女性型ロボプラモ「機動動姫 MoMo」をめぐる“思春期とオタク文化の蜜月時代”を、デザイナーであり 原作者の島本娼弘氏が熱く語る!【ホビー業界インサイド第78回】

2022年02月23日 10:000

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「市場のニーズ」などに左右されず、自由で混沌とした状況を楽しむ


── ところで、クラウドファンディングでは「機動動姫 MoMo」は大勢の支持を集めましたよね。やはり、男性ファンの方が多いのですか?

島本 それが、なんと20%近くが女性の支持者でした。こいうったメカ系プラモデルとしては異例なデータと思います。ただし、その中には、設定や戦闘にはあまり興味がなく、等身大の家庭用メイドロボと思い込んでいる方もおられました。自分は、それでもまったく問題なしと思っています。個人の解釈は自由ですし、MoMoがいて洗濯や掃除をしてくれる家、なんてかわいいですよね。
MoMoは一応、「巨大戦闘ロボット」という設定ではありますが、それをユーザーに押し付けるつもりはないんです。手軽で、作る楽しみのあるプラモデルですので、色も形も設定も、ユーザーが好きなように変えてもらってOKと考えています。
「MoMo」のキットに頭のパーツが2つ入っているのは、実は改造してほしいからなのです。「機動戦士ガンダム」で言うと、アムロの乗ったガンダムだけでなく、ガンキャノンやジムがいるから世界観が広がるわけですよね。今回の「MoMo」は量産機であり、たくさんあるという設定ですので、キットを購入してくれたユーザーさんに自由に想像してもらい、自分の好きな機体にして頂けたらうれしいです。
あと少々話はずれますが、先のPVC版のおかげで、世界にMoMoのファンが増えました。今でも、さまざまな国からメールを頂くことがあります。「変態~フェティッシュな趣味」というものは、ある程度豊かで平和な先進国に多いのかもしれません(笑)……たとえばアメリカ、フランス、ドイツとか。

── ドイツは、映画でも倒錯したマニアックな内容のものがあったりしますね。

島本 実は、自分が好きなクリエイターのご夫婦がいるのです。お城のような古い工房にご夫婦2人で住まわれていて、エロティックなデザインの鎧や金属製のバレエシューズなどを自分たちでデザインして制作されているのです。
そこで誰にも邪魔されず、死ぬまでずっと作り続ける……正直あれは、クリエイターとして理想の生き方のひとつではないかと思い、今でも憧れています。
自分はニッチな分野を狙っているつもりではありますが、グローバルニッチと言って、世界中のニッチな趣味の人たちを集めると、そこそこの数になります。そうすれば、そこそこ食べていけるのではと……。海外では設定で縛ることはせず、ひとつのフェティッシュなフィギュアとして「MoMo」を展開することも考えています。

── 逆に、日本の若い人たちには受けないのでしょうか?

島本 今はSNSのおかげもあって、若いオタクの人たちと話す機会も増えました。今の若いオタクの方々が羨ましいですよ。彼らは友だちも彼女もいて、あっけらかんと楽しんでいますね。我々の世代は、現実とうまく折り合わないハズレ者が、「逃避」としてオタク趣味に没頭していて、その背徳感がいいスパイスになっていました。今のようにインターネットで手軽にエロいものを見られませんでしたから、テレビで見ているアニメがすべての情報源と言ってもいいぐらい。「超電磁ロボ コン・バトラーV」の南原ちずるのシャワーシーン、「科学忍者隊ガッチャマン」の白鳥のジュンのミニスカートとブーツ、短いマント……。トラウマになったと言ってもいいほど、刺激的でした。

── そうしたエッチな描写は、マーケティングから出てきたものではなかったような気がします。

島本 完全にプロダクトアウトで、そのアニメをつくっている大人たちが、それまでの人生で何に感動してきたかが、描写に表われていたと思います。クリエイターの作家性そのままを見せられて我々の世代は育ててもらいました。
今でこそ、セクシーなお姉さんのフィギュアや、それこそパンツの皺まで作り込んである立体物が堂々と売られていますが、それもここ十数年で市民権を得たものだと思います。自分自身、エロやフェチは人類共通の文化であると考えているのですが、あんまり白昼堂々と人目に晒すより、多少「後ろ暗いもの」としておそるおそる扱ったほうが、ありがたみが増すと考えています。
それに、人のフェチや性癖の話って、少しでも合わないと聞くに堪えないものですよね。ですから、あまり自分の趣味を出しすぎないよう、「MoMo」は控えめに料理したつもりなんです。「マジンガーZ」に出てきた女性型ロボの「アフロダイA(エース)」ですとか、空山基さんのセクシーロボット、映画「メトロポリス」の「マリア」など、自分が影響を受けてきたもののパッチワークです。まったく新しい未知のものより、「どこかで見たことがあるな」と思ってもらえたほうが、逆にいいのではないかと思いました。割と、何にでもフィットするようにデザインしました。ギリギリ、家の玄関に飾ってもアートだと解釈してもらえる線を狙ったつもりです。
……と言いつつ、自分がMoMoに込めたエロティシズムを敏感に見抜く方もおられて、その方は女性だったのですが、「島本さん、世に出してはいけないものを作ってしまいましたね」などと言いつつニヤリとされ、冷や汗をかいたこともあります(苦笑)。


── 今後の展開を教えてください。

島本 可能であれば、「MoMo」のバリエーションというか改造タイプを発売したいと考えています。全部の金型を変えることは難しいのですが、新規の部分を増やすとして、髪型と武器、あとは胸のサイズ等ですね。
まずはユーザーさんの声を聞きながら、数を絞った低コストにて、レジン製の改造パーツ付きを数量限定で……と、そんなスタイルも検討中です。それから、背景になるストーリーを何らかの形で展開させることができればいいな、と考えています。あとは、今ちょっと気になっているソフトビニールで何か出してみたいです。

── 最後に読者へのメッセージをお願いします。

島本 サラリーマンだった頃は、大勢のスタッフと一緒にチームワークで、大規模なものを作っておりました。そうなると動くお金も大きくなるので失敗は許されず、そのためにユーザー調査を行いながら、じっくりと時間をかけて。マーケットインとか顧客満足度とか市場ニーズの把握など……。大企業の中で商業製品を作る以上、それらはもちろん大切です。しかし、なかなかクリエイターとしての満足感が得られずフラストレーションが溜まっておりました。
今はまったく正反対に、ひとりで、お金をかけず、マイペースで、自分のやりたいことをやるようにしています。
自分は子どものころからオタクで、今もオタク。できればこのまま、死ぬまでオタクでいたい。危なっかしい混沌とした状況かもしれませんが、このスタイルが好きなのだと思います。
……最後に、支援者&ユーザーの皆様、「MoMo」に関心を持って頂き、ありがとうございます。しがない個人の作ったマイナーキャラではありますが、細く長く、じっくりと展開してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。


(取材:アキバ総研編集部)

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