【インタビュー】冬ならではの楽曲を集めた3rd EP「narrow」。楠木ともりが作り出す世界には可能性しかない!

2021年11月14日 12:000

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「熾火」はマイナスな気持ちをきっかけに、自分とは別の主人公を作り出して


── 3曲目は「熾火(おきび)」。一転して歌詞もサウンドも激しくなっています。今回の4曲の中では「タルヒ」とともに、最初に手がけた曲だったとおっしゃっていましたね。

楠木 はい。3rd EPを作ることになったけど、曲が全然思い浮かばなくて、レーベルの方からも「新曲いかがですか?」という連絡が来て。ほかのいろいろなことでも心が追いつめられていたこともあって、不安になっちゃったんです。でも、インディーズだったころは、こういうマイナスな気持ちになったときこそ、曲を書いていたなと思い出したんです。それで、今の気持ちをそのまま書けばいんだと思って作っていったのが「熾火」です。

── 創作することには、波立った心をなだめる効果がありますよね。

楠木 自分のマイナスな気持ちがきっかけにはなっているんですけど、ちゃんと別のキャラクターを立てて、その子のストーリーを考えていきました。SNSと一緒に生きている今の若い子たち、周りからの視線にさらされていて、いい子でいなくちゃいけないという圧をかけられた子たちの気持ちが爆発してしまったら、その怒りの矛先はどこに向かうんだろう? きっと周りに八つ当たりするよりも、自己嫌悪に走る子のほうが多いんじゃないかなと思って。そこから主人公像を作って、何かを創作するときの生みの苦しみを書いた曲になりました。

── なるほど、自分とは別の主人公を作り出して、その子の思いを書いていったんですね。僕は最初に聴いたとき、楠木さんの内面がそのまま出た曲なのかなと捉えて、「うわー、激しい。おっかねー!」って思ってしまいました(笑)。

楠木 自分自身の思いがそのまま出ている部分も多いので、たぶん、「おっかねー」んだと思います(笑)。ただ、自分の気持ち100%の歌詞を書いてしまうと、でき上がった瞬間に、恥ずかしくなってボツにしちゃうんですね。やっぱり曲にして歌うなら、自分自身とは少し距離を置いておきたいなと。そのほうが客観的に見ることができて、表現が広がると思うんです。


── 編曲の荒幡亮平さんとは、どのようなやり取りがあったのでしょうか?

楠木 荒幡さんはTVアニメ「ワンダーエッグ・プライオリティ」のオープニングテーマ「巣立ちの歌」を編曲された方で、作品を通してお名前を知ったんです(「巣立ちの歌」は出演声優である相川奏多、楠木ともり、斉藤朱夏、矢野妃菜喜によるユニット「アネモネリア」が歌唱)。私からお伝えしたのは「瑞々しさと大人っぽさの両方を感じさせつつ、そのどちらかに振り切らない曲」ということで、若々しいロックの中にジャズテイストが混ざるアレンジにしていただきました。

── タイトルの「熾火」は歌詞には出てこない言葉です。どういうイメージで名づけたのでしょうか?

楠木 この曲のタイトルはずっと決めることができなくて、父に相談したんです。そうしたら「熾火って言葉を知ってる?」と言われて。全然知らなかったので自分で調べていったら曲のイメージにぴったりで、使わせてもらいました。

── お父さん考案だったんですね。

楠木 そうなんです。ボキャブラリーがあるのっていいなって思いました(笑)。


「タルヒ」は私が書いてきたいろいろな曲とつながる、奥行きのある曲になりました



── そして4曲目の「タルヒ」。一番最初にYouTubeにリリックビデオが公開された曲で、「narrow」と同じようにすごくやさしい曲です。

楠木 今思えば、激しさのある「熾火」とやさしい「タルヒ」をほぼ同時に作ったことで、自分の心のバランスを取っていたんだと思います。「タルヒ」はがんばっている人もそうでない人も、すべての人を肯定したいという思いから生まれた温かい曲で、実は2nd EPに収録されていた「sketchbook」と同じ主人公を描いているんです。

── これも、既存曲とのつながりがある曲だったんですね。

楠木 「sketchbook」の主人公は絵を描く女の子で、その子が人として尊敬する先生から手紙を受け取るというのが「タルヒ」のストーリーなんです。私はずっと、何かを考え続ける人を肯定する曲を作ってきたので、「sketchbook」だけでなく、どの曲に対してもつながりが見える、奥行きのある曲になったかなと思います。

── 「タルヒ」というのは、どういう意味なんですか?

楠木 今回のEPのテーマに合わせて冬の単語を調べていたときに、つららを意味する「垂氷(たるひ)」という言葉に出会ったんです。まず語感が面白いですし、つららは温められることと冷やされることが交互に起こってでき上がるということで、心の成長とイメージがつながるなと思って、この言葉を元に歌詞を書いていこうと思ったんです。そこからさらに同じ読みの「足日」という言葉もあることを知って、このダブルミーニングで「タルヒ」とカタカナにしました。

── ということは、「足日」よりも「垂氷」のほうを先にイメージしていたんですね。

楠木 そうですね。なので「暗いところで 奥深くまで 冷やされた心」といった歌詞が出てくるんです。情景描写的には「垂氷」のイメージで、歌詞全体からは「足日」のイメージが立ってくるといういいバランスで書けたと思っています。

── 編曲は、やぎぬまかなさんです。

楠木 やぎぬまさんとは「バンめし♪」というコンテンツでご一緒して、主題歌や私が演じたキャラクター(栗花落夜風)の曲を書いていただいたんです。そのころから、やぎぬまさんが書かれるシューゲイザー(※編注:ロックの一種。歪んだギターサウンドと浮遊感のあるメロディが特徴)の雰囲気のある曲が好きで、やぎぬまさんもそれを知っていたので、「タルヒ」の編曲をお願いしたとき、「楠木さんが私に頼むということは、シューゲイザーということですか?」というお返事が戻ってきました。

── 詳しく説明するまでもなく、共通認識を持てていたと。

楠木 それで、「夢の中にいるような浮遊感と温かさのあるアレンジにしたいとお願いしたら、デモが上がってきて、すごく素敵な楽曲になりました。


── 今回も聴きごたえ十分のEPになったと思います。Blu-rayおよびDVDには、YouTubeに順次アップされている収録曲のMVとリリックビデオのほかに、先ほども話題に出た『Tomori Kusunoki Story Live「LOOM-ROOM #725 -ignore-」』の模様が全編収録されています。

楠木 歌と朗読による配信ライブということで、朗読によって歌の登場人物を掘り下げて、配信ならではの演出を取り入れた内容になりました。私の楽曲をより深く理解できるライブになっているので、ぜひご覧になっていただきたいです。

── そして、12月後半には、有観客ライブが東京と大阪で予定されています。

楠木 私にとっては、メジャーデビュー後初の有観客ワンマンライブになります。原点に立ち返って、音楽をストレートに届けるライブにしたいと思っていて、CDや配信で私の音楽に興味を持ってくださったみなさんのご来場を、心からお待ちしています。


楠木ともりプロフィール


くすのきともり/1999年12月22日生まれ。東京都出身。
2017年に声優としてデビュー。2020年8月19日に1st EP「ハミダシモノ」(TVアニメ「魔王学園の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」エンディングテーマ)をリリース。カップリングの3曲はすべて自らの作詞・作曲で、シンガーソングライターとしてのメジャーデビューを果たす。


CDデータ

■3rd EP「narrow」

初回生産限定盤 A(CD+BD) 4,950円(税込)

SACRA MUSIC/2021年11月10日発売


初回生産限定盤 B(CD+DVD) 4,950円(税込)

SACRA MUSIC/2021年11月10日発売


フォトブック盤(初回生産限定盤 C)(CD+フォトブック) 2,640円(税込)

SACRA MUSIC/2021年11月10日発売


通常盤(CD) 1,650円(税込)

SACRA MUSIC/2021年11月10日発売


※初回仕様:ライブチケット先行申込み用シリアルナンバーチラシ封入(全形態共通)

〈収録曲〉

01. narrow
02. よりみち
03. 熾火
04. タルヒ
05. narrow -Instrumental-
06. よりみち -Instrumental-
07. 熾火 -Instrumental-
08. タルヒ -Instrumental-

〈初回生産限定盤Blu-ray・DVD収録内容〉

・narrow -Music Video-
・よりみち -Lyric Video-
・熾火 -Lyric Video-
・タルヒ -Lyric Video-
・Tomori Kusunoki Story Live「LOOM-ROOM #725 -ignore-」全編映像


インフォメーション

●Kusunoki Tomori Birthday Live 2021『Reunion of Sparks』

【東京公演】豊洲PIT 2021年12月22日(水) 開場17:30 / 開演18:30
【大阪公演】Zepp Namba 2021年12月24日(金) 開場17:30 / 開演18:30

※詳細はオフィシャルサイト https://www.kusunokitomori.com/ まで


(取材・文/鈴木隆詩)

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