当世腐女子気質 第三回「腐女子VS普男子」 GUEST HOUSE ARCA 分室
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「GUEST HOUSE ARCA 分室」不定期コラム第4回(文:白城裕 絵:ふじつぼ)
「当世腐女子気質 第三回~腐女子VS普男子~」 文:白城裕
「最近は普通の男の人がBLシステム作ること多いらしいよー……問題はそれが40代ヒゲ男ってことだけど」
(by Yさん 撃沈している白城への慰めのつもりの痛打)
アキバ総研編集部様との約束を見事に破って急遽内容を変更してみた。
理由は、近々日本最大のTRPGの祭典、JAPAN GAME CONVENTION 2008(以下、JGC)が来月に迫っているからだ。
JGCとは簡単に言えば(最大)二泊三日でTRPGを遊び倒そうという、盛大なオタクゲーマーの為のイベントである。
横浜のお洒落なシティホテルに宿泊するが、ゲーマーのゲーマーによるゲーマーの為の祭典の為、会場はある意味夏の聖地並のカオス的盛り上がりを見せるらしい。
宿泊型である点を生かし、朝昼夜構わずゲームをし続け、初対面の人といきなり卓を囲む(麻雀ではなく、一緒にゲームをすることをこう呼ぶ)のだから、終了時にはバイオハザード並にゾンビが徘徊することになると言う。
(以上全て伝聞、人ごみは苦手なので参加したことはない)
宿泊せずとも参加できるが、今年はサザンの解散ライブと日程が被っている為、日帰りの方は注意が必要との注意を秋葉原で受けた。
さて、何故秋葉原でこのような注意を受けたのか?
それは秋葉原のYellow Submarinで1~2ヶ月に1回催される、Gamers Field コンベンション(以下、GFコン)に参加した際、JGCの紹介があったからである。
GFコンとは、有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ(以下、F.E.A.R)の公式ファンクラブが主催するコンベンション――早い話、F.E.A.Rの出しているTRPGシステムを遊ぶ大会である。
TRPGの集まりには大きく分けて身内セッションと呼ばれるものとコンベンションと呼ばれるものがあり、前者はお互い見知った仲間で毎回遊ぶサークル形式、後者はその場に集まった初対面の人々(予約制の場合も多い)でいきなり遊ぶというTRPG虎の穴(書店ではない、念の為)的形式になる。
当然、後者の方が敷居が高くなるが、絶対数が少ないTRPG界ではコンベンション以外遊ぶ機会が無いと言うゲーマーも存在する。
さて、このGFコンに私は今年から参加を始めた。
F.E.A.Rに(主に)所属するプロのGM(ゲームマスター、ゲームの進行役)によるセッション(一回のゲームのこと)が楽しめるというのが最大の売りである。
その他、新商品の情報などもいち早くゲットできるし、何より会場が安全(見知らぬ人が集まるので、コンベンションには悲しいことにトラブルが起こる場合もある)なのがとても嬉しい。
女性の参加者はこの世界の例に漏れずとても少ないので、下手をすると私一人と言う場合もあるが(回にも拠るが、午後の回で会場に女性が一人しか居なかったらまず間違いなく白城である)、男女気にせず遊べると言うのも嬉しいところだ。
(やはり男女比が偏っていると少数派は色々と気を遣うものである、一応。なので男女を意識しないでいいコンベンションと言うのはとても貴重なのだ)
話は、こちらに初めて参加した時に遡る。
この大会の著作権は全てF.E.A.Rに帰属するので、詳しい内容は話せない。
が、言える範囲で充分叩きのめされたとだけ予め言っておく。
私はこう言った会に参加する時、自ら腐女子と名乗りはしない。
最近何かとブームのように取り上げられ、ファッションオタクのようにファッション腐女子とも言うべき、擬態をしない、寧ろ腐女子と擬態する腐女子が増えたが、気の置けない関係の人間以外には一応隠して日常生活を送っている。
普通に考えてみればわかっていただけると思うが、自己紹介で「男性二人がいちゃいちゃしているのをニラニラ想像するのが好きです」と言う勇気を持つ剛の者がどれだけ居ようか?
そこまで自分を捨てられる若さは最早無い。
と言うか、こっそりやっている背徳感が美味しいのだ。
なので、初めて参加した際にも当然何も言わないでおいた。
格好も至って普通だ。アキバだからとコスプレなどしていかない。
普通にチュニックとパンツスタイル、薄化粧、大きな鞄(ルールブックなど持って行くものが多いので鞄はどうしても大きくなる)……完璧だ、完璧などこにでも居る普通女性だ。
勿論会場でも普通女性の振りをしていた。
しかし、悲劇はセッション開始直後に起こった。
その時に参加したのは、ダブルクロス2nd(ゲームデザイナー:矢野俊策先生、通称ダブルクロス王子・緊急増刷王子など)と言うお気に入りのシステムだった。
初めての会場への参加と言うこともあって大分緊張して大人しくしていたので、ますます普通のそこら辺の女性に見えたはずである。
(まあ、この会場にいる時点でゲーマーは確定なのだが)
GMをやって下さったのはライターのI先生(男性)。渋い声と渋いロールプレイが売りのハードボイルドキャラクターを得意とするが、苦いからと言う理由でコーヒーをブラックで飲めないと言う方である。
さて、TRPGと言うゲームはロール(役割)をプレイ(演技)するゲームであり、FEAR製のものは多く、ロールに人間性も含まれるようなシステムになっていることが多い。
つまり、傍から見るといい歳をした大人が舞台の上でもないのにくさい台詞を吐いている光景が見られると言う状況が発生する。
(こう言った理由で見学はお勧めしません、参加しなければ楽しさはわかりません、念のために言っておきますが知的遊戯です)
このくさい台詞を渋く演技するのがI先生の持ち味だ。
当然その日も、ダーティーなイメージのあるバーで部下(男性)に秘密裏に裏仕事の指示をすると言うシーンを、非常に渋く演じて下さった。
が。
その直後。
I先生「……て、なんだか今のBLぼくね!?」
撃沈。
Iせんせいの こうげき
しらきは 46の だめーじを うけた
頭の中はこんな感じである。
他のメンバー(全員男性)は笑っている。
私も顔だけは笑っている。
しかし、内心はもう「HP一桁、おうちに返して下さい、と言うかどこからばれた!?」とバクバクしていた。
別段ばれたわけではなかったようだが、擬態している身にとって突然BLと言う単語を出すのは本気で心臓に悪いからやめてください(涙)
一応この日の大会は無事に済んだ。
別日。
新しくサークルに入った私は、初めてのメンバーと所謂身内セッション初回をしていた。
システムはやはりダブルクロス2nd。
シナリオタイトル「Hero Game」。(著作権が自分にあるので晒せます)
頭文字だけ取ると“HG”(ハードゲイ)になるなんて内緒だ。
参加メンバーはやはり私以外全員男性だった。
(女性ゲーマーはそこまで希少価値と言うわけではないのだが、様々な理由があって表に出てくる人は結構少ないのである)
初対面でもあるし、ここでも私は腐女子であることを隠していた。
と言うか、現在進行形で隠している。
シナリオとしては、主人公(男性)の親友(男性)が複雑な家庭環境に漬け込まれて悪の組織に利用されているのでどうにかそれを助けると言うような友情ものだが、やはりこのセッションでも事件は起きた。
シナリオ作成に当たり、CLAMPの往年の名作「東京バビロン」を参考にしたので、登場人物は「前世は世界を救う戦士だった。俺達は『特別な存在』なんだ」とか妄言を吐く、「特別になりたい高校生」をモチーフに持って来ていた。
誰しも「特別になりたい」と言う願望は少年少女期に一度は抱いたはずである。きっと共感してもらえるだろうと目論んだ、が……
「特別になりたい」と言うキーワードを繰り返しすぎたところが敗因だった。
主人公を演じるMさんは、クライマックスで「特別になりたいんだ!」と叫ぶ親友に、大変熱い演技でこう呼びかけてくれた。
Mさん「俺の特別じゃ駄目なのかよ!」
お察しの通り、次の瞬間。
参加男性陣「「「うわー、今の台詞、腐女子に聞かれたら絶対BLって言われる、萌えって言われるーーー!!」」」
かいじょうは ばくしょうのうずに つつまれた
しらきは 142の だめーじを うけた
しらきは 3かいくらい しんでしまった
聞いています!今まさに目の前で、あなたが演技をしたその相手が腐女子です!!
萌えません、寧ろ死んでいます!!
勿論、I先生もこのサークルメンバーも誰一人として腐兄(BLを愛する男性のこと)ではない(はずだ)。
ただ単に巷でこれだけ流行っているから話題にしてしまっただけだろう。
しかし、擬態している腐女子にとって、「腐」関係の話は横のテーブルで話しているのが聞こえるだけで耳がぴくりと動いて心臓が跳ね上がってしまう最大のタブーなのである。
これからこの大会やサークルに参加し続け、私の心臓がいつまで持つのか、とても不安の残るところである。
腐女子VS普男子、その戦いは、相手に攻撃している自覚がない分、一方的に腐女子の負けなのである。
どうか世間の普男子諸君、同席した女性から微かにでも「腐」の匂いを感じたら、本人が言い出さない限り一切触れないでやってほしい。
Yさん「今月の富士見ドラゴンブック(TRPG関係の)新刊、3冊ともBLっぽいって騒がれているらしいね?」
(ダメ押し、撃沈)
完
■文中補足&リンク
『当世書生気質』
坪内逍遙の小説。写実主義を主張した『小説真髄』に展開した理論に基づき、明治時代の書生風俗を描いた作品だが、結局雅文体から完全に抜け出すことはできなかった。
TRPG
Tabletalk Roll Playing Gameの略。非電源ゲームとも呼ばれ、複数人で会話やサイコロによってシナリオを展開していくゲーム。いくつものシステムが出版されている。
JAPAN GAME CONVENTION 2008
有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ
ダブルクロス 2nd
近未来を舞台とした、F.E.A.R社製TRPGシステムの一つ。デザイナーは矢野俊策氏。
※「ダブルクロス 2nd」は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。
GM
Game Masterの略。TRPGにおけるシナリオ作成・進行・ルール管理役。
擬態
腐女子とバレないように一般女性を装い社会に溶け込むための技術。大抵の腐女子は習得しているので、パッと見はわからない。
富士見ドラゴンブック
富士見書房から出版されている、TRPG関係の文庫シリーズ。
■サークル&筆者&絵師&登場人物紹介
サークル:「GUEST HOUSE ARCA」
もともとはTRPG(TabletalkRollPlayingGame)とPBW(PlayByWeb)を愛する腐女子meets腐女子で出来上がったサークル。
活動は主に腐な要素が取り入れられたTRPGセッション。
メンバーは世界各地に散らばっている。
名前の由来は、SIRがGMのPBW「BOX GARDEN」に登場した、怪しい主人が切り盛りするお宿の名前から。
サークル:(名称未定)
関東のとある地域で月1回程度のペースでTRPGを楽しむ同好会。プレイルームには何故かいつも大量のフィギュアが用意されている。
文:白城裕 Shiraki Yutaka
専門は国語国文学なはずだが活字が嫌いともっぱら漫画を愛読するエセ文学系腐女子。
好きなジャンルは国文学(not日本文学)とファンタジー。
「劇団オグオブ」非公認サポーター。次回ワークショップは8月9日、参加者募集中!
絵:ふじつぼ
脅威の情報収集能力と合理的な判断力を併せ持つIT系セレブ貴腐人。
好きなジャンルはSFと動物。趣味は動物園でBLアテレコ。
登場人物:I先生
有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチに所属する、コーヒーをブラックで飲めないハードボイルドなライター先生。
登場人物:Yさん
2児の母でもある才媛。「熊をも倒す」と言うのろけを得意技とする。
登場人物:Mさん
現在名称未定のサークルにて出会った男性ゲーマー。熱いセリフを吐いた後にBL発言は反則。
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【関連リンク】
□腐女子 - Wikipedia
□ボーイズラブ - Wikipedia
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