん嘘なのですが、例えば劇中の人物が星空を見上げて「ああ、きれい」と言った時に、観客も同じく「本当にきれいだな」と感じられるような星空を描ければいいなと思っています。じようにサカサマの視点も、うまくパテマの感情に共感してもらえるように考えて作ったつもりです。 実は「サカサマのパテマ」は、一種の恋愛モノとして描こうと思っていました。つまり、同じ感覚を共有できない男女が、次第に相手のことを理解してゆく過程をサカサマの視点を利用してダイナミックに観客に伝える映画です。今回の作品は、個人的には活劇の皮を被った恋愛映画なのかなと思っています。

吉浦監督02

――――楽しいお話をどうもありがとうございました。最後に、「サカサマのパテマ」を心待ちにしているアキバ総研のファンの方々にメッセージをお願いします!

今回目指したのは、サカサマの仕掛け以外は王道ファンタジーです。ライトに見ればストレートな冒険談ですが、サカサマゆえのトリックや面白いギミックがそこら中に散りばめられているんです。かなりマニアックな伏線もあり、意外な事実が明らかになったり、ストーリーが根本から覆るような仕掛けなども……。詳しくは語れませんが、ぜひ何度も見て楽しんでください!

取材・文・写真/山崎佐保子

アニメーション監督吉浦康裕

1980年、北海道生まれの福岡育ち。
大学時代に自主制作アニメーション制作し、作品を国内外で発表。卒業後、個人制作アニメ『ペイル・コクーン』を発表。 その後、Webアニメ『イヴの時間』全6話を制作し、『劇場版 イヴの時間』を全国公開。最新作は劇場アニメ『サカサマのパテマ』。
次回作は、アニメミライ2014の短編アニメ「アルモニ」。

サカサマのパテマ

11月9日(土) 全国劇場公開

原作・脚本・監督 : 吉浦康裕 音楽:大島ミチル
声優:藤井ゆきよ(アイドルマスター:所恵美など)、岡本信彦(とあるシリーズ:一方通行など) 大畑伸太郎(機動戦士ガンダムAGE:ウットビット・ガンへイルなど)、ふくまつ進紗(宇宙戦艦ヤマト2199:ヴァンス・バーレンなど)、加藤将之(宇宙兄弟:真壁ケンジなど)、安元洋貴(弱虫ペダル:金城真護など)、内田真礼(ガッチャマンクラウズ:一ノ瀬はじめなど)、土師孝也(ハリーポッターシリーズ:セブルス・スネイプなど)

配給:アスミック・エースhttp://www.patema.jp
©Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013