購入以来、約1年半越しのクリア! 遊びやすさと続けやすさで作られたフィットネスゲーム「リングフィット アドベンチャー」をレビュー!

2022年07月16日 12:000

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2019年10月、Nintendo Switch「リングフィット アドベンチャー」が発売された。文字通りゲーム感覚で体を鍛えられるだけでなく、全身運動で冒険をしながら、ゲーム感覚でエクササイズが楽しめる本作は、あっという間に人気が拡大。2022年3月末時点で全世界1400万本以上を売り上げている。


筆者も、この間、本作を購入し、2度の挫折と約1年半の時間をかけ、とうとうエンディングに到達したので、改めて本作を振り返りながらのレビューをお届けする。バトルシステムなどの基本的なことから、プレイヤーの意欲を高めてくれる数々の配慮、そしてゲームとトレーニングの相性などまで解説していく。

身振り手振りで魔物と戦うバトルシステム



本作における最大の特徴は、付属コントローラーの「リングコン」と「レッグバンド」の2つを使うことだ。Joy-Conをそれぞれにセットし、円形のリングコンを両手につかみ、レッグバンドは左足の太ももに巻き付ける。



リングコンは、押し込む、引っ張る、回すときなどに使うため、本作を遊ぶうえではもっとも酷使する。とはいえ、弾力が強いために負荷はかなり緩和されるのか、今日まで使い込んでも不具合は一度も出なかった。任天堂の公式サイトで公開されているQ&Aによると、リングコン内部のバネには船舶や航空機にも使われる「繊維強化プラスチック」が導入されているという。後で知ったことだが、これなら納得だ。激しく動かす以上、耐久性に念を入れるのは当然だが、ここまで力を入れている点には、ゲームボーイやゲームキューブなど、頑丈なゲーム機を作り続けている任天堂らしさも感じた。

レッグバンドは足を使った運動に使う。詳細は後述するが、本作のメインモードである「アドベンチャー」では、バトルと同じくらいジョギングの頻度が多い。リングコンに劣らずこちらにもお世話になるものの、レッグバンド自体は足にきつく巻き付けるものだし、伸縮性も高いので壊れるようなことはなかった。



本作のバトルはターン制で、全身運動が「ワザ」となる「フィットスキル」を使って攻撃を行う。フィットスキルには、「うで」、「はら」、「あし」、「ヨガ」の4タイプがあり、各スキルでは名前に対応した部位を重点的に鍛えられるようになっている。選んだスキルをこなせば敵にダメージを与えることができる。自分と敵が交互に行動し、相手のHPを削りきれば撃破だ。

フィットスキルの種類によって筋肉の使いかたや鍛える場所が違うのがポイント。腕のスキルで例えるなら、「サゲテプッシュ」は胸筋を鍛えるスキルで、下に構えたリングコンをじっくり押し込む技であるのに対し、「アームツイスト」は腕から肩を鍛えるもので、腕を上げて左右に何度も振るう、比較的回数が多めのスキルになっている。



セットできるフィットスキルの数は限りがあるが、その組み合わせは自分の好きに決められるのがうれしい。おかげで、高負荷な技を中心にして筋肉をつけたい、回数をこなすスキルを多めに入れて筋持久力を高めたいという個々人の目標にあった運動が楽しめる。筆者は瞬間的に筋肉を使う分には自信があるが、持久力のほうは貧弱なので、足の部位には回数を多くこなすスキルを入れて弱点を克服しようともした。



敵と同じ色をしたフィットスキルで攻撃すると、与えられるダメージ量が少し増える。一騎討ちだけでなく、一度に4~5体と同時に戦うこともあるので、その都度、相手に合ったスキルを選ぶことも重要になる。なお、それぞれのフィットスキルにはクールダウンが設定されており、連続して同じフィットスキルは使えない。どのタイミングで、どのフィットスキルをどの敵に使うか、といった戦略性も持ち合わせているのだ。少し前にSNS上で、本作のバトルでは「必殺技を出し渋る主人公の気持ちがわかる」というような一文が話題になったが、まさにそのとおりといえる。


敵の攻撃は「腹筋ガード」で防ぐ。リングコンをおなかに押し当てるとシールドが発動し、相手から受けるダメージ量を減らしてくれる


瀕死の相手に畳みかけようと、たとえば自分がセットしたフィットスキルからひとつを選ぶ。だがそのフィットスキルは、自分の限界を伸ばすために用意したもので体力の消耗が激しい。フィットスキルによる攻撃は、決められた動きを正しい姿勢でこなさないと威力が下がるので、途中で力尽きたら台なしになる。一方、もうひとつのスキルなら簡単なので確実にダメージを与えられるが、そもそもダメージが少ないなので相手の体力を削りきれるか不安がある。

どちらも敵を討ち漏らす可能性があり、そうなれば、いよいよこちらの体力が持たない。ではどちらを選ぶべきなのか? 体力とフィットスキル、バトルの状況によってプレイヤーの選択はさらにシビアになる。



アニメや映画を見ていると、敵と睨み合ってばかりで、向に勝負を決めようとしない味方にいら立つことがあるが、上記の一文と本作のバトルを知ってからは、その認識が少し改められた気がする。当事者になったからこそわかる部分があったのだろう。

駆け引きの要素こそ大変だが、ターン制を軸にしたバトルシステムはシンプルで、コンボ攻撃やコマンド入力などの複雑な操作はない。敵に合う属性のフィットスキルを使って、画面に表示された運動をするだけでいい。リングコンを頑丈に作ったのと同様、これもまた任天堂の強みだろう。幅広いユーザーに遊んでもらうため、本作は1日目からでもなじめるように、やさしく、丁寧な配慮がなされている。



プレイヤーのやる気を高め、継続を助けてくれる仕組みが満載



筋肉をフルに使うバトルは過酷ではある。だが、本作では、プレイヤーからやる気を引き出し、かつ長く続けてもらうための要素が凝らされている。

本作のメインであるアドベンチャーでは、さまざまなステージを攻略しながらトレーニングをすることができる。景色が変わったり、コース上のギミックを解くだけでも目に見えて刺激があるわけで、ゲームとしては当たり前だが、それ自体がモチベーションになる。シンプルながらストーリーも用意されており、宿敵・ドラゴとの戦いだけでなく、各部位を極めた4人組「マスター4」の登場、幽霊だらけのワールドなどもあり、なかなか飽きることはない。


画像ではわかりにくいが、バトル中はことあるごとに「リング」という相棒が励ましてくれる

手軽にレベルアップができるのも大きい。フィットスキルで敵を倒すと経験値が手に入り、それが一定値に達するとレベルが上がるのだが、このペースが非常に速い。序盤から最終面まで、だいたいステージを2~3個ほどこなせばひとつはレベルが上がった。

筆者のデータだと、クリア時点のレベルは184。レベルが上がれば攻撃力と防御力が上がるだけでなく、新たなフィットスキルを手に入れることもある。敵を簡単に倒せるようになればモチベーションも上がるし、倒した敵から得たお金をためれば、本作中の防具であるトレーニングウェアもそろえられる。回復アイテムであるスムージーやその材料も買い込める。触発されて上がったやる気が、目に見える見返りとなってプレイヤーに届く。努力と報酬が循環していくわけだ。



身体を動かすゲームではあるが、続けやすい環境を用意してくれている点にも注目したい。集合住宅に住んでいる、あるいは夜に遊ぶことが多いためにあまり大きい音が出せないという人向けの配慮もされていて、「サイレントモード」をオンにすれば、軽い屈伸でジョギングができるようになる。

さらに、アドベンチャーモードとは別に、特定の部位だけをピンポイントで鍛える「お手軽、動画やテレビ番組を見ながらトレーニングができる「ながらモード」もあり、時間がない人、アドベンチャーを続けてやる気が落ちてしまった人にも合った機能が用意されている。

細かいことだが、アドベンチャーを遊ぶ前の準備を手伝ってくれるナレーションの言葉も、相当気を使っているのではないかと感じた。ストレッチを連続でやらなくても、「今日『も』」ではなく「今日『は』止めておくのですね」と言ってくれる。マイナスな意味やイメージを持つ言葉が徹底して省かれており、おかげでプレイする際にあまり気負わずに済んだ。

ゲームとトレーニングが噛み合った絶妙なシステム



「リングフィット アドベンチャー」のバトルは肉体的なトレーニングなので、当然自分の体には、通常のゲームを遊ぶよりもはるかに大きな負荷がかかる。そもそも、引き締まった腹筋を目指してトレーニングを始めたはいいが、なかなか変わらないおなかに嫌気が差してきて、次第にやる気がなくなっていくという経験は現実で誰しもあるだろう。

三日坊主になる理由のひとつは、目に見える成果がなかなか見えないことだと思う。3日で腹筋が割れるとは思えない。3週間、あるいは3か月以上の時間をかける勢いで取り組むことになる。そして、目に見える効果が出てくるまでの段階で、多くの人が、これは労力に見合っていないと感じて諦める。



「リングフィット アドベンチャー」の場合は、ステージの攻略、レベルアップといった目標をところどころに設置することでトレーニングへの意欲を支え、目に見える効果が確認できるまでプレイヤーを支えてくれる。現実のトレーニングには難しい、ゲームを基にしているからこそできる仕組みだろう。

とはいえ、続けられるかどうかはやはり最終的に自分次第となる。本作はあくまで様々な形でお膳立てをしてくれるだけだ。現に私が2度挫折しているように、本人のやる気にすべてがかかっている。

そういう意味でとらえるのなら、本作は現実のトレーニングと同様に長い道のりだ。とはいえ、2度諦めてもやり直し、こうして筆者が最後まで行けるくらいの遊びやすさが、「リングフィット アドベンチャー」に込められているのは間違いないとも思う。



社会人になってからというもの、すっかり運動と無縁になってしまった筆者にとって、バトルの負荷は相当なものだった。本作を買って初めてアドベンチャーを遊んだときは、ステージを2つクリアしただけで足の筋肉が震えて動けず、それ以上遊ぶことができなかったのは思い出深い。

今年の3月末ごろから再開し、毎日10~15分ほどのペースで続けた結果、今月でようやくクリアに至った。初プレイから約1年半後、ようやくエンディングを見られたときの達成感は、今まで遊んだゲームの中でも最高だったと言える。これから「リングフィット アドベンチャー」を遊ぶ人には、無理せずまず自分のペースで続けること、それだけを伝えておきたい。

(文・夏無内好)


  • 【作品情報】
  • ■リングフィット アドベンチャー
  • 対応機種:Nintendo Switch
  • ジャンル:フィットネスアドベンチャー
  • プレイ人数:1人
  • CERO:A(全年齢対象)
  • 価格:8,778円(税込)
  • メーカー:任天堂

© 2019 Nintendo

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