【40時間プレイ】フリューの新作「聖塔神記 トリニティトリガー」をクリアレビュー! 王道の物語にスピード感あふれるバトルが楽しめる王道RPG

2022年11月03日 12:000

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2022年9月15日に、PS5/PS4/Switch向けタイトル「聖塔神記 トリニティトリガー」(以下、トリニティトリガー)がフリューより発売された。本作の開発に当たって、「聖剣伝説3」の結城信輝さんが世界観ビジュアルを手がけているほか、「オクトパストラベラー」の久保田悠羅さんがシナリオを担当。名作RPGを生み出したスタッフたちが参加していることで発売当時は話題になった。


今回は、そんな「トリニティトリガー」(Switch版)を最後まで遊んだうえでのレビューをお届けしよう。プレイ時間は約40時間。ゲーム中で挑める51個のサブクエストはすべてクリア済みだ。

ゲームを遊ぶ前から伝わってくるコンセプト



「トリニティトリガー」に込められたコンセプトは、「90年代風のRPG」。その作風は中身だけでなく外にも色濃く表れており、本作のパッケージ版には、今では珍しい取扱説明書が付属している。



対応しているゲームハードを問わず、最近のゲームのパッケージ版に取扱説明書はほぼ付属しない。開発費の節約、デジタル化での代用、さまざまな理由があるのはわかるが、少なからず昔のゲームを遊んできた身としては、パッケージの中にソフトしかないのはさびしい気もする。そういうこともあり、今回パッケージの強みを生かした「トリニティトリガー」のような作品が出てきたのはうれしい。



本の装丁を思わせる外見を始め、記された情報の横に赤字でメモ書きを入れて手作り感が出されていたり、バトルで使える応用テクニックが載っていたりと、見た目も中身もかなり力が入っている。ストーリーで後に訪れる街やフィールドに関しても言及しているが、どれも明言は避けて匂わせる程度にとどめている印象で、説明書を読みながら本作を遊んでも大丈夫そうだ。詳しいことは後ほど書くが、本作のバトルシステムはシンプルで、付属の説明書を読むだけでもかなり参考になるだろう。


神々に選ばれた青年の冒険を描く物語



本作の舞台となるのはトリニティアという世界。「秩序」と「混沌」に分かれた神々が何度も争っていたこの地で、主人公のシアンは神々の戦争の代理人として「混沌の戦士」に選ばれる。混沌の戦士として「秩序の戦士」と戦うことを定められたシアンは、途中で出会った仲間たちと協力しながら、自身の過酷な運命に抗うことになる。



ウッドルースという町で妹のフィルンと2人で暮らしているシアンは、町の近くにある「聖塔」の中から宝物を探す「ブリンガー」であり、具体的な年齢はわからない青年ながら毎日働いている。家事を担当してくれているフィルンとは仲もよく、家を守る意識が強いのか、勇気があって器量もある。まさに主人公といった性格だ。


聖塔とは神々が使っていた武器を指す。突き刺さった聖塔は周囲の環境に影響を与えており、ウッドルースの自然が豊かなのはそのためでもある。塔の内部はダンジョンにもなっている


シアンを中心に、本作では2人の仲間がパーティーに加わる。ひとりはエリス。真面目な性格をしていて、命を狙う刺客からシアンを守るために、秩序の戦士側の人間でありながらわざわざウッドルースまでやってきた。2人目のザンティスは、秩序の神に仕える神官。本来は神聖な人物だが大の酒好きで、細かいことを気にしない豪快な一面を持つ。エリスと同様、本来ならシアンとは敵対しているはずが、とある理由で彼の仲間になる。主人公のシアンと真面目なエリス、頼りがいはあるがいい加減な大人のザンティスといった具合に、それぞれが独自の特徴を持ったバランスのよいパーティーになっている。

冒険では各地の聖塔を訪れる。聖塔の内部にはそれぞれ特有のギミックがあるので、挑むたびに新鮮味がある


本作を始めたばかりのときは、パーティーが3人だと少しさびしいと感じていた。だが、物語をクリアした今の考えは逆で、3人という少人数だからこそ、シアン、エリス、ザンティスが深く掘り下げられていたし、結果的に感情移入もしやすかった。さらに、本作のバトルで力を貸してくれる「トリガー」という存在が各キャラクターに1体ずついるので、パーティーは実質6人。おかげで道中のかけ合いやイベントもにぎやかだ。


プレイヤーが感情移入しやすくすることを意識しているのか、シアンの性格はやや控えめ。基本的にはエリスとザンティスのほうが目立つのだが、自分の運命を切り拓こうとするシアンが物語の中心であることは終始徹底されており、のけ者感は出ていない。ストーリーが中盤に差しかかるあたりでは、自身の境遇や過去がわかるとともに、それでも諦めず闘うシアンの姿勢が印象的だった。



いっぽうで、サブクエストでは、シアンたちだけでなく、後に登場するヴァイオレット、ノワルといったサブキャラクターたちの一面を垣間見ることも。本筋をしっかりなぞるメインシナリオと、寄り道として世界観を深掘りできるサブクエストという具合に整理されていたので、メインもサブも含めてストーリーをテンポよく楽しめた。


武器の相性を見極めて戦うバトル


本作のバトルはアクションで、シアン、エリス、ザンティスのうちひとりをプレイヤーが操作。操作していない仲間は自動で動き、プレイヤーとともに戦ってくれる。Aボタン(Switch版準拠)を押すだけでコンボが成立するほか、攻撃を当てると「ウェポンゲージ」が上昇し、満タンになると必殺技を放てる。バトルに必要な動作はいずれもシンプルなので、最初のダンジョンをクリアしたころには十分使いこなせるようになっているだろう。


コンボは基本3連撃。「トリガーアタック」にそれぞれ設定した技を使う


Aボタンを押すだけでコンボ攻撃ができるものの、連打するのは危ない。というのも、攻撃するには「シンクロゲージ」が必要で、ゲージが空だと与えられるダメージ量が大きく減ってしまう。シンクロゲージをいかに管理できるかがバトルの勝敗を分けると言っていい。


シンクロゲージは時間がたつとともに回復するが、敵の攻撃をギリギリで避ける「ジャスト回避」でも代用できる。瞬時に回復できるという点ではジャスト回避のほうが優秀だが、なにぶんタイミングが難しいので使いこなすには慣れがいる。アクションが苦手な人は時間経過で済ませるか、シンクロゲージの回復速度を上げるアイテム「活力の飲み薬」を使うのがオススメだ。



そのほか、敵にはそれぞれ武器ごとの相性があるために、ひとつの武器を使っているだけでは効率よくダメージを与えられない。そこで、片手剣や弓、槍に斧など、本作にある全8種の武器を適宜使い分けるのも重要となる。最初は使える数こそ少ないが、聖塔内部にある遺跡でトリガーをパワーアップさせると少しずつ増えていく。片手剣ならリーチは短めだが攻撃の出が早い、槍は動きが遅い代わりにリーチがあり、弓は遠距離攻撃ができるといった具合に、武器によって攻撃方法や間合いの長さが違う。


ボス戦ではまず「アーマーゲージ」を削らないと本体にダメージを与えられない。アーマーゲージへのダメージ量も武器の相性が影響するので、弱点を探すのがより重要に


敵との相性や有効な間合いをリアルタイムで考えるのは難しいが、今使っている武器が有効かどうかはダメージ数値の色で判別可能だ。赤は有利、白は通常、青は不利といった具合に見て判断できるので、敵ごとの相性を忘れていても、武器を片っ端から試すという力押しでどうにかなったりする。


武器は十字キーの上下左右それぞれにショートカットとして設定できる。いちいち画面を開かずに済むのでとても便利


回避をメインにしたスピード感のあるバトル、連打だけで成立するコンボや、敵の弱点を突くシンプルなシステムなど、本作のバトルは面白いところが多い。なお、アイテムは本作のおもな回復手段で、体力が減ったり、状態異常にかかった際の必需品だ。


バトル中のアイテム使用はショートカット登録ができる。ただ、設定できるアイテムはHP回復、状態回復、強化、お助け系にひとつずつの計4種。HP回復系なら量や対象しか変わらないので、「ハイポーション」や「ハイエリクシール」といったより強いアイテムで代用すればいい。いっぽうの状態異常系はそうはいかず、それぞれで効果が違うために、内容に応じて切り替える必要がある。つまり、ショートカットの枠が足りない。すべての状態異常を回復できる「万能薬」もあるが、ほかのアイテムと比べて値段が6倍もするうえ、最大所持数が10個と少ないので、なかなか気軽に使えない。



状態異常に対応しようとアイテム画面に移動すると、そのたびに流れが止まってしまい、スピード感のあるせっかくのバトルもテンポが損なわれてしまうので、アイテム使用には、注意が必要だ。


「発見」が重要なフィールド探索



「トリニティトリガー」でもっとも重要なテーマと言っていいのが「発見」。本作には、バトルで敵の弱点を見つける「発見」、色の違う木や壁によって隠された道を見つける「発見」、街の人々から聞いた話を頼りにアイテムや場所を見つける「発見」という、3つの「発見」がある。武器を切り替えて戦うバトルの発見についてはすでに書いた通りだ。ここでは、ほか2種類の発見について解説する。



トリニティアにある街やフィールドには宝箱が散りばめられており、これを探すのも本作の醍醐味となる。各エリアには宝箱の総数が必ず表示されていて、現在地を探索するときの目安になってくれる。宝箱の数を前もって教えてくれるおかげで、収集もはかどるし取り逃しもない、同時に存在しない宝箱を探して時間を無駄にすることもない。


宝箱は通路の奥にポツンと置いてあるタイプもあるが、なかには森の奥や壁の向こう側に置かれていることも。木や壁は障害物なので、当然そのまま先には進めない。そこで重要なのが、フィールドにある違和感から隠されたものを見つける「発見」だ。宝箱に続いている木は色がほかと違ったり、壁であればひびが入っていたりする。隠し通路みたいなものではあるが、よく見ていればどれもすぐに判別できるものばかりなので、特に迷うこともないだろう。


特定の武器を使って手に入れる宝箱もある


環境を見て判別するだけでなく、街の住人からも宝箱の位置を聞き出せる。敵の弱点を突く、フィールドの違和感を探るに続く、最後の「発見」だ。ただ、宝箱の位置を直接教えてくれるというよりは、宝箱か何かがありそうな場所をそこはかとなく匂わせるという程度。木や壁の違和感を見つける間違い探しとは違い、こちらの場合はクイズに近い。とはいえ、筆者が確認できた範囲では、人から聞ける宝箱はだいたい街の中にあった。フィールドと街で宝箱の場所は区別されており、あまり遠出をせずに済むのもありがたい。


ここまでで書いたように、「トリニティトリガー」には3つの発見がある。ただ重要なのは、これらはいわばゲームの基礎でもあるという点だ。弱点を突くバトルも、環境の違いを見抜いて通路を見つけることも、住人からの情報収集も、今日のRPGではよく見られる。とはいえ、本作のテーマのひとつである「90年代風」は、今日のRPGにおける「当たり前」が築かれ、成熟しかけていたときでもあるだろう。現代風のRPGでこうした要素を大きく打ち出すのは微妙だが、「トリニティトリガー」は古き良きRPGを目指しているために、むしろこの3つの発見がよくなじんでいると感じた。


クリア後に用意された豊富なやり込み要素



本編をクリアすると、新しいサブクエストが解禁される。こちらはバトルとストーリーの双方に深く関係しているので、やり込むならぜひとも挑みたい。バトル面でいうと、これまで巡ってきた聖塔のさらに上層へ行けるようになり、持っている武器が「覚醒」から「真極」へと強化される。強化の対象になるのは、そのキャラクターの得意とする武器のみ(得意な武器を使うと与えるダメージが伸びる)なので、シアンの場合は4つ、エリスとザンティスは3つずつ。後半のサブクエストに出てくる敵は軒並み強いので、なるべく真極状態となった得意武器をそれぞれに装備させておきたい。



本作はやり込みを前提に作られているのか、サンドヘイムという街にある5つの塔のうち、クリア後のサブクエストで行ける「名無指の塔」「長指の塔」「季指の塔」は稼ぎ作業に向いている。「名無指の塔」の敵からはトリガーのスキルを覚えるのに使う「TP」が多めに手に入るし、「長指の塔」の敵からは得られる経験値が多く、「季指の塔」の敵はアイテムドロップ率が高い。おかげでレベル上げやトリガー育成は終始順調で、最後のサブクエストのボスもどうにか倒すことができた。



ストーリー面でいうと、本作の世界観である秩序と混沌、それぞれの神々について新たな情報が手に入る。最後のサブクエストに挑むには、まずあちこちのフィールドに建てられた石碑を調べる必要があり、ここではメインストーリーにもからむ重要な設定もわかる。ネタバレになるのであまり深くは言えないが、「トリニティトリガー」の世界の全容を知りたいなら、サブクエストは最後まで遊んだほうがいいだろう。


「90年代風」や「発見」というテーマをもとに、昔ながらの王道的なRPGが楽しめるいっぽうで、スピード感のあるバトルや、やり込みを意識した稼ぎ向けのダンジョンなど、現代らしい要素も盛り込まれている。昔のRPGが好きな人も、最近RPGをやり始めた人にもオススメできる作品だ。


(文・夏無内好)


  • 【作品情報】
  • ■聖塔神記 トリニティトリガー
  • ジャンル:アクションRPG
  • 対応機種:PS5/PS4/Switch
  • プレイ人数:1~3人
  • CERO:B(12才以上対象)
  • 発売日:2022年9月15日
  • 価格:8,580円(税込)
  • メーカー:フリュー

© FURYU Corporation.

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