愛憎入り乱れる「パトレイバー」談議に花が咲く! 土浦市「TV-劇パト2+展」開催記念「大林隆介(後藤喜一役)×榊原良子(南雲しのぶ役) 有料オンライン隊長トークショー」レポート!

2022年02月05日 12:000

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「機動警察パトレイバー 30周年突破記念 in土浦『TV-劇パト2+』展」開催を記念して、2022年1月15日(土)、大林隆介さん(後藤喜一役)、榊原良子さん(南雲しのぶ役)を迎えてのトークイベントがオンラインで開催された。

本トークイベントは、2022年1月14日(土)~2月13日(日)の期間、土浦市市民ギャラリーにて開催中の「機動警察パトレイバー 30周年突破記念 in土浦『TV-劇パト2+』展」を記念して催されたもの。

2018年末に池袋マルイで開催された「機動警察パトレイバー30周年記念展」の際に、大好評を博した隊長トークショーの続編ということで、「パトレイバー」の人気キャラクターを演じたキャストのお2人が3年ぶりにトークを繰り広げた。

司会進行を務めたのは、ニッポン放送の吉田尚紀アナウンサー。中学生時代に「パトレイバー」に出会い、人生最高のアニメに本作をあげるフリークの吉田アナが、古参ファンならではのかゆいところに手の届くトークでイベントを盛り上げた。

また、視聴者もチャットに質問やコメントを投稿する形で番組に参加できるということで、さまざまな飛び交う大盛況のイベントとなった。

今回は、その模様をレポートする。

 

 

「パトレイバー」との出会い

30年来のパトレイバーファンという吉田アナ。彼はニッポン放送入社後、最初に受け持った仕事が、2002年公開の映画「WXIII 機動警察パトレイバー」にあわせて放送された「オールナイトニッポン」だったそうだ。入社後、ニュース読みがうまくいかず、できる仕事がなかったという吉田アナは、「パトレイバー」のことならしゃべれる、ということで仕事を振られたそうだが、この番組がきっかけとなり「アニメのことをしゃべれるアナウンサー」として一躍知名度をあげるきっかけとなり、今の仕事につながっているとのこと。「アニメファンとして30年救われたし、アナウンサーとしても20年救われた」と、「パトレイバー」への思いを熱く語る。

 

そんな熱烈な「パトレイバー」フリークである吉田アナの話を聞いて、嬉しそうに笑みをこぼす大林さんと榊原さん。このように非常になごやかかつ、熱い思いがたぎるスタジオで配信がスタートした。

 

 

お2人が初めてメインキャラクターとして共演したのが、「機動警察パトレイバー」の初期OVAシリーズ(アーリーデイズ)である。

当時は今みたいにキャラ表がなく、台本も現場でもらうというものだったそうで、大林さんの「パトレイバー」とのファーストコンタクトは「スタジオに行って、マネージャーから近未来の警察ものという話を聞いただけ」。

そんなわけでキャラクターを作りこむ時間もなかったそうだが、「ただ警察の隊長だからって、マッチョでビシビシしたキャラクターは嫌だなと思っていた。それは先入観であって。それが僕の考えた、へらへらした感じでもいけるかなと思った」のが、後藤隊長の最初のイメージだったそうだ。

 

南雲しのぶ隊長を演じた榊原さんは、事務所から「有能で男性の上に立つ女性です」と事前に情報をもらっていたそうだが、それまでに「風の谷のナウシカ」のクシャナや「機動戦士Zガンダム」のハマーン・カーンなどカリスマ性のある女性リーダー役を複数演じてきたこともあり、「それって今までやりすぎてない? 違うキャラをやりたいという時期だったの」と振り返る。

「でもぺーぺーなので、声をかけていただいたらやったほうがいいと思っていて。だから最初は台本を読んでもセリフが堅い」と初期の南雲さんの演技を分析する。そのうえで、南雲さんをどのように演じようと思っていたかを尋ねられると、「ちょうど自分も少しずついろいろな(業界の)人と話ができるようになったり、友人がキャリアウーマンでがんばっている話を聞いていた。男女雇用機会均等法も施行される時期だったので、これから先は上司や部下の男性からも女性からも、素敵だと思われる女性を考えていったらどうかなと話していたんです。私もちょうど30代になったので、原作の(元のキャラクターの)イメージに加味してどんどんふくらませて、役と一緒に自分も大人の女性になれたらいいな、という風に演じた」という具合に、キャリアを重ねていく榊原さん自身と南雲しのぶというキャリアウーマンの人生を重ね合わせるようにキャラクターを作り上げていったという。

 



探りながらキャラクターをつかんでいった初期OVA(アーリーデイズ)

おのおのの思いを胸に収録に臨んだ「アーリーデイズ」第1話だが、完成した映像を見たお2人の感想は、意外にも「ストーリー全体が漠然としていたので、最初は『うーん』という感じ」(榊原)、「先の展開もわからないし、どういう展開をしていくのか、という気持ちが強かった」(大林)といったものだったという。

というのも、「原作があって、テレビアニメの人気が出てからOVA化、映画化という普通のパターンじゃなかったから」と大林さん。当時としては前例のないメディアミックス作品ゆえの手探り感が強かったそうだが、「押井さんも認めてくれたし、音響監督の斯波さんがOK出してくれたからそれを信じして、とりあえず1シリーズをやろう」という気持ちでOVA全6巻を収録したそうだ。

対する榊原さんは、「個人的に、同じ役者として大林さんが演じる後藤隊長に興味があった。後藤さんの冗談をかわしたり、ちょっと驚かせてそれを楽しめる大人の南雲さんになりたいなと思って、そこに向かっていった。意味深な答えをよくしてましたよね、私。挑発するつもりでいろんなことを言っていた」「たとえば南雲さんが『それでいいんじゃない?』って言うシーンは、ストレートに『いいんじゃない?』っていうんじゃなくて、ちょっと斜めから『いいんじゃない?』っていう感じ。そういう風に言うと後藤さんが『ん?』ってなるじゃないですか。その後藤さんの『ん?』っていうリアクションも魅力的じゃないですか。それを引っ張り出したいと思っていた」とコメント。

確かに振り返れば、南雲さんの言い回しはどこか後藤隊長をあおるようなニュアンスが含まれていたような気がする。

 



大ヒットを自覚した「機動警察パトレイバー the Movie」

「アーリーデイズ」の好評を受けて製作されたのが、劇場版第1作「機動警察パトレイバー the Movie」だ。

大林さんは、「当時はOVAがどれだけ売れてるか、こっちはわからない。噂も僕の耳には全然伝わってなかったから、いきなり事務所から劇場版をやるってきいて『えー!』って。ということは人気あるの、これ?って感じだった」と本作の製作を知って「パトレイバー」の盛り上がりを初めて自覚したという。

 

はたして本作は大ヒットを記録するわけだが、これには大林さんも喜んだという。「劇場版の台本をもらった時は、だいたい自分の(後藤隊長のキャラクターに対する)方向性が定まってきた頃だった。それを試せるシーンもいろいろあったので、やる前から手ごたえがあった。試行錯誤しながらみんなで作っていった結果だから、ヒットして嬉しかった」「アニメの革命だとまでは思わなかったけど、何か新しい感性はすごく感じた。やっぱりこういうものって当たるんだなって」

榊原さんも本作のヒットに新たな時代の到来を感じたという。

「私、びっくりしたの。(本作で描かれているのは)ものすごく複雑な事件じゃないですか。主人公サイドの年齢層も幅があって、それがどうなるのかなと思っていたんですが、結果的にそういう作品が受けたことで、アニメが変わるかもって思った」「小さい頃から、アニメも漫画も親から見せてもらえなかったので、アニメは子供のものなのかなとずっと思っていた。それを仕事としているのは不思議だなと思っていたところで、『the Movie』を見て、大人も見られるアニメが来たなとほっとした」と語る。

 

また、大林さんは「パトレイバー」に限らず声優の仕事をするうえで、「リアルな物言い」をすることに対して非常にこだわりを持っているとここで語った。

「個人的な意見だけど、今でこそアテレコ調、アニメ調とかの演技がひどくなってきちゃって、それはそれでひとつのジャンルになってきたんですけど、当時(自分)はリアルにセリフをしゃべりたいと思っていた。だから、ところどころ台本のセリフを自分で変えていた。そこで斯波さんがOK出したらそれでよしだし、ダメだと言われたら戻す。そういうことをしていた気がする」

ここに、後藤喜一の独特の口調、キャラクター性の秘密が隠されているのではないだろうか。

 

ファン層を拡大したTVシリーズ

劇場版に続いて、TVシリーズがスタートした「パトレイバー」。毎週レギュラー放送のあるTVアニメになったことで、何か変わったことがあるか?と尋ねられた大林さんは、「労働者としては、これまで不定期だった仕事がレギュラーになった。正社員になったような感じ。それと同時に嬉しかった。やっぱりやってきたことが、ひとつの成果としてTVアニメになったんだな、と。OVAとか劇場版はお金を払って観てもらうものだけど、TVは大勢の人に見てもらえる媒体として当時はすごく大きかった。だからもっとやる気が出たし、いろんなシチュエーションで自分の役を表現できるという喜びがありました」と語った。

 

榊原さんは「(南雲さんが)出ていない回とかもあって、ストーリーがどう展開しているのか戸惑うこともあった。そういう時は共演者の演技とかニュアンスで理解していくこともあり、自分喉殺力を刺激する場にもなりました。自分が出てない時も放送は続くので、台本に描かれているちょっとしたセリフから、この人とはこういうかかわりがあるのねと」と、4クールのロングシリーズゆえの苦労を語った。

 



大人の会話劇となった新OVA第12話「二人の軽井沢」

TVシリーズの好評を受けて、スタートした新OVAシリーズ。このシリーズでは、TVシリーズでは棚上げとなっていた宿敵・グリフォンとの決着を描くエピソードのほかに単発のショートエピソードからなる全16話が発表された。

その中でも、特に異色なエピソードとして語られるのが第12話「二人の軽井沢」である。研修の帰り、台風の影響で幹線道路が封鎖され進退窮まってしまった後藤隊長と南雲隊長。しかたなく2人はラブホテルで一夜を過ごすこととなり……というシチュエーションコメディのような小品である。

このエピソードに登場するのは、後藤さん、南雲さん(とテレビのアナウンサー)のみ。会話のかけ合いの妙こそがすべて、と言っても過言ではないということで、初のプレスコ(セリフを先に収録して、あとから絵を当てていく制作スタイル)に挑戦したそうだ。机に向かい合い、まるでラジオドラマのように収録したということで、「自分の間と感性でできる!と楽しみだった」と榊原さん。

大林さんは「『二人の軽井沢』をプレスコでやったのはベストタイミングだったんじゃないかな。いろいろ役作りをしてきて、いろんなシチュエーションを演じてきた積み重ねがあって、ちょうどいい塩梅の時にあれがきたから、そんなに悩まずにできたんじゃないかなと思う」と語る。

 

実際に作品を観た感想を尋ねられると、榊原さんは「これから急接近するんじゃないかと予感をさせつつも、私は違う感想を抱いていた。同じ社会的ポジションの大人じゃないですか。働いている周りのことを考えると、そんなに急接近はしない。だから、こういう面白いことがこれからも何度も起こるかもしれないと思っていた」とコメント。

大林さんは、「後藤さんは、本当に『そういうこと』をしたいのかしたくないのか、という話をしたことがあるんだけど、実は(自分は)すっごいスケベ心ありの演技をしていました。それがリアリティに結び付いたんじゃないかなと思う」と少なからず意識をしていたことを想像しつつ演技していたと、ちょっと大人なパトレイバートークが繰り広げられた。

 



激しい葛藤の中で収録された「機動警察パトレイバー 2 the Movie」

トークイベントもいよいよ終盤、最後に語られたのは「機動警察パトレイバー 2 the Movie」。「いろんな見方があるが、これは2人が主人公の映画という見方もある」と吉田アナも語った通り、本作は後藤さんと南雲さんが物語の中心人物として描かれている。

 

榊原さんは、台本を読んだ時に「(南雲さんの)人格が変わっちゃってる」と非常に驚いたという。

榊原さんは、最初は堅かった女性がだんだんやわらかくなっていくキャラクターとして南雲さんを演じていたのだが、本作において押井守監督から「南雲さんはファザーコンプレックスだ」「南雲さんは権威主義者なので、有能なのにあえてその地位を捨てて僻地に行く後藤さんみたいな人は好きにならない」と言われて、相当とまどってしまったと告白した。

そういうキャラクター性は、若い時の南雲さんとして想定していたので、これは逆戻りであり、それまで積み重ねてきた成長のプロセスと「2」の南雲さんをどうつなげればいいか、とかなり悩んだという。

 

特に難しかったのは、後半の警視庁における幹部を前にした演説シーン、および「私に触れるな!」のシーンである。

「実は私、2つとも抵抗してるんです。だって南雲さんじゃないから。『えっ?』て二度そこで引いて、最後の『あなたを逮捕します』のシーンで『こんなの言えない』って後ろを向いちゃった。私、今まで押井さんに反発したことは一度もなかったから、押井さんは自分をブレーンのひとりと思ってくださっていたのかもしれないけど、それがショックだったみたいで袂を分かってしまったっていろんな人におっしゃっていたみたいです」

その後、押井監督と榊原さんは無事和解したそうだが、そのくらい「2」の南雲さんの描写には違和感があったという。

 

 

熱をもって「2」の南雲さんについて語る榊原さんに対し、大林さんは「映画監督って残酷ですよ、我々にとって」と語る。

「押井監督がそれを狙ったかはわからないけど、結果論として『2』は非常によかったわけですよね。評価も得ている。ということは、当人は嫌かもしれないけど、榊原良子という表現者がそういう悩みを抱えて、ぶつかってやって出てきたその果てに出てきたものが成立している、ということに気が付きました。榊原良子という俳優の葛藤があったから、南雲さんのシーンが生まれたんだろう、そういう風に僕は解釈した」とコメント。作品に対する複雑な感情を隠すことなく語った。

 

まだまだトークは尽きないが、これにて時間いっぱい。30年来の熱い思いも冷めやらぬままトークイベントは終了となった。

 

なお本トークイベントの模様は、2月13日(日)までアーカイブ視聴可能(チケット販売は2月12日(土)23:59まで)。視聴方法については、パトレイバー公式サイトにてご確認いただきたい。

 

【イベント概要】

・本編アーカイブ期間: 1/17(月)17:00〜2/13(日)23:59

※チケット販売は2/12まで

・入場券・特典

一般価格:3,000円(税込)(チケットペイ決済手数料が別途かかります)

購入ページ

https://www.ticketpay.jp/booking/?event_id=36794

・ファンサイト会員:2,000円

ファンサイトの方はチケットが割引販売となります。

https://system.patlabor-fc.com/v2/Login.aspx?ccode=PTLB&fcm=PTLB&ReturnUrl=https%3A%2F%2Fpatlabor-fc.com%2Fmodd_callback.php%3Fref%3D%252Fspecial%252F20220115event-ticket%252F
 

※ファンサイトにログインしていただき、特設ページよりご購入ください。もれなく特典のアクリルプレート(はがき大)が付きます。

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