女性型ロボプラモ「機動動姫 MoMo」をめぐる“思春期とオタク文化の蜜月時代”を、デザイナーであり 原作者の島本娼弘氏が熱く語る!【ホビー業界インサイド第78回】

2022年02月23日 10:000

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「女性の形をしたロボット」に込められた、背徳的なエロティシズム


── 「機動動姫 MoMo」のキットは、エムアイモルデさん(https://akiba-souken.com/article/50996/)の設計だそうですね。

島本 はい、エムアイモルデさんは個人作家に理解のある金型メーカーで、技術だけでなく情熱もあります。何度も設計をやり直してくれました。デザインに関しては、2Dの図面だけでは微妙な形状や雰囲気が伝わりづらいため、こちらで用意した原型をもとに何度も再設計。プラモデルのパーツとして成立させるための内部構造や分割作業などを経てようやく完成に至りました。

── 武装のカスタマイズを前提にした美少女プラモデルは、それこそ群雄割拠で乱立していますよね。

島本 はい、最初に美少女プラモデルが流行りはじめたときは「私のやりたいこととぶつかってしまうのではないか」と危惧しましたが、ほとんどは明るくかわいい人間型のキャラクターなので、硬質でフェティッシュな「MoMo」は住み分けできていると思います。ただ、美少女プラモデルの中には、胸が強調してあったり最初からパンツが見えていたりするデザインものもあり……そうではなく、冷たい戦闘マシーンにしたほうがかえってエロさ・淫靡さが出るのに……と、個人的には思います。

── 実際に「MoMo」のキットを組んでみると、怪しいほどフェティッシュな造形ですよね。

島本 ありがとうございます。……今回は、自分のフェチな部分と言うか、恥ずかしい言葉で言うなら「性癖」を、臆せず詰め込んだ作品とさせて頂きました。
自分は思春期というか第二次成長の訪れるタイミングで、オタク文化に触れてしまいました。異性・好きな子と言えば、クラスの誰々……ではなくて、漫画やアニメに出てくるキャラクターでした。当時のアニメ雑誌には、女性キャラのパンチラやシャワーシーンが載ることもあり、今と違って情報の少ない当時は貴重な宝物でした。ガンプラの改造も流行っていて自分もハマりましたが、ロボやメカのラインナップに加え、キャラクターのプラモもポツポツ出てきました。なので、クラスの友だちにバレないように何駅も離れた模型店へ自転車で行き「伝説巨神イデオン」のカララ・アジバのプラモデルを買い、「これはデッサンの勉強のためなんだ」と何度も自分に言い聞かせながら、パーツを削って改造していました。スカートにするとパンツまで見えることになってしまい、そこまでの度胸はなかったために妥協してジーンズ姿で……。自身の理想の女性像をプラモデルで具現化しようとしていたわけですが、「自分はいけないことをしている・道を踏み外している」という背徳感が常にありました。


── 「うる星やつら」のラムちゃんのプラモデルは、改造しなかったのですか?

島本 もちろんラムちゃんのプラモデルは、本命として一応買ってはあったのです。が、これだけは 触れてはいけない物のような気がして、タンスの上に封印していました。あれは、なんといっても「セーラー服」ですし、男である自分が触れてはならぬ、中を見てはいけない……と。でもたまに箱を少しだけ開けてチラと中を覗き、ふともものパーツを見てはドキドキして楽しむ。いつか、自身の技術力が上がったときに手を出そうと誓って……恥ずかしい青春・黒歴史です。
当時、もちろん実際の女性に興味はあるんだけど、女性は手に入らない存在です。仮に女性と親しく付き合ったとしても、それは「手に入れる」ことではないと思います。ですから、生身の女性の代わりに女性の美しい部分を抽出し、凝縮した立体を作るわけです。SMとかボンデージといった性的趣味の世界がありますが、本来は自由で美しい女性を縛りつけて自由を奪う、固く閉じ込められた状態に置くことではかなさや美しさが増す……ということだと思います。私の場合、その「縛る」という部分が「ロボ化する」行為なのでしょう。

── ロボットといえば、「マジンガーZ」で主人公ロボが痛めつけられてボロボロに壊されてしまう姿に興奮した記憶があるのですが……。

島本 私は、「タイムボカン」で主人公メカのメカブトンが攻撃されて羽根がとれ、中身のメカが見えてしまうシーンを、いつも色っぽいと感じていました。メカでなくとも、気高い女戦士がピンチに陥るシーンが好きな方はいるでしょう。痛めつけられて、間一髪で抜け出すシチュエーションにドキドキしてしまう。かつて、ギャルゲーで妹ブームがありましたが、妹は肉体関係を持ってはいけない禁忌の関係だから、萌えるのではないでしょうか。私は、ギャルゲーでも主人公と最初から仲よしの幼なじみなんかより、むしろ主人公を嫌っている冷たい女の子を狙うのが好きでした。キャラクター設定でも女教師や女性警察官など、自分とは関係なさそうなお堅い職業にエロティシズムを感じたりします。自分の場合、そうした嗜好のひとつが「ロボ」なんです。強力な敵と戦い、傷ついて壊れるけれど、だけどギリギリで助かってまた来週……というパターンに惹かれてしまいます。

── 「テクノポリス21C」というアニメに、スキャニーという女性型ロボットが出てきます。宮武一貴さんのデザインなのですが……。

島本 もちろん大好きでした。しかし当時、スキャニーのプラモデルは一線を越えてしまう気がして、買うことができませんでした。スキャニーは、顔面が複眼のようになったロボットですよね。スキャニーの顔面が美少女のようなデザインだったら、そこまで魅力的ではなかったかもしれません。「せっかく女性型ロボなのに、顔が無機質な複眼である」、その異形さがかえって女性らしさを引き立てていたのでは、と思います。

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