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ホールでレコーディングできたからこその音になりました(酒井)
── 「For the Land That I Come From (Ctrigall Drinking Song)」(Disc-2の13曲目)は原曲がボーカル曲なんですよね。クトリガル(劇中の架空の国名)の酒場の歌ということで、男声ボーカルによる楽しげな曲になっていました。 エバン 心情を表現したエモーショナルな曲が多めのアルバムになるので、軽快なこの曲を入れることで、リスナーも心の休憩ができるかなという狙いもありました。
酒井 演奏者の佐藤さんも、この曲を弾くことで発散できるものがあるかなと思って、一番最後にレコーディングしました(笑)。
エバン 酒場で演奏されるのをイメージして作ったので、この曲に限っては譜面通りにかっちり弾く必要もなくて。佐藤さんに気持ちよくレコーディングを終えていただくのに、ぴったりだったと思います。
酒井 アレンジも何も迷うことなく、楽しんでできました。もう1曲、Disc-2の最後に入っている「Softly Sing to Me (Magnolia Family Lullaby)」 と「The Love That Binds Us(Believe in…)」も原曲はボーカル曲で、アレンジしやすかったです。歌モノはやっぱりメロディとコードの役割が明確なのでやりやすいですね。
── 今まで何度もお名前が出た佐藤浩一さんの演奏について、お2人のご感想を改めて聞かせてください。 酒井 曲数が多い中、高い集中力で演奏してくださいました。ホールで直に演奏を聴いていると、繊細な弱い音を本当に美しく響かせることができるピアニストさんだなと思って、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のやさしく繊細な楽曲との相性のよさを感じました。今回はピアノソロのアルバムということで、リスナーのみなさんにも佐藤さんのよさをダイレクトに感じていただけると思います。
── 今回のレコーディングは、スタジオではなく、普段はお客さんも入れるホールでおこなわれたんですよね。 エバン 「所沢市民文化センター ミューズ」というホールでレコーディングしました。ホールの規模的に、求めているサウンドに合っていたのが、そこでした。
酒井 ホールのピアノだからこその、いいサウンドが作れたかなと思います。演奏を終えた佐藤さんから「ホールの響きの中で演奏されることを念頭に置いたアレンジだと感じた」とおっしゃっていただけたのがすごくうれしかったんですけど、佐藤さんもホールの響きをとても大切にしながら演奏してくださったと思います。
エバン レコーディングは2日間、朝から晩までかけて、行われました。いつもだったら、この曲はもう一度録り直したほうがいい、ここはこう弾いてもらったほうがいいという判断をひとりでしているんですが、今回は酒井さんのディレクションも入ったので気が楽になって、いつもより落ち着いた気持ちでレコーディングできました(笑)。ずっとひとりで演奏していましたし、当日はけっこう寒かったので、一番大変だったのは佐藤さんだったと思います。
酒井 エアコンの音が入ってしまうので、レコーディング中は暖房を付けることができないんです。
エバン 休憩のときだけ暖房を付けて、手を温めていただいて。
酒井 佐藤さんのご尽力があって、とてもいいアルバムができました。
── 最後に、リスナーへのメッセージをお願いします。 酒井 エバンさんが作った原曲をお好きな方がたくさんいらっしゃると思うので、楽曲をまた違った形で新鮮に楽しんで、新しい発見をしていただけたらうれしいです。そして、またサントラを聴いてアニメもご覧になって、という楽しみ方をしていただきたいなと思います。
エバン 酒井さんのピアノアレンジでも、自分がここを生かしたいと思った部分が全部生かされているので、じっくり楽しんでいただけたらうれしいです。もし今回の譜面が発売されたら、CDを聴きながら、ご自分でも演奏に挑戦してみてください。
── 余談ですが、エバンさんはNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の劇伴でも、酒井さんと一緒にお仕事されているんですよね。 エバン はい、また譜面を全部起こしていただいて、販売用のメインテーマのピアノアレンジもやっていただきました。大変お世話になってます(笑)。
プロフィール
Evan Call(エバン・コール)/アメリカ合衆国カリフォルニア州出身。バークリー音楽大学・映画音楽作曲科を卒業。劇伴を手掛けたアニメ作品に「天晴爛漫!」、「ハクメイとミコチ」、「ジョゼと虎と魚たち」など。現在放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の音楽を担当。
酒井麻由佳(さかい まゆか)/大阪府出身。4歳よりピアノ、6歳より作曲を始める。大阪教育大学・教養学科芸術専攻音楽コース(作曲)を経て、東京藝術大学・音楽学部作曲科を卒業。映画「銀魂2」、映画「僕に、会いたかった」のオーケストラアレンジ(一部)とピアノ演奏を担当。映画「ヲタクに恋は難しい」の劇伴を瀬川英史、日向萌と共作。2022年2月に開催された「鎌倉殿の13人」スペシャルコンサートの編曲を担当。
CDデータ
■「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」ピアノアレンジアルバム Though Seasons Change ~Violet Evergarden Piano Memories
バンダイナムコアーツ/2022年3月30日発売
CD2枚組/3,850円(税込)
〈収録曲〉
【Disc-1】
01. Theme of Violet Evergarden
02. A Doll's Beginning
03. A Simple Mission
04. Another Sunny Day
05. Rust
06. The Ultimate Price
07. The Long Night
08. An Admirable Doll
09. Back in Business
10. Across the Violet Sky
11. Wherever You Are, Wherever You May Be
12. Torment
13. Fractured Heart
14. Always Watching Over You
15. Never Coming Back
16. Letters From Heaven
17. What It Means To Love
18. One Last Message
19. The Love That Binds Us
20. The Birth of a Legend
21. To The Ends of Our World
22. Violet's Letter
【Disc-2】
01. Discovering the Past
02. The Legacy of Violet Evergarden
03. Violet and Isabella
04. A New Era Begins
05. Strangeling
06. Ink to Paper
07. A Place to Call Home
08. A Bond Between Sisters
09. Those Words You Spoke to Me
10. The Voice in My Heart
11. Yuris' Confession
12. As the Days Pass Us By
13. For the Land That I Come From (Ctrigall Drinking Song)
14. Beyond These Waves
15. The Hardships of Gilbert Bougainvillea
16. Tears in the Rain
17. A Young Boy's Last Wish
18. Live on for Me
19. Violet's Final Letter
20. Echo Through Eternity
21. Her Spirit Lives On
22. Softly Sing to Me (Magnolia Family Lullaby)
(取材・文/鈴木隆詩)
(C) 暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会