これぞゲーム!「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」80時間プレイレビュー  広大な空や地上、地底を自分の方法で自由に冒険できる傑作!

2023年05月31日 11:450

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2023年5月12日より、Nintendo Switch向けタイトルの「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下、TotK)が任天堂から発売された。本作は2017年発売の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下、BotW)の続編で、主人公のリンクやハイラル王国のゼルダ姫など、前作のキャラクターたちが引き続き登場し、彼らによる新たな物語が描かれる。


本稿では、本作を80時間ほど遊んだうえでのレビューをお届け。「スクラビルド」など新しい能力を始め、それらの使い方を自然に教えてくれるていねいな要素の数々、空と地上、地底の探索などについて解説していく。

大空と大地、地底を自由に冒険できる



本作の舞台になるのは、ハイラルと呼ばれる広大な世界。リンクはゼルダ姫とともに、ハイラル城地下にある遺跡を調査していた。だが、最奥にあるミイラが突如復活したかと思うと2人に襲いかかり、リンクとゼルダは離ればなれになってしまう。




その後、ハイラルの遥か上空にある「空島」で目が覚めたリンクは、自分の右腕に備わった新たな力を駆使しながら、行方不明になったゼルダを探すために方々を旅することになる。というのが本作の物語のあらすじだ。



本作を遊んで真っ先に驚くのは、冒険できるフィールドの広さだろう。前作にもあったハイラルの大地はもちろん、「TotK」ではさらに空島と地底が加わっている。ただ、いきなり3つのフィールドすべてを探索するわけではなく、物語の序盤ではまず空島の一部からスタート。移動やダッシュといった基本的な操作を始め、「スクラビルド」と「ウルトラハンド」、「トーレルーフ」に「モドレコ」という4つの能力や、「ゾナウギア」に関する使い方を学んでいく。なお、それぞれの能力やゾナウギアについては後ほど解説する。



空島で一定の目標を達成すれば、いよいよ地上に行けるようになる。
ここから何をするかは自由なので、ストーリーを進めてもいいし、各地の街や村を巡って依頼をこなすのもいいし、気の向くままにぶらついてもいい。行きかたは自分で考えなくてはならないが、フィールドの各地はすべて解放されているので、どこにだって行けるのだ。前作ではチュートリアルが終わったらそのままラスボスのところへ行けたので、「TotK」でも同様のことができるかもしれない。



ストーリーを進めている途中、出会った人から興味本位で依頼を受けてはみたが、依頼の目的地に行く途中で見つけた新しい村に立ち寄り、そこの店にあった装備を買うためにお金のルピー稼ぎに精を出し、宝箱を探してさまよっていたら大きな穴を見つけて地底へ行く。
地底を冒険している間にふと本来の目的を思い出し、中断していたストーリーを再開する。立ち寄れる拠点やダンジョン、敵の拠点などがひしめいている本作の舞台では、こうした寄り道の連続がよく起こる。


さらにそれが空と地上、地底の3つに詰め込まれているわけで、あれもこれもと進めていると、時間がいくらあっても足りない。記事の冒頭でも書いたように、現在80時間ほどプレイしているが、メインストーリーで巡る4つの拠点のうち、まだ2つ目までしか終わっておらず、そのボリュームには驚いた。



また、空島、地上、地底はそれぞれで構造やできることがまったく違う。空島では、空中に浮いている遺跡を探索できる。ゴーレムなどの敵はいるが、基本的には探索や謎解きなどがメイン。パラセールというアイテムで滑空したり、高い場所にある島から下の島へダイビングしたりと、本作ならではの立体的な冒険が楽しめるのが特徴だ。


地上には、人々の集落や里、旅の宿に洞窟、敵の拠点など、さまざまな場所がある。ボリュームの濃さで言えば個人的には地上が一番で、行方不明になったゼルダのその後が垣間見える龍の泪や、各地で起こった異変の調査といったメインストーリーを始め、人々から受けられるサブクエスト、利用するとマップに詳しい地形が書き込める鳥望台とった要素が詰め込まれている。



地底では真っ暗闇の中を探索するという、空島とも地上とも違うプレイスタイルが楽しめる。アカリバナの種をはじめとする灯りを使いながら少しずつ進んでいくのだが、鉱床を見つけたと思ったら今度は敵の拠点にぶつかることもあり、先の見えない手探り感が楽しい。


さらに、あたりには、触れるとリンクのハートの最大値が減ってしまう瘴気(しょうき)がはびこっており、さらに瘴気そのものに侵された敵も現れる。地底の敵は空島や地上と比べて非常に強く、アカリバナの種などの灯りや回復のための料理を用意するのはもちろん、防具の強化といった準備は欠かせないという印象だった。


攻略の幅を広げる4つの能力とゾナウギア



本作の核とも言えるのが、ウルトラハンドスクラビルドトーレルーフモドレコという4つの能力とゾナウギアだ。これらがメインストーリーやサブクエスト、フィールド探索など、あらゆる要素にからんでくる。



ウルトラハンドは、特定のオブジェクトを持ち上げたりくっつけたりする能力。シンプルではあるが、そのために応用の幅は広い。板を複数枚つなげれば橋にできるし、支えを2つくっつけて屋根を作れば、雨宿りの場所を即席で作れる。どう形作るかでひとつのオブジェクトをさまざまな目的に転用できるわけで、今回登場した4つの中で最も可能性にあふれた能力と言える。



スクラビルドは、装備中の武器に別のアイテムを組み合わせ、元となった武器の強化できる能力。ただの木の枝でも、スクラビルドで石を付ければハンマーになり、剣に電気属性を帯びた素材を使えば、斬りつけた相手をしびれさせられるようになる。さらに素材によって武器自体の威力も上がるため、敵との戦闘では欠かせない能力だろう。

 

特に重要なのは、魔物から取れる素材をスクラビルドに使える点。敵と戦うほど素材が集まるため、基本的にスクラビルドの組み合わせ候補に困ることはなかった。ベースとなる武器や素材には耐久値があり、ほとんど消耗品ではあるものの、次から次へと素材を入手できるため、出し惜しみする必要もない。壊れるたびに新たな武器をスクラビルドで生成して戦えるのでテンポもよかった。



モドレコは、選んだ対象の時間を巻き戻す能力。落ちてきた岩なら逆に上昇するためエレベーター代わりにできるし、投げつけられた石に使えば、投げた本人に返してダメージを与えられる。1回につきひとつのオブジェクトにしか使えないが、能力自体の範囲はかなり広く、十数メートル程度の距離なら余裕で使える。


さらに巻き戻す時間には限界こそあるが、その間であれば効果はいつでも中断できるため、細かい調整も可能。ウルトラハンドやスクラビルドほど使う機会は多くないが、戦闘にも探索にも使える便利な力だ。



トーレルーフは天井を通り抜けるという能力。民家の屋根や洞窟の岩盤などをすり抜け、直接上層に出られる。挑んだダンジョンから戻るのが面倒なときや、階段がどこにあるかわからないが手っ取り早く上階に行きたい場合などにはうってつけだ。能力が使える場所ならば、すり抜ける部分の厚さや高さなどは関係ない。さらに特定の敵をすり抜けて上部に上がることもでき、単純な力ながら使える場面は多い。



4つの能力に加えて、さらにゾナウギアという別の要素がある。こちらはリンクに宿った力ではなくアイテムの1種で、風を発生させる「扇風機」や鳥の形をした「翼」、敵に向かって進んでいく「追跡台車」など、バリエーションはとても多い。


ゾナウギアは、ゾナウギア同士やオブジェクト、武器を組み合わせると真価を発揮するようになっており、板に扇風機を付ければ動力が付いた舟になり、代わりにタイヤを4つ付ければ車になる。2輪にすればバイクになるし、6輪にすれば不整地も楽に進める。


ほかにも弾を発射する「大砲」に敵を察知する「ゴーレムの頭」を組み合わせれば、近くの敵を見つけて攻撃するドローンのようなものも作れる。いずれのゾナウギアも、組み合わせた特定のゾナウギアを使うか、プレイヤーが攻撃を当てると起動。使用中はバッテリーを消費する。バッテリーの上限は「ゾナウエネルギーの結晶」などと交換することで増やすことも可能だ。



さらにゾナウギアを手に入れるには、「ゾナウエネルギー」というアイテムが欠かせない。製造するたびに用意しなくてはならないが、ゾナウエネルギーと交換できる「ゾナニウム」は地底にある鉱床から大量に入手できるので、地底を探索していればエネルギー不足に陥ることは少ないだろう。


4つの能力とゾナウギアを使いこなせば、ステージの構造を読み取りながら地道に攻略できるし、逆に用意された要素をすっ飛ばして力押しすることもできてしまう。4つの能力もゾナウギアも、特定の遊び方を強制するのではなく、遊び方自体を思いつかせるきっかけになる存在だ。つまり遊んで慣れるほど使い方が広がり、次の新しい遊び方につながっていくというわけだ。

能力を中心に構築された世界で扱い方を学べる



4つの能力とゾナウギアは便利だが、使い道が多すぎて慣れないうちは持て余してしまう。だが、プレイヤーが不安になるようなそうした部分はしっかり補われている。というのも、本作の舞台となるハイラルを冒険すること自体が、チュートリアルと実践を兼ねているからだ。


地上と空島には祠(ほこら)という建物があり、この中では特定のギミックを攻略する。いずれもウルトラハンドやスクラビルド、モドレコやトーレルーフを使うタイプが基本で、そこにいくつかのゾナウギアが添えられているという構図だ。祠の種類によって中身はまちまちだが、最初はひとつの能力を使ってクリアできる基礎的な課題が出されるが、そこから少しずつ難しくなるという流れは共通していて、いきなり無理難題を突き付けられるようなことはない。



祠は能力を使いこなす訓練としておあつらえ向きだが、ほかにも役割がある。ひとつはワープポイント。一度訪れた祠はワープポイントとしてマップに登録されるため、長距離の移動ではお世話になる。2つ目は「祝福の光」が手に入る点。祝福の光を4つ集めると、女神像で体力のハートの最大値を増やす「ハートの器」か、ダッシュなどの各種動作で必要な「がんばりゲージ」の最大値を増やす「がんばりの器」のどちらかと交換できる。祠をクリアするだけで、能力を操る技術を得られ、さらにワープポイントの解放、祝福の光の入手という3つのメリットがあるわけだ。



ほかにも、各地にいるコログ族を合流させるという要素がある。はぐれてしまったコログ族をもうひとりの元へ連れていくと、報酬としてポーチの拡張に使える「コログの実」が入手できる。近くに置かれているゾナウギアを使って舟や飛行機を作って運ぶのか、あるいはウルトラハンドでつかんで地道に連れていくか、どうやって2人を合流させるかはプレイヤー次第となる。道伝いに行くだけで済むなら簡単だが、目的地が川の対岸だったり、急斜面を越えた丘の上などになると、少し頭をひねることになる。



もうひとつ特徴なのが、カバンダという人物。彼はハイラルで有名なエノキダ工務店の一員で、社長であるエノキダを描いた看板を建てるために各地で活動している。だが、彼が支えている看板は支柱が足りず、カバンダが手を放すとたちまち倒れてしまう。そこで、看板の支柱をプレイヤーがこしらえるわけだ。



カバンダの近くにはエノキダ工務店が用意した資材があることが多いため、そこからいくつか拝借するのが一般的な方法。看板が倒れる方向に対して支えになるよう、真下に角材を入れたり、反対側に板をあてがってみたり、看板を支える方法もプレイヤー次第。複数の資材を組み合わせるという点で、カバンダのイベントはウルトラハンドに特化した要素と言えるだろう。


各地の異変の調査と、行方不明になったゼルダの捜索というメインストーリーこそあるが、ハイラル自体はウルトラハンドをはじめとする能力とゾナウギアを前提に構築されているので、上記の祠やコログ、カバンダといった要素に触れるたびに能力の基礎と応用を試される。いわばどこにでもチュートリアルと実践があるわけで、物語序盤の空島で能力を扱いきれなくても問題ない。さらに各種イベントでは祝福の光をはじめとする報酬もたくさんもらえるので、こちらのモチベーションも上がる。


力を使いこなせるようになれば敵との戦闘も楽になるし、フィールドの探索もスムーズになる。序盤で手に入る能力をあらゆる場所で使っていくという仕組みのおかげで、基礎も応用も時間をかけて学ぶことができた。


思考が解きほぐされ、少しずつ戻ってくるワクワク感



本作を80時間ほどプレイして実感したのは、遊ぶ前と後での考え方の違いだ。空島でチュートリアルをこなしていたときは、大人の多分に漏れず凝り固まった思考にこだわり、現実の常識に引っ張られて後一歩を踏み出せずにいたが、祠をはじめとする能力にまつわる要素に触れるにつれてそんな自分が馬鹿らしくなり、今では4つの能力とゾナウギアの組み合わせを気ままに追求できるようになった。



具体的に言うと、新しい事実を発見するためにかかる膨大な無駄を、惜しまなくなったどころか、進んで楽しめるようになったのだと思う。あれとこれをかけ合わせたらどうなるか、手当たり次第に実験をしてはワクワクしていた子供のころの感覚だ。無駄遣いしたゾナウエネルギーを補完するためには何度も地底に行かなければならないし、ウルトラハンドで小一時間かけて作ったロボットもどきがボツになることもあるが、その過程が楽しい。



無数の方法を提示してくれる能力によって自力でゲームを攻略しているのだとわかる達成感。そして示すだけで強制はしないゲームデザインによって、結果と同じくらいその過程も楽しめる感覚になってくると、「TotK」への没入感も増していく。能力とスクラビルドを前提として組み上げられた緻密な世界と、果てしないやり込み要素の多さも相まって、遊ぶほどに深みにはまり、時間を忘れて遊んでしまう。


4つの能力やゾナウギアを軸に構築された世界で、プレイヤーはさまざまな組み合わせから自分なりの攻略法を編み出せる。その自由度の高さはもちろん、各地にある建物やダンジョンの探索や、人々から受けられる依頼の数々によって、途方もない規模のゲームボリュームになっている点も魅力だ。ひとつの決まった道を作って強制するのではなく、たくさんの要素を整えて示すだけにとどめている本作は、プレイヤーがみずから遊ぶというゲームの強みを存分に引き出している作品と言える。

(文・夏無内好)


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