さらに1980年代に入っても第3テレビシリーズ「ルパン三世 PARTIII」(1984)、劇場第3作「ルパン三世 バビロンの黄金伝説」(1985)などが続き、1989年にはテレビスペシャル第1作「ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!」が放送されています。'90年代以降は、年に1作ペースで放送されていくこのテレビスペシャルが大野ルパンの主戦場となっていくわけです。しかし、ルパン三世を演じ続けてきた俳優・山田康雄が1995年3月に逝去。「ルパン三世」第2シリーズで出会い、ソロアルバム「せ・しゃれまん」(1979)のプロデュースを引き受けるほどの盟友となっていた山田の死に際し、やはり気持ちの変化があったのか、大野は翌1996年公開の劇場版「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」、およびテレビスペシャル「ルパン三世 トワイライト☆ジェミニの秘密」を担当していないのです。
1999年頃になると、自身のルーツであるジャズピアニストへ回帰するような方向に大野の活動が変化し始めます。それまでのルパン音楽をモチーフとした、コンボ編成のジャズアルバム「LUPIN THE THIRD JAZZ」を発売し、同時期には「大野雄二トリオ」をベースとした各種ライブスポットでの演奏活動に意欲を燃やしていきます。2006年にはトリオにトランペット、サックス、ギターを加えたセクステット(6人編成)の「Yuji Ohno & Lupintic Five」を結成。アルバム「LUPIN THE THIRD JAZZ」シリーズも、「Bossa&Fusion」(2002)、「PLAYS THE "STANDARDS"」(2003)、「the 10th New Flight」(2006)、「FOR LOVERS ONLY」(2008)等、続々とリリースを重ね、トリオ、Lupintic Five混在で演奏の幅を増やしていきます。 またこの頃より、テレビスペシャル「ルパン」のBGM音楽もLupintic Fiveでの演奏が増え、作編曲家としての劇伴製作作業と、ジャズピアニストとしての演奏活動とが自然に融合していくという進化を遂げます。
10月9日に放送が始まった新作テレビアニメ「ルパン三世 PART6」でも、もちろんLupintic SixがBGM音楽の演奏を担当しています。CD「ルパン三世 PART6 オリジナル・サウンドトラック1『LUPIN THE THIRD PART6~LONDON』」には、本作のためのBGM音楽、挿入歌、エンディングテーマ、そして新作のたびに刷新される「ルパン三世のテーマ」の新バージョンがもちろん収録されています。 イタリアを舞台にした2015年の「ルパン三世」(第4シリーズ)ではマンドリン、フランスを舞台にした2018年 の「ルパン三世 PART5」(第5シリーズ)ではミュゼット風のアコーディオンなど、近作では当地ゆかりの楽器や音楽がフィーチャーされてきました。 さらに、2019年の劇場版「ルパン三世 THE FIRST」では、1977年の初代「ルパン三世のテーマ」のおもむきが復活。2019年11月放送のテレビスペシャル「ルパン三世 プリズン・オブ・ザ・パスト」では、「ルパン三世」(第2シリーズ)のピートマック・ジュニアによるあのボーカル版「ルパン三世のテーマ」が、大野の古くからの盟友・松崎しげるによってよみがえる……など、新作のたびに新たな形に生まれ変わる「ルパン三世のテーマ」を楽しみにしている方も多いでしょう。
そしてイギリスはロンドンを舞台にした今回の「ルパン三世 PART6」では、「THEME FROM LUPIN III 2021」と題され、ロックの故郷にふさわしいギターサウンドがフィーチャーされた新バージョンがお目見えしています。Lupintic Sixのギタリスト・和泉聡志の元には、「THEME FROM LUPIN III 2021」のギターソロをコピー演奏したいが譜面は手に入らないのか?との問い合わせが、すでに国内外から届いているという人気ぶりです。その要望に応えるかのように、大野雄二の公式YouTubeでは、和泉本人による“弾いてみた”動画も公開されています。