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【2015年】 主な人気作、話題作:「ワンパンマン」「干物妹!うまるちゃん」など
この年は前の年から予告されていた外国産コンテンツの審査許可の厳格化だけでなく、実質的に日本のアニメをターゲットにした動画サイトに対する規制や、問題となる作品の「ブラックリスト」が発表され、日本のアニメ配信は大混乱となりました。
この一連の規制の流れによって、中国の動画サイトでは
「進撃の巨人」や
「東京喰種」、
「暗殺教室」といった、当時の大人気作品を含む多数の作品が視聴不可能となり、なかにはその後も中国では正規ルートで取り扱うことができないままになっている作品もあります。
当時の中国の動画サイトにおける配信に関しては、一定の自主規制はあったものの商業的な競争の加熱から「やり過ぎ」的な面が目立つようになり、それに加えて動画配信のグレーゾーン的な野放し状態が続いていました。
そのため、どこかで歯止めがかかるのはほぼ確実だったようですが、実際に発動した規制の範囲とその影響は、業界関係者の予想を超えるものだった模様です。
この規制の結果、日本のアニメ配信のバブル的な盛り上がりはしぼみ、日本のアニメを配信していた動画サイトもbilibili以外は規模を縮小、あるいは撤退していく流れになります。
当時の中国のコンテンツ業界は、まだ比較的景気のいい分野ではあったものの、これ以降日本系のコンテンツではソーシャルゲームや映画などの動きも目立つようになっていくなど、中国におけるオタク向けのアニメ配信ビジネスも新たな段階に入っていくことになります。
【2016年】 主な人気作、話題作:「Re:ゼロから始める異世界生活」「この素晴らしい世界に祝福を!」など
2016年になっても規制強化による影響と混乱は続いており、現地で大々的に宣伝された「甲鉄城のカバネリ」が、バイオレンスな内容が問題となったのか配信開始直後に上のほうからの圧力により配信中止になり、その後一時期的に復活するもまた中止になるといった事件が起こったほか、自衛隊の協力が問題視されたのか「ハイスクール・フリート」の配信中止などのゴタゴタが発生しました。
これ以降も新作アニメの唐突な配信中止は断続的に発生していきますが、そのほとんどが規制あるいは自主規制の際の理由が発表されない、ガイドラインも提示されないという、中国にありがちなケースだったので、対処も経験の蓄積も難しかったようです。
それから、人気作品や影響の大きな作品に関しては「Re:ゼロから始める異世界生活」や「この素晴らしい世界に祝福を!」といった日本のネット小説出身の作品が増えていき、日本のネット小説のテンプレ的な展開やネタについても現地で認識されるようになっていきました。
それに加えて原作のネット小説と商業版ライトノベル、そしてそのコミカライズ経由でアニメに興味をもつ人が増加していくなど、中国のオタク界隈では、アニメ以外の媒体の作品に関する注目や扱いなどについても変化していくことに。
またアニメ配信以外では「Fate/Grand Order」の中国版のサービス開始や、映画「君の名は。」の中国での大ヒットなども現地のオタク業界には大きな影響を与えました。
この頃から中国のいわゆる二次元業界では、ソーシャルゲームが話題性や収益などの面でいよいよ重要な存在となっていきますし、映画でも日本のアニメ関係作品の上映が一定の規模で続いていきます。
ちなみに映画に関しては、この後も中国で断続的に発生していく規制の中で、比較的安定した状況を維持することになります。
もちろん映画も中国における政治的な規制や社会的な圧力の影響を受けないわけではなく、「わかりやすい事例」も少なくありません。しかし映画に関して中国では、審査検閲の制度が昔から整備されてきたうえに、業界側にも政府側にも経験やノウハウが蓄積されていることから、環境の変化への対応が何かと追い付いていないネット分野と比べると、相対的ではあるものの安定した環境になっている模様です。
【2017年】 主な人気作、話題作:「小林さんちのメイドラゴン」「ようこそ実力至上主義の教室へ」など
この年は、規制関係のゴタゴタはある程度落ち着いたものの、新作アニメに関しては中国オタク界隈全体からの注目を集めるような飛びぬけたレベルの話題作はなく、各作品に分散してファンが付き、話題が盛り上がるといった形になっていたようです。
またこの頃から、現地の動画サイトでの再生数が1億を超える作品も目に付くようになり、オタク界隈の話題の盛り上がりとは別に、人気作品の再生数の規模に関しては増加していく傾向がありました。
それから中国のオタク関連分野では、ソーシャルゲームの存在感がさらに強まり、「Fate/Grand Order」などは現地でもかなりの注目を集める、日本のコンテンツの看板的な扱いになっていきます。
しかし、中国で注目が集まるということはさまざまなリスクが高まるということでもあり、FGOに関しても、日本で発売されたFGOの公式ファンブックに掲載された外伝小説に出てくる始皇帝の描写が中国に伝わり大批判・大炎上が発生しました。
このFGOの始皇帝に関する炎上は何かと象徴的でしたが、この頃はネットによって中国のユーザーとの距離が近付いたことや、中国現地で二次元分野の話題性が炎上方面でも使い勝手のよい、稼げるネタとして扱われるようになってきたことによるリスクが顕在化していった時期でもあります。
そしてこれ以降も、日本のオタク系コンテンツに対しては、歴史や政治の問題に限らず、さまざまな中国側の価値観による批判や要求による炎上が、以前よりも高い頻度で発生していきます。
またこれらによる実際の被害が、日本側のクリエイターやファン界隈にも発生するようになり、日本のコンテンツを中国市場に展開することについては、これまでとは違った形での難しさが明確になっていきます。
【2018年】 主な人気作、話題作:「ダーリン・イン・ザ・フランキス」「オーバーロード」「はたらく細胞」など
2018年は年の初めから中国のオタク界隈における人気作、話題作が順調に出て盛り上がった……ところまではよかったのですが、大きな注目を集めた1月の期待作
「ダーリン・イン・ザ・フランキス」が突然配信中止になったり、bilibiliでテレ東系アニメが多数配信中止になったり、中国発の炎上で「二度目の人生を異世界で」のアニメ化が中止になるなどのゴタゴタが続き、夏以降も主にネット関連の新しい環境に合わせた形での取締り強化や、その周辺のゴタゴタが断続的に発生して何かと落ち着かない状況が続きました。
それに加えてこの年の配信中止の騒ぎでは、日本のアニメ作品だけでなく中国国産アニメの人気作品にも配信中止が出ているのが目に付きました。これに関しては当時活発に制作、配信されるようになってきた中国国産アニメに過激な内容の作品も増えていたという事情も影響していたようです。
当時の中国ではいわゆる二次元系のコンテンツがさまざまなところで目立つようになってきたことから、中国社会における取り締まりの対象としても「一般的」な扱いになり、中国産・外国産問わず規制や圧力の対象となっていった面もあったようです。
また規制以外の作品を取り巻く環境の変化もハッキリと表に出てくるようになり、作品に対する批判の激化からの炎上や通報といった動きも、この頃はすでに珍しい話ではなくなっていました。
しかしこんな状況ではありましたが、この年の新作アニメには、中国独自の事情も含めて大人気になった作品も出ています。
第2期の配信のあった「オーバーロード」は長期的な人気を維持して以前の第1期、この後の第3期なども数億の再生数を稼ぐ大人気作品になりましたし、「はたらく細胞」は「科学的な知識も得られる、ためになる作品」として高い評価と人気を獲得し、オタク層だけでなく一般層の間でも話題になりました。特に「はたらく細胞」の評価は高く、中国ではいわゆるマンガで学ぶ系のコンテンツがなじみのない分野だったこともあってか、意外な面白さと有用性を感じる人が少なくなかったそうで、人民日報の紙面でも「はたらく細胞」に言及される記事が出ました。