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つくる人にとって、見る人にとって、どんなアニメーションが理想なのか
── ところで、井上さんは仕事のスピードがものすごく速いと、あちこちで聞くのですが……。 井上 いやあ、そんなことはないはずです。「魔女の宅急便」 (1989年)に原画で参加したときは、作監の近藤喜文さんに「皆さん、遅すぎます」と言われてしまったことがあるくらいです。そんな僕が「速い」と言われるのは、周りのペースが落ちているせいでしょう。いま僕は60代だけど、30~40代のころの自分のペースを落としていないだけなんです。僕の若いころは、もっと速い人たちが大勢いて、「仕事はいくら上手くても早くなければ意味がない」という時代に育ちました。自分のペースを維持しながら、理想のアニメを追求した結果にすぎません。
── 目標だった人はいますか? 井上 たくさんいますが、上手さと速さを兼ねそなえた人という意味では、何といってもなかむらたかしさんです。なかむらさんは本当に仕事が速くて、「黄金戦士ゴールドライタン」などではひとりで1本分の原画を何度も描かれました。本人に確認しましたが、1話分の原画を7〜8週間で描いたそうです。全盛期の宮崎駿さんも1週間でテレビシリーズ1本分のレイアウトをひとりで描いたとか、そういう凄い人たちを実際に知っていて、今でも追いつづけているからこそ、僕はスピードを維持できているのでしょう。現在の若手にとっては、神話みたいな感覚ではないでしょうか。でも、今はいい時代で、そういった“神話時代”の作品も簡単に見ることができます。「これを2か月で描いた人がいるのか」と意識すれば、同じ人間だからできるはずだ……と、僕は思ってしまうんです。ぜひ若手にも、そういった気持ちで昔の作品を見てほしいし、挑んでほしいですね。
── 井上さんの仕事のスタイルって、ありますか? 井上 仕事を選ばないことですね。「このシーンを描きたいな」と思っても、自分からは口にしません。「やってくれ」と言われたカットを描いているだけです。登場人物が少なくて華のあるシーンをやりたいとしても、そんなことはおくびにも出さないようにしています。キャラクターデザインも、ほとんどやらないですね。アニメの作画をやりたいだけで、描きたい絵があるわけではないんです。そういう意味では吉田健一さんや結城信輝さんなどとは対照的かもしれません。絵描き的な志向はなくて、アニメーションをやりたいから絵を描いているだけです。職人的な仕事が好きで、アニメでなければ竹細工や木工細工などをやりたいと思っています。
── 今回の「地球外少年少女」に参加したことは、意義がありましたか? 井上 本当に意義があったかどうかは、見る人が決めるものではないでしょうか。ただ、宇宙空間は、手が届きそうで届かない世界です。その世界の楽しさを、マンガ映画を通じて体験することには、大きな意義があると信じたいです。
(取材・文/廣田恵介)
作品情報
オリジナルアニメ「地球外少年少女」
・2022年1月28日(金)前編、2月11日(金)後編、新宿ピカデリーほかにて各2週限定劇場上映
・劇場公開限定版のBlu-ray & DVDが、エイベックス・ピクチャーズより2月11日発売
・Netflixにて世界同時配信
<スタッフ>原作・脚本・監督:磯光雄
キャラクターデザイン:吉田健一
メインアニメーター:井上俊之
美術監督:池田裕輔
色彩設計:田中美穂
音楽:石塚玲依
音響監督:清水洋史
制作:Production +h.
配給:アスミック・エース/エイベックス・ピクチャーズ
製作:地球外少年少女製作委員会
<キャスト>相模登矢:藤原夏海
七瀬・バイコヌール・心葉:和氣あず未
筑波大洋:小野賢章
美笹美衣奈:赤﨑千夏
種子島博士:小林由美子
那沙・ヒューストン:伊瀬茉莉也 ほか
<主題歌>春猿火(KAMITSUBAKI RECORD)「Oarana」
作詞・作曲:Vincent Diamante
<上映劇場>【東京】新宿ピカデリー・MOVIX亀有・立川シネマシティ
【神奈川】川崎チネチッタ
【千葉】京成ローザ⑩
【埼玉】MOVIXさいたま
【愛知】ミッドランドスクエアシネマ
【大阪】なんばパークスシネマ
【兵庫】MOVIXあまがさき
【京都】MOVIX京都
<配信>Netflixにて世界同時配信(1-6話全話一挙配信)
http://www.netflix.com/orbital-children
(C) MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会