特別企画「水冷パソコンを導入してみました」レポート 価格.comシステム担当S

2008年05月17日 14:000

※本コンテンツはアキバ総研が制作した独自コンテンツです。また本コンテンツでは掲載するECサイト等から購入実績などに基づいて手数料をいただくことがあります。

特別企画「水冷パソコンを導入してみました」レポート 価格.comシステム担当S価格.com システム担当Sの「水冷パソコンを導入してみました」レポート



さて、今回は、ジサカー(特にヘヴィユーザー)にとって魔の季節である「夏」に向けての特別企画(?)をお送りいたします。人柱erレポーターは、価格.comのシステム担当であるS氏(システム部門の結構エラい人だったりしますw)。アキバ総研担当やら文系プログラマーやら、カカクコムはオタクの巣窟か!? と思われるかもしれませんが、アキバ発祥の会社ですのでその辺り(※とはいっても大部分は一般人ですよ)はお察しくださいませ。前置きはこの辺にして、それではどうぞ! ↓


(以下、文/撮影:価格.com システム担当S)

最近になっていくらか発熱を抑える方向に向かい始めたパソコン業界ですが、依然として排熱対策をしっかりしなければマトモに動かないのが最近のパソコンです。

この排熱対策ですが、広い意味で考えると2種類あります。
(1)発熱量の少ない部品を使う
(2)出た熱をすみやかに外部へ放出する

(1)で発熱の原因が解決できれば一番よいのですが、現状のパーツ性能を求めると難しいところです。

極論してしまうと、
・高速で発熱量の多いパソコンか
・低速で発熱量の少ないパソコンか
の選択になります。

ここで前者を選択した場合は(2)の対策が重要になってきます(対策が不充分だと動作が不安定になったり故障の原因になります)。

また、排熱対策と切り離せないのが騒音対策です。現在、排熱手段として主流となっているのはファンを使用した空冷方式ですが、これがパソコンの騒音の原因となっています。騒音を抑えるにはファンの数を減らしたり、回転速度を落としたり、静音性の高いファンに変更すればよいのですが、排熱は十分に行われなければなりません。

そこで、熱源から熱を効果的に取り去る仕組み+静音性の高いファンの組み合わせが有効な対策になります。熱源から熱を効果的に取り去る方法としては、ヒートシンクや水冷システム、まれなところではペルチェ効果を使ったものなどがあります。

パソコンに求める性能と静音性、そして費用のバランスは人によって異なると思いますが、幸か不幸か筆者の自宅環境を見てみると、やや騒がしいNASサーバや空気清浄機が常時稼働しているため、必要以上に静音を求めても意味がなく、それほど重い処理を必要とするソフトもありません。

そこで今回は、以前から興味のあった「水冷」で「そこそこの性能が出てそれなりに静かでなるべく安く」という、少し中途半端な―良く言えばバランスの取れた―パソコンの導入を検討してみました。

水冷パソコンを導入する場合、
(A)自作用の水冷キットを購入して自作パソコンに組み込む
(B)メーカー製の水冷パソコンを購入する
(C)水冷機器の入ったケースを購入して自作パソコンを組み立てる
という選択があります。

ただし、
(A)水冷部分とケースや他部品との組み合わせを考慮しなければならないので、やや敷居が高い
(B)お手軽で信頼性も高いが部品選択の自由度や拡張性が低い
(C)ケースの選択肢がほとんどなく、やや高価
といったデメリットがあります。

今回は初めての水冷ということで(C)を選択してみました。自作にもだいぶ慣れてきた、という中級者ユーザーが挑戦するにはちょうどいい敷居の高さではないかと思います。

筆者自身、自作パソコンを組み立てるのは6台目ですが、「水冷」は敷居が高い感じがして、今まで手を出せずにいました。今回の件で周囲の人たちと話をしていても、「え、水冷? 水漏れたりしない?」「実際のところ騒音はどうなの?」といった質問が多く、興味はあるけど手を出していない人が意外に多い印象です。実際のところは水冷の必要性をあまり感じていない人が多いと思うのですが、水冷付きのケースが市販されていて自作レベルの知識があれば簡単に導入できる、という点もあまり知られていないようです。

■構成■
以下が今回の構成になります。特に問題なく動作した水冷パソコンの一例、として参考になれば幸いですが、この構成での動作保証をするものではありませんのでご注意ください。【 】の中は購入にあたって事前に決めておいたスペックです。

akiba20080517-s0015.jpg1.ケース【水冷組み込みケース/黒】
 3D Mercury GZ-FW1CA-AJB(GIGABYTE製)
 参考購入価格:54,739円

2.マザーボード【ATX;Intel-X48】
 GA-X48-DS5(GIGABYTE製)

akiba20080517-s0021.jpg3.CPU【Intel/LGA775】
 Core 2 Duo E8400 BOX(Intel製)
 参考購入価格:55,131円(※マザーボードとセット購入)

4.メモリー【DDR2/4G】
 PC2-6400(DDR2-800) ノーブランド2GB×2枚
 参考購入価格:7,560円(※2007/12に購入)

akiba20080517-s0022.jpg5.ビデオカード【ATI系/PCIExp2.0/CrossFire対応/RADEON HD 3850か3870】
 RH3870-E512HW (玄人志向製)
 参考購入価格:24,800円

6.HDD【SATA300/500GB/4台】
 ST3500630AS(SEAGATE製)×4台
 参考購入価格:31,916円

akiba20080517-s0024.jpg7.電源【ATX2.2/CrossFire対応】
 Power Panther Victory SKP-700PC/V(スカイテック製)
 参考購入価格:15,800円

8.DVDドライブ【SATA/黒】
 DVR-215DBK(Pioneer製;バルクドライブ)
 参考購入価格:5,023円

9.その他【既存のものを使用】
 キーボード、マウス、LANケーブル、液晶モニター、SATAケーブル1本、OS、ウィルス対策ソフト

参考合計金額:194,969円

と、なんとか20万円以内に収まりました(購入価格は2008年03月~04月のもので、kakaku.comの最安店以外に特売品やショップのポイントで購入したものも含みます)。

パソコン本体のみの価格としては少し高めな気もしますが、自分の用途とコストパフォーマンス的にはこだわった構成になっていると思います。
ポイントとしては、
・HDDを4台使用して RAID10構成にした
・将来的にビデオカードを追加してCrossFire構成も可能
といったところです。
日々値下がりしているパーツもありますし、用途によってはこれより安い構成で組むことも可能です。
もちろん、これよりハイエンドな構成もまだまだ可能ですので予算が十分あるという方はぜひチャレンジしてみてください。

※この構成の注意点
・ビデオカードを挿した状態ではメモリースロットの固定クリップが干渉します。
 メモリーを抜き挿しする際はビデオカードを取り外す必要があります。
・SATAケーブルが計5本必要なのでマザーボード付属の4本では1本不足します。
 別途用意するか、DVDドライブをATAPI接続に変更して余ったものを使うのも手です。
・リテール版CPUに付属のクーラーは使用しません。余ります。入手可能ならバルク版でもいいかも知れません。
・FDドライブは組み込んでいません。
 Windows Vistaの場合、RAID構成を初めから認識したため、DVDドライブから直接OSのインストールが可能でした。OSによってはインストール時にRAIDドライバディスクを作成してFDDから読み込ませる必要があるかもしれません。
・ケース自体のサイズがやや大きく、梱包サイズはさらに大きくなっています。
 設置や配送時には注意が必要です。筆者の自宅のマンションにある宅配ボックスには入りませんでした。


■水冷対象■
この水冷ケースは最大3系統まで水冷が可能となっており、購入時の状態で使用可能なのはCPU用の1系統だけです。オプションとしてビデオカード用の製品がありますが、ほかにオプション製品がなさそうなので、1枚または2枚のビデオカードを追加で水冷化することを想定しているようです(個人的にはHDD用の冷却オプション製品を出してほしいのですが・・・)。

したがって今回は、
・水冷化する対象はCPU部分のみ
・ビデオカードは水冷化しない(空冷のまま)
という最小構成になります。

将来的にはビデオカードも水冷化してみたいと思っていますが、今回購入したビデオカードにオプション製品が取り付け可能かどうか確認できていません。ビデオカードを水冷化する場合はこの点も注意が必要です。

■組み立て■
CPU、マザーボード、水冷ケースのマニュアルを一通り読んで工程を整理してから作業を行いました。マニュアルと少し違いますが以下の順で組み立てました。

(1)電源ユニットの取り付け(最初に取り付けましたが、ビデオカード取り付け後の方が楽だと思います)
(2)マザーボードの裏にバックプレートを取り付け
(3)I/Oバックボードの取り付け(水冷ケース付属のクイックインストールガイドはこの工程が抜けているので注意)
akiba20080517-s0031.jpg(4)マザーボードの取り付け
(5)メモリーの取り付け
(6)ビデオカードの取り付け
(7)各種コネクタの取り付け
(8)CPUの取り付け
(9)DVDドライブの取り付け
(10)HDDの取り付け
(11)電源ケーブル、SATAケーブルの取り付け
(12)CPUクーラー(ウォーターブロック)の取り付け
(13)キーボード、マウス、モニタ、電源、LANケーブルの接続
(14)水冷システムに冷却液を注水(冷却液は1本+2本目を10~20%程度使用)

akiba20080517-s0028.jpg通常の自作工程と違うのは以下の3点だけです。
・水冷システムに電源を供給
・CPUクーラー(ウォーターブロック)の取り付け
・水冷システムに冷却液を注水

CPUクーラーの取り付け作業がやや難易度の高いところですが、ケースのマニュアルどおりに進めていけば問題ありませんでした。

■静音性■
akiba20080517-s0029.jpg今 回の構成では、ケース自体にファンが5つ、ビデオカードに1つ、CPUクーラー部に1つ、電源に1つ(ただし40度以上で稼動)と、合計8つのファンが存 在します。ケースのファンのうち2つはラジエーター用で、前面のコントローラーにより1000~2600rpmまで制御可能になっています。このコント ローラーで騒音レベルが決まるといってよいでしょう。1000rpmに下げても無音にはなりませんが、個人的には満足できるレベルになっています。逆に回 転数を2600rpmまで上げると一昔前のサーバーマシン並みの音が出ます。構築後、常時1000rpmで特に問題なく稼動していますので、オーバーク ロック目的以外では回転数を上げる必要はないと思われます。

■その他、個人的な感想など■
写真のとおり全体的にブルーライトが少し強烈な感じです。特に電源が入った状態で背面から配線などの作業をする時は直視しないように気をつけた方がよいでしょう。

akiba20080517-s0027.jpg akiba20080517-s0025.jpg akiba20080517-s0030.jpg
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実は水冷にした理由の80%は単なる好奇心です。 (編注:そうだったんディスカー!)
も しかしたらこれから水冷のブームがやってくる・・・かも知れませんが、こないかも知れません。遠い未来、技術が進歩してパソコンが今ほど発熱しなくなる時 が来るかもしれません。ぜひ来てほしいですし、おそらく来るでしょう。そう考えると、水冷パソコンを作って楽しむなんてことができるのは今だけかもしれま せん。
もし興味が出てきたという方がいましたら、挑戦してみてはいかがでしょうか。


akiba20080517-s0035.jpg■筆者紹介

名前:価格.comシステム担当S

旧世紀のオタク。パソコン暦25年、自作暦8年。ハードディスクを冗長化する習性がある。


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