夏季限定!「DTMはじめました」 歌うハードウェア・ヤマハ「PLG100-SG」編

2009年07月31日 21:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

20090731210000s.jpg文@「ミスターT」+アキバ総研編集部



初めましてっ!

元楽器屋の店員で、今はなぜか某PCパーツ屋で働いているTと申します。今回、依頼を受けてDTMコラムを書かせていただくことになりました。わかりにくいことや、「ここ間違ってない?」と思うところもあるかもしれませんが、あらかじめご了承いただければ幸いです。

ちなみに、好評であれば第二回、第三回と続けていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


さて、今回ご紹介するのは「VOCALOIDシリーズ」です。VOCALOIDシリーズといえば、初音ミクに代表される、パソコン上で歌を歌わせるDTM用のソフトウェア(バーチャルインストゥルメンタル)。従来の音声合成よりなめらかな歌声や、パッケージにプリントされたかわいいキャラクター性で、DTMユーザーだけでなく、幅広い層に親しまれています。

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国内では、クリプトン・フューチャー・メディアやインターネット社が販売を行ってるVOCALOIDシリーズですが、採用されている歌声合成エンジンは、ヤマハが開発したVOCALOIDエンジン※1シリーズだということはご存知でしょうか? そして、ヤマハは初代VOCALOIDともいえる、歌えるハードウェア「PLG100-SG」を販売していたのです。今回はその「PLG100-SG」にスポットを当ててお話していきたいと思います。

「PLG100-SG」(1997年発売)は、フォルマントシンギング※2音源を搭載した、ヤマハのDTM用音源やシンセサイザー用プラグインボードです。ヤマハのDTM用音源やシンセサイザーに装着することで、歌を歌わせることができたのです。

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ヤマハのフォルマントシンギングプラグインボード(長い…)「PLG100-SG」。コンシューマ向けとして登場した、初のボーカル用音源。音源内部で14個のフォルマントが作成可能で、そのファルマントを組み合わせて発音を行なう仕組み。そのため、1音(音符)ごとに1文字の言葉(例:♪(ド)=さ、♪(レ)=く、♪(ミ)=ら)を設定し、曲データを作成。音源へ送ることで歌を歌わせることができる。

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ヤマハのDTM用音源「MU128」(1998年発売)。MU100の後継機種として登場。背面から見える青いケーブルを、プラグインボードに装着して使用する。なお、MU128とPLG100-SGを組み合わせると、システムに掛かるコストは11万円ほど。個人向けシステムとしては、かなり高価だった

今では珍しくないパソコン上での歌声合成も、PLG100-SGが発売された当時は非常に画期的で、DTMショップを中心に注目を集めていました。当時、楽器屋店員をやっていた私も、その面白さに心を奪われた1人であり、購入を決意。実際に使ってみることにしました。

実際に使ってみて面白かったのは、豊富に用意されたユニークなSGボーカルマップ(声色)。特に、常にゲロゲロ言う「カエル」やモーモー言う「うし」、何をしゃべっているのかよくわからないロボットボイスの「宇宙人」など、パソコンやシンセサイザー上で歌を歌う様子は、とても衝撃的でした。また、製品に付属のFDには多数のデモ曲が収録されており、なかでも男性ボーカルの「北酒場」は完成度が高く、多くのユーザーがこの曲の出来栄えに感心したことだと思います。

しかし、本格的に使い込もうとすると、かなり敷居が高かったのも事実です。先に挙げたようにPLG100-SGの利用環境がヤマハ製品(音源・シンセサイザー/シーケンサーのXGWorksなど)に限られていたことや、チューニングの難しさなど、非常に扱いにくいシステムだったのです。また、発音もよくなく、あくまでも「遊び用途向け」といった側面の強い製品でした。

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製品に付属しているマニュアルとFD

SGボーカルマップの一例。マニュアルには標準的な男性や女性ボーカルのほか、生物、エイリアン、自然などのボーカルマップが掲載されている

いっぽう、パソコン上で動作するソフトウェアシンセサイザーのVOCALOIDシリーズは、ソフト単体で発声できるスタンドアロンモードを備えるほか、CUBASEやPROTOOLS、SONARなどの作曲ソフトの拡張機能(プラグイン)としても連携できるため、PLG100-SGと比べて使い勝手が大きく向上しています。また、音声の質も上がっているので、プロユースとして使っている人も多いのではないでしょうか。

PLG100-SGが発売されてから初音ミクが登場するまでの10年。歌声合成はより身近なものとなりました。歌声合成システムも、ハードウェアベース(PLG100-SG)からソフトウェアベース(VOCALOIDエンジン)となり、パソコンにソフトをインストールするだけで利用できるようなりました。さらに、操作インターフェイスの向上も相まって、誰でも比較的簡単に歌を歌わせることができるようになりました。

PLG100-SGがVOCALOIDエンジンへと進化したように、今から10年後に登場している(であろう)歌声合成システムが、さらなる進化を遂げていることを期待してやみません。

それでは、今回はこの辺の終了です。簡単ではありますが、PLG100-SGを中心にVOCALOIDシリーズについて紹介しました。もし次回があれば、SingerSongWriterシリーズとVOCALOIDシリーズの使い方について説明していきたいと思います。



※1VOCALOIDエンジン・・・音素(言葉の最小単位。音節を構成する要素でもある)同士をなめらかに接続・加工する技術。基本的なシステム構成は、「スコアエディタ(歌詞+音符)」「歌声ライブラリ(ボーカルの音声情報)」「合成エンジン」の3つで、スコアエディタと歌声ライブラリの情報をもとに合成エンジンで調整・組み合わせて、歌声を出力する。なお、「歌声ライブラリ」をクリプトン・フューチャー・メディアやインターネット社などの販売会社が担当(ボーカルを決め音声の録りだしを行なう)する。

※2フォルマント・・・人間の声を「言葉」として認識するために必要な周波数スペクトルの山(人間の声以外の楽器などにも、フォルマントは存在する)。PLG100-SGではそのフォルマントを音源として搭載し、組み合わせ、さまざまなボーカル情報を合成している。

筆者紹介(アキバ総研担当者より)

akiba20090729__plg009.jpg名前:ミスターT 年齢:不詳

とあるPCパーツショップに勤める男性店員。家では1児の父として活躍中。DTM暦は10年以上。お気に入りのDTMソフトウェアはPROTOOLSやCubaseなどで、Reasonにも明るい。ドラムやギター、ベースなども得意。バンド系の楽器であれば、ドンとこい。


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