ツクダホビー製のプラモデル「1/20メーヴェ」を組み立ててナウシカを乗せれば、風の谷の未来テクノロジーを理解できる!【80年代B級アニメプラモ博物誌】第17回

2021年12月29日 11:000

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「エンジン+羽、それがメーヴェという乗り物だ!」と力説したくなるステキ構造


工程としては、まずエンジンから組み立てます。箱みたいなエンジンを組み立てて、機体の内部にペタッと貼る程度でしょ? などと甘く見ていると、火傷しかねない。「メーヴェのエンジン」なんていうマイナーな物体を、「一体なぜ?」「何かあったの?」と怪訝(けげん)に思うぐらいのパーツ分割で再現しています。

▲ まず、前後に細長いサヤ状のパーツを組む。それを、ラッパ状に広がった薄いカバーで上下からサンドイッチする。「おっ、意外と凝ってるじゃないか」と思うでしょ? これで終わりではないんです!

▲ サヤ状パーツを収めたラッパ状パーツを、さらに大きなパーツで上下からサンドイッチ! 何重構造なんだ、このエンジン? タマネギ? マトリョーシカ?

こうして、何か怨念のこもったようなドロドロしたディテールをまとったエンジンが完成! もう、これで完成でよくない? それぐらい「ナウシカ」の世界観を体現したエンジンだよ……と原作コミックを取り出してみたら、アスベルがメーヴェを修理するシーンでは、内部メカがこのプラモデルとはぜんぜん違うんです。だけど、宮崎駿さんの絵のタッチを拾おうとしてはいるよね。(完全に余談だけど、原作でアスベルが「いいエンジンをつけているなあ」「大事に使えばあと100年はもつよ」と誉めるセリフ、スケール感がすごい。これから後、100年も使うのか! という驚き)
しかも、エンジンを積んでいるメカなのに、ひょいと持ち上げられるぐらい軽いのもセンス・オブ・ワンダーだった。おっと、まだ組み立て途中だった。次は、主翼です。

▲ 主翼~機体下面は左右に分割されているのだが、エンジンを中心にして組み立てると1枚になる。メーヴェのふくらみのほとんどはエンジンの容積分であり、余計なメカが入ってないのだとわかる。カッコいい構造だ

▲ 翼の下面を組み終わったら、今度はフラップを取り付ける。このフラップは軸を接着しないことで、上下に可動する。「接着しないから動く」という、原理まる出しの機構が男らしいというか、原始人みたいでワイルドだ

▲ フラップをはさんで主翼上面を接着するが、やっぱり左右からエンジンを包むように接着していく。こんな構造なら、確かに機体は風に乗るぐらい軽くなるだろうなあ、と想像させる

すごい、これだけでメーヴェ本体は形になったんだけど、シンプルなようでいて機能に即した合理的なパーツ分割になっています。流し込み接着剤を多用して、指でグイグイ押さえる必要はあるけど、そんな精度の低さなど気にならなくなるぐらい、機能美にあふれてます。

▲ 飛行時にナウシカがつかむ取っ手。真ん中にはベルトのパーツがある。このベルトに、ナウシカがお腹を乗せたりする。「プラ板を曲げて自作」とかでなく、ちゃんと人が乗れるたるみ具合に成型したパーツを用意しているのがエライ

▲ ナウシカが使う剣と銃は、見える部分しかない。これらをメーヴェの尾部に接着すると、急に武器らしい刺々(とげとげ)しさが出てくる。さらに取っ手が付くと、いかにも人間が使う道具らしい身近な感じもしてくる。ようするに、情報量が増す

メーヴェっていう乗り物は、まずエンジンが出力して、主翼によって飛ぶ仕組みができ上がって、最後に人間が乗れるように、取っ手を付けたんだなあ……と、成り立ちが理解できる組み立て工程になっています。少なくとも、僕は妄想を刺激されました。メーヴェ本体は、そろそろ完成です。

▲ お腹側に、着陸用のソリと「加動式のバーニア」(説明書にそう書いてある)を接着する。四角い箱みたいのが展開したバーニアで、閉じた状態にするには、接着しないでそのままにしておく。その投げやりな仕様が、つくづく男っぽい

▲ 後ろから見ると、エンジンの多層構造が効果を発揮して、シンプルな外装の中に入り組んだエンジンがギュッ! と詰まっているように見える。すごい!

どうですか、ツクダホビー製のメーヴェ! 疎と密のハーモニーが、いかにも飛びそうな雰囲気を醸してるじゃありませんか。しかし、この軽やかなメーヴェの上に、ナウシカを組み立てて乗せないといけないんだよね。その瞬間、すべてが崩壊しそうで怖いのだが……しかし、恐れていては前には進めない。組もう。

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風の谷のナウシカ

風の谷のナウシカ

上映開始日: 1984年3月11日   制作会社: スタジオジブリ/トップクラフト
キャスト: 島本須美、納谷悟朗、松田洋治、永井一郎、榊原良子、家弓家正、辻村真人、京田尚子
(C) 1984 二馬力・GH

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