低価格フィギュア「POP UP PARADE」シリーズは、なぜ値上げに踏み切ったのか? グッドスマイルカンパニー「POP UP PARADE」開発秘話インタビュー!

2022年06月08日 17:000
低価格フィギュア「POP UP PARADE」シリーズは、なぜ値上げに踏み切ったのか? グッドスマイルカンパニー「POP UP PARADE」開発秘話インタビュー!

思わず手に取ってしまう飾りやすいサイズ、コレクションしやすいお手頃価格、怒涛のハイペースでリリースされる商品ラインアップ。作りこまれた造形、塗装が特徴のグッドスマイルカンパニーのフィギュア「POP UP PARADE」シリーズ。

2019年のシリーズ立ち上げからおよそ3年。毎月、怒涛の勢いでリリースされる「POP UP PARADE」が、大きな変革を迎えている。スタンダードな従来のサイズ以外に、Lサイズ、XLサイズがラインアップに追加されることが予定されているほか、4月15日にシリーズの基本価格が従来の3,900円から4,800円へと改定されることが発表された。

フィギュア業界に低価格路線を定着させ、毎回かゆいところに手の届くラインアップでユーザーを楽しませてくれる「POP UP PARADE」シリーズは、いかにして誕生したのか。また、今、「POP UP PARADE」シリーズがなぜさまざまな変革に挑むのかを、グッドスマイルカンパニーの鳥居周平さんにうかがった。

  



コンセプトは「POP UPしてPARADEするように」

──今年で3年目となる「POP UP PARADE」ですが、当時、それなりのクオリティのフィギュアを買おうとすると、ある程度の価格になると思われていたところに、3,900円というお手頃価格のシリーズが突然出てきたのは衝撃でした。ユーザーからはどんな反響がありましたか?

 

鳥居 情報が出始めた頃は「安くていいね」という反響はいただいていたんですが、新規シリーズの走り始めということで、弊社としても「これでいいのか」と悩ましく思うところもありました。

 

──鳥居さんとしては、低価格フィギュアに需要があるのか、手探りから始まったのでしょうか。

 

鳥居 低価格なフィギュアが欲しいというお客様はいるはずだという仮説のもと企画が立ち上がりましたが、いきなりアクセル全開というわけにもいかず、お客様の反応を見ながら走り始めたというところですね。

 

──フィギュアのサイズ感はどのように決まっていったのでしょうか?

 

鳥居 「POP UP PARADE」という名前の通り、POP UPしてPARADEするようにお部屋に飾れるように、という思いがあったんです。そして、きっとお客様はこのサイズを喜んでくれるんじゃないか、というところからスタートしました。

 

──「POP UP PARADE」シリーズは、リリースのサイクルが早く、かつ低価格で、それでいてしっかりした作り、という謎のシリーズですが、その秘密を教えてください。

 

鳥居 クオリティ、リリースのスピードについては、原型師さん、フィニッシャーさんのご協力があってこそ、なのは間違いありません。そのうえで商品展開のスピードと低価格という要素は連動していて、いくつかのご協力いただいている工場に「あなたの工場には年間これだけ作ってほしいです」とお話しさせていただいて、年単位のボリュームでコストの管理をしています。

この仕組みが、ブランドコンセプトにもすごく合っていたんです。

先ほど「POP UPしてPARADEするように」という話をさせていただきましたが、スタチューフィギュアはコストと労力を考えると、主人公とヒロインを出したら第3、第4人気キャラクターは出しづらいという側面があります。ですが、「POP UP PARADE」はこの仕組みもあって、ひとつの作品、ひとつのIP、アニメタイトルで5~6キャラ出すということが実現できています。

 

スタンダードな「POP UP PARADE」シリーズ

──パーツ分割や塗装の効率化なども低価格の秘密でしょうか?

 

鳥居 もちろんパーツが増えたり、1つひとつが大きくなったり複雑になればなるほど、金型を増やしたり工夫が必要になります。そこはもちろん価格を抑える努力はするんですが、極端にコストカットすることはせずに、基本的には一般的なフィギュアと同じように開発しております。

あとは、「POP UP PARADE」シリーズだけで利益を上げようという考えはあまりありません。ご時世的なこともあるんですが、コロナ禍という状況で日本国内でも海外でも、おうち時間が増えてアニメを楽しむ方が増加しました。アニメを観ているとフィギュアが欲しくなります。そこで、初めてのフィギュアを何にしようかなと考えている方に向けて、「POP UP PARADE」を提案したいと思っています。そういう方にお手頃価格の商品を提案させていただき、そこからステップアップしていただけたら会社としてはありがたいわけです。

 

──フィギュア初心者向けのエントリーモデルという性格もあるわけですね。グッドスマイルカンパニーという、ホビー全般を扱っている企業だからこそできる戦略ですね。

 

鳥居 そうですね。クリエイティビティをもっと求める、というお客様にはスタチューフィギュアにステップアップしていただきたいですし、1タイトルでにぎやかに集めたい方は「POP UP PARADE」を楽しんでね、というプレゼンをさせていただいています。

 

国、地域によって異なる人気キャラクター

──ラインアップについても、初音ミクみたいに、グッドスマイルカンパニーさんが得意とするキャラや人気アニメのキャラクターだけではないのが印象的です。たとえば「キャプテン翼」のような往年の人気キャラなど、多彩なキャラクターがラインアップしています。

 

鳥居 ターゲットは日本ばかりではありません。というのも先ほど言った通り、世界中で日本のアニメを見る習慣が定着してきて、フィギュアユーザーもそれにともなって増えてきています。その中で、日本で人気の作品、中国で人気の作品、ヨーロッパで人気の作品など、地域によって特色が異なるんです。それぞれに向けて、たとえばヨーロッパのユーザーには圧倒的な人気を誇る「キャプテン翼」を提案したり、同様に北米の方に向けて、クラシカルだけど今も人気だからこれをやってみようと、といったことを意識しながら。でも、とにかくワールドワイドに、全方位に「POP UP PARADE」を届けるということを意識しています。

 

──そこまで海外で日本のフィギュア人気が高まっているとは思いませんでした。

 

鳥居 私、入社して12年目ですが、入社した当時は8:2とか7:3くらいで日本市場向け商品が多かったのが、今はもう逆転してますね。ブランドや作品にもよりますが、そういうのも普通になってきてます。

 

──地域ごとに人気キャラにどういう特徴がありますか?

 

鳥居 やっぱりアジア圏は、かわいい女の子をかわいく作るのが肝かなと思います。いっぽうで、北米ヨーロッパでは方向性としてはクラシカルな、古典的な作品でかっこいい男の子などが人気高めですね。最近は海外で日本の昔のアニメを実写化、という文化の増加にともなって、そこから作品が好きになってアニメも見てみよう、という方も多いですね。そこで人気に火がついて、そのアニメのフィギュアもどうですかと提案させていただくこともあります。今はそういう文化が追い風となっています。低価格というのも、最初に選ぶフィギュアとしてフックになっていると思います。

 

──個人的に「バキ」のラインアップの充実ぶりが気になるところです。

 

鳥居 それはもう、僕の趣味で……。

 

──「POP UP PARADE」シリーズには、鳥居さんご自身の趣味も反映されていますか?

 

鳥居 反映されてますね。社内に対してはこういう意図があって、こういうアプローチをします、と説明しているんですけど……(苦笑)。

 

──今まで一番ヒットした商品、盛り上がった商品を教えていただけますか?

 

鳥居 わかりやすく出たのはVTuberですね。ホロライブさんなどはもう、非常に人気が高いです。ここから見えるのは、ホロライブが好きな客層とPOP UP PARADEの価格帯がマッチしているのかなというところですね。

 

──ということは、「POP UP PARADE」には市場リサーチのツールという側面も。

 

鳥居 はい。アイテムを企画する際は「このアイテムはこういった層がターゲットなので、どれくらい売れるか」という内容をリサーチしたり、予測したりします。

それが結果的にダメだったら、この客層は「POP UP PARADE」にはいなかった。スケールモデルのほうがよかったかもしれない。もし売れたら客層にマッチしていたかもしれない。だからもう少しシリーズを出していきましょう、という感じですね。

ただ、ダメだったからそのシリーズをもうやらないというわけではなく、新しい仮説を立てて改めて挑戦させていただいています。おそらくお客様の出入りも激しいシリーズだと思うので、開発し続けて、常に新しいお客様を開拓していきたいと思っています。

 

新ラインアップとなるLサイズ商品「初音ミク 初音ミク 愛されなくても君がいるVer. L」

──最近は異なるサイズの商品も出てきたり、価格が3,900円から改定されることが発表されたりと新たな動きがいろいろあります。

 

鳥居 ちょうど最近、3,900円をやめさせていただきますとアナウンスしたんですが、そこには、低価格商品ゆえに、社会状況から極端に影響を受けやすいという事情があります。これまでは、基本的にはそんなに大きな利益を取らないという路線を取っていたんですが、赤字しか出ないというのであればさすがに続けることができないので、苦渋の判断でした。

ただ、お客様に満足していただけるクオリティは、今まで以上に追求していく必要があるとうことは痛感しております。ペースを落とさずにクオリティを維持していく。あるいはよりクオリティを追求していくことが必要かなと思います。

いっぽうで別の価格帯ということになると、今、ひと回り大きい7~8分の1くらいのLサイズと、だいたい4分の1サイズの巨大なXLサイズを作っております。「POP UP PARADE」からフィギュアに挑戦。次にスタチューというお話をさせていただきましたが、ステップアップの導線をもうひとつ「POP UP PARADE」内で作り上げたいなと考えております。

スタチューフィギュアというと、15,000円とか20,000円くらい──「POP UP PARADE」とはちょっと桁が違うんですよね。そこで、その間を「POP UP PARADE」シリーズで埋められるのではないかと思っております。というわけで、「POP UP PARADE」Lサイズは一般的なスタチューフィギュアよりは安くなってます。高価格フィギュアの満足度のある、ワンステップ上の「POP UP PARADE」となります。

こちらも新ラインアップとなるXLサイズ商品「FAIRY TAIL」ファイナルシリーズ ルーシィ ハートフィリア XL

そして、「このキャラが好きで好きで仕方がない」。そんなあなたにはXLサイズはどうでしょうか、と。

このように、あらゆるフィギュア文化を「POP UP PARADE」で埋め尽くしていきたいと思っております。

Lサイズ、XLサイズともに、これまで同様、価格は揃えていこうと思っています。この後も、低価格でお客様にフィギュアをお届けできるように調整中です。

 

──XLサイズというと、展示イベントで見たエレン・イェーガーには本当に圧倒されました。

 

鳥居 あれは大きく作りすぎてしまいました(笑)。グッドスマイルカンパニーの中でも大きいほうですね。間違えて、あの高さのしゃがみポーズで作っちゃったので、仮に立たせたらもっと大きくなっちゃうんですよ。でもあのサイズのまま出せるように、そちらも調整しているところです。

 

「進撃の巨人」エレン・イェーガー 進撃の巨人Ver.XL

スマホ時代にあわせて意識するポイント

──鳥居さんがフィギュアを手がけるうえで気を付けているところは、どんなところでしょうか。

 

鳥居 もとの絵に似せるというのは当然として、最近はスマホが定着してきたこともあって、スッスッと写真をスライドさせているところにバストアップがバーンと出た時に、どれだけお客様の手を止められるかを気にしています。目線の振りをどうしましょうとか、顔の面どりはどこまで追いかけられるのか。造形の稜線をどこで切るのか。写真の時、影をどこに入れるのか。というところを、「POP UP PARADE」では特別に意識しています。「POP UP PARADE」だけではなく、フィギュア全般を見る際に、そこに留意されると面白いと思いますよ。

 

──ポーズはいかがでしょうか?

 

鳥居 「POP UP PARADE」では初めてフィギュアを買うお客様というのが、ひとつのターゲットになるんですが、そのお客様が違和感を感じないようになるべくなじみ深いポーズでお客様に提案したいと思っています。

なので、キービジュアルやアニメのアイキャッチで取っているような、見る機会が最も多いポーズ。あるいはそのポーズを取っている時間は短いけど、印象に残っているポーズにしたいですね。

 

──今後、鳥居さんが挑戦したいことを教えてください。

 

鳥居 「POP UP PARADE」シリーズの展開としては、今後、さらに加速していく予定です。そのうえで、これまでは定番シリーズと古典を中心に「POP UP PARADE」は攻めていたんですが、より新作のアニメとかIPのスピード感に合わせて展開していきたいと思っています。超大ヒットIPというのが、これまで以上の頻度で生まれてきています。そのスピード感にあわせた展開ができるブランドにしていく必要があるなと。今はその仕組み作りをしています。

ファンにとってはアニメを観て、「このキャラが好きだな」「欲しい」と思った時に、その場で購入ができるような環境にしたいなと思っています。

 

今後の発売が予定されている「FAIRY TALE」ファイナルシリーズ エルザ・スカーレット XL

──今後もいい意味で雑多な商品展開に期待しています。

 

鳥居 ありがとうございます。個人的には、XLサイズの「エレン・イェーガー」は、XLサイズであることに意味があると思っています。ボリュームやキャラクターに意味がある商品、ということは考えていきたいと思います。それはLサイズも同様で、いろんな方法を提案して市場に聞いていきたいと思っています。

 

■POP UP PARADE 初音ミク 愛されなくても君がいるVer. L
・メーカー:グッドスマイルカンパニー
・価格:8,800円 (税込)
・発売時期:2022年10月
・仕様:プラスチック製 塗装済み完成品
・ノンスケール
・専用台座付属
・全高:約240mm
・原型制作:ヲタクミト(knead)
・彩色:namoji

■POP UP PARADE ルーシィ・ハートフィリア XL
・メーカー:グッドスマイルカンパニー
・価格:25,000円 (税込)
・発売時期:2022年11月
・仕様:プラスチック製 塗装済み完成品
・ノンスケール
・専用台座付属
・全高:約400mm
・原型制作:mayaka。
・彩色:ともふみ(WATANA BOX)

 
©真島ヒロ・講談社/フェアリーテイル製作委員会・テレビ東京 ®KODANSHA
© Crypton Future Media, INC. www.piapro.net

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