「ファイティングオペラ『ハッスル』 大晦日ゴールデンタイムへ進出」 アキバ総研編集部

2007年12月29日 03:000

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20071229030000.jpg「アキバ総研編集部」連載コラム第3回(文:アキバ総研 文系プログラマー)


はじめまして、今回のコラムを担当させて頂きます文系プログラマーと申します。
お題は「ハッスル」!


今年の大晦日にプロレスイベント「ハッスル」がゴールデンタイムで放送される事になった、というニュースを聞いた事のある方も多いでしょう。


「ハッスル」と聞いてもピンとこない方の為に簡単に説明しておくと、「ハッスル」とは総合格闘技イベントPRIDEの運営団体DSEが2002年に始めたプロレスイベントです(現在はハッスルエンターテイメントが運営)。お笑い芸人のレイザーラモンHGや狂言師和泉元弥、元巨人軍のクロマティの参戦などにより、ワイドショーなどでも話題を振りまいているので、「名前は聞いた事がある」という方も多いのではないでしょうか。

これまでの「強さ」によって支えられてきたプロレスの概念、常識を根底から覆した、全く新しいエンターテイメントイベントであり、総合格闘技の隆盛によって苦境に立たされていたプロレス界に旋風を巻き起こしている「ハッスル」。今回のコラムはプロレス、格闘技オタクとしてこの「ハッスル」を取り上げたいと思います(因みにハッスル関係者などは、自らのイベントを「プロレス」ではなく「ファイティングオペラ」と呼んでいます)。



この全く新しいイベント「ハッスル」が生まれるに至った経緯を簡単に説明すると…、

■プロレス衰退へのカウント1、2、3

1.「第一回アルティメット大会」
1993年、当時日本で「強い」とされていた一人のアメリカ人プロレスラー「ケン・シャムロック」が、アメリカで行われた総合格闘技イベント「第一回アルティメット大会(UFC1)」に出場し、当時全く無名だったグレイシー柔術の使い手ホイス・グレイシーに一本負けを喫しました。これは例えるなら、プロ野球の巨人軍が町内草野球大会にでて、コールド負けをする位の衝撃をプロレスファンに与えました。強いと信じられていたプロレスラーが、アマチュアの格闘技大会で惨敗したこの日を境に、プロレスラーの強さへの信頼にヒビが入り始めます。

2.「プロレスラー安生洋二の道場破り失敗事件」
その後、勢力(人気)をジワジワと拡大してくる総合格闘技勢に危機感を持ったプロレス界、中でも高田延彦をエースとするプロレス団体「UWFインターナショナル」(1996年解散)は、総合格闘技&グレイシー柔術の強さは「偽り」と徹底的に批判し、それを証明する為にグレイシー一族、中でも「400戦無敗」「世界最強の男」と言われていた、ヒクソン・グレイシー(ホイス・グレイシーの兄)に対して対戦を呼びかけていました。ただUFCやグレイシー一族が日本の一介のプロレス団体の呼びかけに応えるはずもなく、試合の機会は訪れず時間だけが過ぎていく事となります。業を煮やした「UWFインターナショナル」は、所属していたプロレスラー安生洋二
(現「アン・ジョー司令長官」)をロサンゼルスのグレイシー道場に、道場破りに送り出す事を決断。(安生は当時「ガチンコでやったら強い」と真しやかに言われていたプロレスラーである)勝利の瞬間を広く宣伝する為、安生はマスコミ、雑誌記者を引き連れロサンゼルスのグレイシー柔術道場に道場破りに行くも、あろう事かヒクソン・グレイシーに徹底的に痛めつけられ返り討ちにされるという事件が起こります。そして翌週血塗れにされた安生の顔がプロレス専門誌の表紙を飾り、プロレスファン&プロレス界に計り知れない程の大きな衝撃を与えました。

3.「PRIDE1での高田延彦の完敗」
そして今から丁度10年前の伝説のイベント「PRIDE」第一回大会で、安生の師匠高田延彦とヒクソン・グレイシーが激突。プロレスファン&プロレス界の期待を一心に背負ってヒクソンに挑んだ高田でしたが、ヒクソンの腕十字固めに光速ギブアップで完敗。


この「第一回アルティメット大会」、「安生洋二の道場破り失敗」、「PRIDE1での高田延彦の完敗」という「1、2、3」で、力道三以来受け継がれ日本のプロレス界を支えてきた屋台骨「強さ」という幻想は音をたてて崩壊していきました。「強さ」を求めていた観衆達は当然真に強いものの闘い、総合格闘技へと興味が移っていき、逆に「強さ」を売りとしていたプロレス界は冬の時代を迎えていく事となります。

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■カウント2.998

「強さ」という幻想を失っても、なかなか昔の栄光を忘れる事ができずに低迷し、存在意義を失おうとしていたプロレス界。そんな中でいち早く発想の転換をしたのが小川直也、橋本真也、高田延彦等という3人のプロレスラーです。この3人が中心となり、プロレス界を支えてきた「強さ」という幻想を捨て、「エンターテイメント(笑い)」を代わりの柱とした新しいプロレスを作り出しました。こうして誕生したのが、全く新しいプロレスイベント「ファイティングオペラ ハッスル」です。

ただイベント開始当初は、エンターテイメントプロレス未経験で楽しみ方の分らない観客や、ハッスル自信も方向性が定まらなかったり、また当然今までのプロレス界からはアレルギー反応が噴出したりと、当初は観客動員に大変苦戦していましたが、小川直也がPRIDE参戦の際に必ずハッスルポーズを繰り返し、またそれを巨人軍の清原や安倍元首相が選挙遊説中などにやりはじめ、ハッスルは徐々に知名度を上げていきました。

一方国立競技場で10万人の観客を集めて格闘技イベントが開かれるなど、我が世の春を謳歌していた格闘技界にも突然転機が訪れます。PRIDE運営会社役員の不祥事に単を発したフジテレビのPRIDE放映契約解除です。これによりPRIDEのゴールデンタイムや大晦日でのテレビ放送は一切無くなってしまいました。マイナースポーツである格闘技がテレビから締め出されるダメージはボディーブローの様にPRIDEの経営を圧迫していき、資金的に行き詰ったPRIDEはライバルUFCに助けを求めるという致命的間違いを犯します。UFCは援助(買収)に合意、息を吹き返すかと思われたPRIDEですが、実際は有望選手だけ引き抜かれ、あげくあっさりPRIDEを解散してしまいました。こうしてフジテレビの放映打ち切り後わずか一年半でPRIDEは消滅してしまう事となりました。

大晦日に民放視聴率No.1を稼ぎ出すなど、「K-1」と並んで日本の格闘技界を支えてきた二本柱の一本が突然消えてしまった事、また当初は新鮮だった総合格闘技の試合も徐々に目が慣れ食傷気味になってきていた観客が次第にハッスルの魅力に気付き始めました。

そして2007年、総合格闘技の低迷に反比例する様に「ハッスル」は大ブレイク。高田総統やインリン様はお茶の間でも知られる存在となり、遂に大晦日、ゴールデンタイムへと進出が決定。皮肉な事に、プロレス界を根底から破壊し危機に陥れた高田延彦によって、再びプロレスがゴールデンタイムに帰ってくる事となりました。大晦日は「歌」か「格闘技」かいうこれまでの選択肢に「プロレス」が加わる今年、お茶の間の人々は何を選択するのでしょうか?

「プロレス」と聞いただけで一歩引いてしまう人も正直多いと思いますが、そんな人にこそ是非ハッスルを見て欲しいと思います。今までのプロレス感が180度変わること間違いなしでしょう。「ハッスルキング」こと、故橋本真也さんが「プロレス界の創造的破壊」と言っていた集大成がいよいよ今年の大晦日に披露される事となります。

今年の大晦日、きっとあなたもテレビに向かってハッスルポーズを決めているに違いない。




■筆者紹介(アキバ総研担当者より)

名前:文系プログラマー

オフェンスに定評のあるアキバ総研のシステム担当。プログラムよりもハッスルやラジコンに夢中な○○歳


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【関連リンク】
ハッスル公式サイト
やれんのか!大晦日!2007

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